ノンフィクション

犀川稔

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15話 兄貴の気遣いと不憫な赤城先輩

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「最近弟が前以上にウザいんだけど原因お前?」
 携帯片手にパンを食べる新山に佐々木が聞いた。特に心当たりがなかった新山は「なんでも俺のせいにするな。」と佐々木の足を踏んだ。
「んだよお前じゃねぇのかよ。これでも一応、気使って聞いてやったのに。」
 大きなため息を吐いた佐々木は新山が買った炭酸飲料を一気に飲み干した。
「おい、人の飲みもん勝手に全部飲むのはまじでないわ......で、千隼くん何があったの?」
「それがわからんからお前に聞いたんだわ。なんか聞いてねぇの?」
「......なんも。」
 そう言って他のやつらと離れて自販機に新しい飲み物を買いに行く新山の後を追って佐々木も一緒に向かった。

 すれ違う女子たち皆、赤城の彼女の話で持ちきりになっていた。
「すげーな。まじで全校女子生徒みんなあいつの話ばっかじゃん。ま、当の本人は全く気にも留めてない感じだったけどね。」
 佐々木が今すれ違った女子の話をすれ違い様に聞いて笑って話をした。
「...赤城の相手誰だかお前聞いてねぇの?」
「いやいや、聞いてたらとうの昔に広めてるって!あいつ口硬すぎ、いくら聞いても絶対割らないしな。」
 そう言った佐々木に「へぇ。」と興味なさそうに返事をする新山の肩を佐々木は組んだ。
「お前ん時も死ぬほど色んなやつに聞かれたよ。相手誰なんー?って。なんなら赤城の時より多かったかもな。ま、お前の場合は同中だし聞き出しやすいからってのもあるだろうけどね。」
「それは盛りすぎ。誰も俺の相手なんて興味ないべ。」
 消極的な事を口に出す新山を横目で見ると、佐々木は何かを企んだように薄く笑みを浮かべた。

 今日も今日とで新山さんからの会おうと言うお誘いはなし。いや、普通に悲しいし最近は更に連絡頻度が減って話すタイミングさえ合わないことが多い。これは完全に倦怠期ってやつなのだろうか......。
「おーい、愚弟。いるー?」
 部屋の外から兄貴にドアをノックされたけれど、気分が乗らなかったおれはその問いかけを無視した。まもなくして兄貴がドアを開けて入ってくると「んだよ、いるじゃん。」と俺の部屋の中にズカズカと入ってきた。
「話したくないから無視したんだからさ、そのくらい汲み取ってよ。自分探し中だから今はいい反応できかねるよ。」
 そう言って外方を向く千隼に佐々木は「そっかー。」と大きな声で言った。
 廊下の方から音がして目を向けるとそこには赤城が立っていて、千隼と佐々木のことを遠くから気まずそうに眺めていた。
「残念だな、人がせっかく恋人ラブな一途系口固モテ男ナンバーワンの恋愛相談適任の人材を連れてきてやったって言うのにそれでも構うなって言うんだもんなぁ。」
 佐々木がクソデカため息を吐くとその話を聞いた千隼は佐々木の腕にしがみついた。
「まじで今生まれて初めて兄貴がいてよかったって思ったかも。いつもはウザくてだるいし消えてほしい兄貴って思ってたけど今はまじで神、ありがとう。赤城先輩早くこっち来て!」
「おい今なんて言った?俺の優しさまじで返せや。お騒がせカップルが。」
「......なんでもいいけど早く話始めね?兄弟喧嘩は俺が帰ってからにしてくれ。」
 話し込む千隼と佐々木に呆れたように赤城が言い放つと佐々木は「んじゃあとは任せるわ。」と言って部屋から出て行った。
 入れ違いに赤城が部屋に入ると千隼はベットに上がって布団に包まった。
「で、その相談とやらってやつは?」
「......赤城先輩、おれがどんな相談しても笑ったり引いたりしない?」
「まぁ...相談の度合によるけど、ある程度の内容なら寛大に受け止めるよ。」
 赤城が俯いて気まずそうにする千隼にそう返すと、千隼は前にあった事と思ったことを事細かにそのまま話をした。

「......ってな感じのことがあって今おれはどうしたらいいのかわからなくなってるって話。まじでおれはどうしたらいいか本気で教えてほしい。」
 話を聞いた赤城は心当たりのある内容すぎて頭を抱えた。「ちょっとタンマ。」と言ってしばらく悶えたあと顔を上げて千隼に口を開いた。
「あー、うん...ごめん、それもしかしたら俺のせいかもしれんわ。あんま掘り返すと新山あいつにボコられるから端折るけど、向こうにも似たような相談されたんよね。事後の反応がイマイチだったの見て君があんまいい思いしなかったかもって。んだから...うん、なんて言うんだろ。あいつなりに今頑張って君にいいところ見せようとしてるんじゃないっすかね。身体目当てじゃない...的なさ。あんま上手く言えないけどそう言うもんなんじゃない?」
 赤城が冷静にそう話をすると千隼は何度も頷いた後「そっか...。」と力のない声で言った。
 それを見た赤城はどこまで踏み込んでいいものか悩んだあと千隼の隣に座った。
「めっちゃ率直に聞くけど、佐々木弟はそう言うことまたしてほしいって思ってんの?」
 唐突な赤城の話に千隼が顔を赤くすると赤城は察してもう一度話をし出した。
「んじゃまぁ答えは簡単よ。あいつに直接言ってあげなよ。で多分色々勘違いしてるからさ、彼。誤解だって言って正直に思ったこと言ってみな。したらどんな我儘だってあいつは喜んで聞くと思うよ。」
 そう言った後、涙目で赤城の方を見上げた千隼の顔を見て薄く笑い「そう言う恋人の言葉、直接聞けるのって死ぬほど嬉しいし可愛いんだからさ。」と言って千隼の頭を撫でた。そのタイミングで佐々木が部屋のドアを開けると中で仲睦まじく話す二人を見て、気まずそうにドアをまた閉じようとした。それを佐々木の隣で立って見ていた新山は思いっきりドアを開けて中に入ってきた。
「おい、赤城...お前なに人の恋人に可愛いとか言って頭撫でてんの?」
そう言って新山が赤城の前に立つと、赤城はめんどくさそうに立ち上がって佐々木の方に目を向けた。新山の後ろで申し訳なさそうに手を合わせる佐々木を見てため息を吐くと赤城は口を開いた。
「めちゃくちゃに誤解だし、もうこれ以上ややこしくなるのはまじに勘弁だからあとは当事者でゆっくり話をしてくれ。おい佐々木、お前約束通り飯奢れ。」
そう言って佐々木の首に手を回すと赤城は佐々木を引きずって連れて行った。

部屋に残された千隼と新山の間にはしばらく沈黙が続き、その後千隼が新山の手を掴んだ。
「あ...の、ちょっと話がしたい...かも。」
千隼がそう言うと新山は冷たい声で「うん。」と答えて千隼の隣に座った。
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