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嫌われるのも悪いばかりじゃない2
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校舎には入れないけど、山の途中に造られたこの学校の、敷地内は広い。
正門から校舎までは整備されているけどグラウンドから校舎を囲む塀まで、あと寮から校舎までに並ぶ木々は結構、生い茂ってて隠れるには便利だ。
「どこ行く?」
「寮の方が木が多いから、あっち行こうぜ。いざとなれば、木に登って隠れられるし」
「……本気で逃げる気満々だな。そんなにデート権欲しいのか?」
体育館を出て、真白の言葉通り寮の方へと向かう。
手を繋いでるせいか、いや、真白が加減してくれてるんだな。息が切れない程度の速度で走りながら、俺は真白に聞いた。こう言うイベント自体に燃えてる可能性が高いけど、念の為。
「えっ……ぁあっ!」
大当りだったらしく、真白が驚いた声を上げる。生徒会も苦労するなって思ってると、真白が思いがけないことを言ってきた。
「そっか、逃げ切ったら谷があいつらとデートしちゃうんだ!」
(えっ、そこ?)
「うわぁ……でも、あの金色野郎にまた持ってかれるのはもっと嫌だし……そーだ! 一茶か奏水に連絡してっ」
「無理だぞ。連絡取り合えないように携帯、没収されてるだろ?」
「……そうだった」
そう言うと、真白はガックリと肩を落とす。そんな真白に、俺は慰めるように声をかけた。
「大丈夫。一茶には、萌えセンサーがあるからな」
「もえ? 何か解らねぇけど、頼もしいな!」
俺の言葉に、真白が首を傾げながらも感心したように声を上げる。
……と、不意に真白がキョロキョロと辺りを見回し出した。
「緑野……?」
「っ!?」
ポツリと呟いたかと思うと、真白は俺の手を引いて走り出した。
ビー、ビー、ビー!
すると、腕の受信機が鳴り出して驚く――えっ、これって鬼が近づいたら鳴るんだよな?
(緑野って、確かワンコ書記だよな……同じ逃亡者の筈なのに、何で?)
そう思っていた俺の前で、真白が足を止める。
「緑野様!」
「観念して、捕まって下さいっ」
「やっ!」
そこには涙目になり、必死に首を横に振っている書記と、それをグルリと取り囲んでいるチワワ達がいた――えっと、これ、何てカオス?
「……火ー事だー」
とりあえず、誰か呼んだ方がいいだろう。そう思って声を上げた俺にチワワ達だけでなく、書記と真白もギョッとしたように顔を上げた。
「えっ、谷? 何で火事?」
「助けて、だと危ないと思って逃げちゃう奴もいるからな」
「そっか!」
「……って、あんた達、驚かせないでっ」
「平凡と毛玉のくせに、邪魔しないでよ!」
「お前達こそ! 緑野、嫌がってるじゃないかっ」
「「「何ですって!? 」」」
残念ながら、俺にしては珍しい大声は届かなかったらしい。誰も来ないのを見て、チワワ達が俺達に文句をつけてくる。
一方、真白も負けてなかった。俺の手を引き、書記と俺を守るように立ち塞がったかと思うと、チワワ達に反論を始めた。
(本当、いい奴だよな。真白って)
……だからこそ、大人しく守られてる『だけ』の書記にちょっと物申したくなった。
「本当に嫌なら、ちゃんと断ったらどうですか?」
「……うる、さい」
「何だ、ちゃんと言えるじゃないですか?」
「……ライバル、だもん」
おいおい、高校生男子が「もん」って。まあ、流石、ワンコだけあって違和感ないけど。
「俺はいいですけど、現に書記様、困ってるじゃないですか」
チワワにもしっかり反論出来ないところを見ると、話すの自体が怖いのかな? そう思ってたら、書記がおずおずと尋ねてきた。
「……俺の……こと、解る?」
「あー……まあ、いつもよりは喋って頂いてるんで。嫌われてるのも、悪いばっかりじゃないですね」
「……嫌われてる、のに?」
「『だから』俺のこと、怖がらずに話してくれてるじゃないですか。練習台にして下さいよ。ちゃんと聞いて、応えますから。そうすれば、書記様も真白を守、れ……」
最後、言葉が途切れたのは書記が俺を凝視してきたからだった。あれ、俺、また言い過ぎた?
正門から校舎までは整備されているけどグラウンドから校舎を囲む塀まで、あと寮から校舎までに並ぶ木々は結構、生い茂ってて隠れるには便利だ。
「どこ行く?」
「寮の方が木が多いから、あっち行こうぜ。いざとなれば、木に登って隠れられるし」
「……本気で逃げる気満々だな。そんなにデート権欲しいのか?」
体育館を出て、真白の言葉通り寮の方へと向かう。
手を繋いでるせいか、いや、真白が加減してくれてるんだな。息が切れない程度の速度で走りながら、俺は真白に聞いた。こう言うイベント自体に燃えてる可能性が高いけど、念の為。
「えっ……ぁあっ!」
大当りだったらしく、真白が驚いた声を上げる。生徒会も苦労するなって思ってると、真白が思いがけないことを言ってきた。
「そっか、逃げ切ったら谷があいつらとデートしちゃうんだ!」
(えっ、そこ?)
「うわぁ……でも、あの金色野郎にまた持ってかれるのはもっと嫌だし……そーだ! 一茶か奏水に連絡してっ」
「無理だぞ。連絡取り合えないように携帯、没収されてるだろ?」
「……そうだった」
そう言うと、真白はガックリと肩を落とす。そんな真白に、俺は慰めるように声をかけた。
「大丈夫。一茶には、萌えセンサーがあるからな」
「もえ? 何か解らねぇけど、頼もしいな!」
俺の言葉に、真白が首を傾げながらも感心したように声を上げる。
……と、不意に真白がキョロキョロと辺りを見回し出した。
「緑野……?」
「っ!?」
ポツリと呟いたかと思うと、真白は俺の手を引いて走り出した。
ビー、ビー、ビー!
すると、腕の受信機が鳴り出して驚く――えっ、これって鬼が近づいたら鳴るんだよな?
(緑野って、確かワンコ書記だよな……同じ逃亡者の筈なのに、何で?)
そう思っていた俺の前で、真白が足を止める。
「緑野様!」
「観念して、捕まって下さいっ」
「やっ!」
そこには涙目になり、必死に首を横に振っている書記と、それをグルリと取り囲んでいるチワワ達がいた――えっと、これ、何てカオス?
「……火ー事だー」
とりあえず、誰か呼んだ方がいいだろう。そう思って声を上げた俺にチワワ達だけでなく、書記と真白もギョッとしたように顔を上げた。
「えっ、谷? 何で火事?」
「助けて、だと危ないと思って逃げちゃう奴もいるからな」
「そっか!」
「……って、あんた達、驚かせないでっ」
「平凡と毛玉のくせに、邪魔しないでよ!」
「お前達こそ! 緑野、嫌がってるじゃないかっ」
「「「何ですって!? 」」」
残念ながら、俺にしては珍しい大声は届かなかったらしい。誰も来ないのを見て、チワワ達が俺達に文句をつけてくる。
一方、真白も負けてなかった。俺の手を引き、書記と俺を守るように立ち塞がったかと思うと、チワワ達に反論を始めた。
(本当、いい奴だよな。真白って)
……だからこそ、大人しく守られてる『だけ』の書記にちょっと物申したくなった。
「本当に嫌なら、ちゃんと断ったらどうですか?」
「……うる、さい」
「何だ、ちゃんと言えるじゃないですか?」
「……ライバル、だもん」
おいおい、高校生男子が「もん」って。まあ、流石、ワンコだけあって違和感ないけど。
「俺はいいですけど、現に書記様、困ってるじゃないですか」
チワワにもしっかり反論出来ないところを見ると、話すの自体が怖いのかな? そう思ってたら、書記がおずおずと尋ねてきた。
「……俺の……こと、解る?」
「あー……まあ、いつもよりは喋って頂いてるんで。嫌われてるのも、悪いばっかりじゃないですね」
「……嫌われてる、のに?」
「『だから』俺のこと、怖がらずに話してくれてるじゃないですか。練習台にして下さいよ。ちゃんと聞いて、応えますから。そうすれば、書記様も真白を守、れ……」
最後、言葉が途切れたのは書記が俺を凝視してきたからだった。あれ、俺、また言い過ぎた?
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