ノンフィクション

犀川稔

文字の大きさ
11 / 87

9話 新山さんの優しさ

しおりを挟む
コンビニから戻ると千隼くんは眠っていた。一度起こそうか迷ったけど、とても気持ちよさそうに眠っているから起こすのはやめてしばらくの間寝顔を眺めていた。

「本当に可愛い顔...。」
新山がボソッと呟いた言葉を聞いて千隼は目を覚ました。
「ん...は?えっ、何...近いって。」
目を開けた瞬間、目の前にあった新山の顔を見て千隼は声をあげた。
「ごめんごめん。つい寝顔見入ってた。スポーツ飲料とお茶と千隼くんが好きなバナナオレ買ってきたけどどれがい?あとプリンとゼリーとサンドイッチとうどんも買ってきたけどそっちは冷蔵庫入れてきたよ。兄貴あいつに食われる前に食べてね。」
「いや、買ってきすぎだよ。...まぁ...あり、がと。」
呆れたようにそう言い放った後、千隼は薄く笑ってお礼を言った。
「俺そういうの世話すんの得意なの。だから任して、他にほしいものあったらなんでも言って。」
ベットサイドに座りながら新山が微笑んで言うと千隼は唇を強く噛んだ。
「......そーやって...今までの人にもしてきたの?」
「え...、なに?ごめん聞こえなかった。」
小さな声で話す千隼の声に耳を傾けるように新山が顔を近づけると反射的に千隼は新山を突き離した。
「あっ......えっと。」
咄嗟の出来事に動揺している千隼を他所に新山は暗い顔を見せた後パッと取り繕うように明るい顔つきに戻して口を開いた。
「ごめん俺居たら気遣って休もうにも休めんよな。今日はもう帰ることにするよ。体調が心配だからまたできる時でいいからL◯NEで教えて?」
そう言い残すと立ち上がって部屋から出ていった。
千隼は静まり返った部屋の中で一人ぽつんと座り込むと今起こった出来事を考える直した。
......360度どっからどう見ても何回考えてもおれが元凶じゃん。いやでもさ...明らかに女の陰匂わす向こうも悪いでしょ。あの時から俺のことずっと好きだったとか言ってる割にちゃんと付き合ってたやついるし、看病得意とか絶対恋人の家に行ってやってたやつだしそれをおれにもしようとしてる感出してんのが腹立つわ。...かと言っておれも何人も付き合ってきたしなんならこの前別れたくらいだから人のこと言えないのが余計癪だわ。
「...つかさっきのトークの相手誰だよ。」
ため息を吐いてベットに横になるとそのまま瞑想した。

なんとなくお腹が空いた気がして買ってきてくれた飲み物を持ってリビングに降りると兄貴がソファで横になっていた。
「おー、体調よくなったかー?新山が終始お前のこと心配だって言ってたぞ。」
「え、おれの部屋出てからそのまま帰ったんじゃなかったの?」
「いんやー?その後もしばらく下居たよ。親から連絡入って帰ったけどそん時お前に一言言ってから帰ろうかなって言ってたけど悩んでてキモかったから早く帰れって締め出した。」
佐々木の話を聞いて寂しそうに「そう。」と返す千隼を見て佐々木は千隼が持っていたコンビニ袋を漁った。
「ちょっ、何すんの!?」
「んー?ちょっとねー...おっ、あったあった。」
そう言って袋の中から一枚の紙を取り出すとそれを千隼に見せた。
「あいつが気づいてくれるかわかんねぇけど~って言いながらお前の部屋戻る前に書いてた紙、いらないなら代わりに捨てといてやるけど?」
「...いらないなんて一言も言ってない。」
千隼は佐々木の手から強引に紙を奪い取ると書かれていたものを見て首を傾げた。
家の住所...?とバイト先の名前。それからシフト制?...って何。その下に書いてある名前は......女の子の名前?
「......どう言うこと?」
千隼が理解できずにいると佐々木が隣に寄ってきて一緒に紙を見た。
「へぇ~あいつの家の住所とバ先と...あ?これあいつの元カノたちの名前じゃん。何これおもろ、写メっていい?」
「無理やめて......え?これ新山さんの元カノの名前?」
「は~?もったいね、他の奴らに見したら爆笑もん間違いなしだったのに。そーだよ、しかもご丁寧に付き合った順もその通り~。」
「......じゃ、じゃあこのシフト制って言うのはどう言うこと?」
食い気味に聞いてくる千隼を怠そうに遇らうと佐々木は冷蔵庫にあったサンドイッチを持って自分の部屋に帰っていった。
一人になった千隼はソファに座りシフト制の意味を調べた。

...つまり週によってバイトの日が変わるってことか。でもなんでこんなこと急に......。
「あっ...。」
千隼は今日、新山が自分の部屋でしていた話を思い出した。そしてこの紙を残していったワケを理解して深く息を吐いた。
「クソ真面目に答えすぎだよ......てか字、...綺麗だなぁ。」
そう呟いて紙をもう一度見ると、笑みを浮かべた。大事そうにポケットに仕舞うと携帯を取り出し新山にL◯NEを送った。
そして佐々木が勝手にサンドイッチを持っていったことを思い出し、階段を駆け上がると勢いよく佐々木の部屋のドアを開けた。
「ねぇ、それおれが買ってもらったやつ!」
「可愛くねぇマセガキだな。いいじゃんあんなに買ってもらったんだから。それにさっき大事なこと教えてやったじゃん、情報料だよ。」
佐々木は最後の一口を食べ切ると、入っていた包装紙のゴミを千隼に渡した。
「いらないんだけど。おれはゴミ箱じゃない。」
不服そうにそう話す千隼を見て佐々木は面白可笑しく笑って口を開いた。
「んじゃー捨ててもらう代わりにもう一個いい情報教えてやるよ。...あいつお前と出会ったあの日から付き合った相手と遣ってないよ。それどころか付き合っても全く相手に熱意なかったし。ま、それだけお前に対して本気だってことじゃね?知らんけど。」
佐々木はそう伝えると「さぁ帰った帰った。」と千隼を部屋から追い出した。部屋を出た千隼は顔を赤くして廊下にしゃがみ込んだ。そして新山からの返事を見る前になんとなく声が聞きたい気がして電話をかけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

処理中です...