灰かぶり君

渡里あずま

文字の大きさ
47 / 96

恋心は下心3

しおりを挟む
「……俺の部屋に、作りに来ればいいのに」
「駄目に決まってるだろ!?」
「俺的には、それもアリなんですけど……すみません、今日は真白の顔を立てて頂けませんか?」

 遊園地から帰ってきての、夕飯。部屋に届けよう(作って二人きりになるのは避けるとして)と思ってたが、行きと違って俺にベッタリな会長を見て真白が吠えた。
 そんな訳で、どちらにしても煩いので会長に部屋に来て貰ってる。そして拗ねる真白を見て、一茶が腐った本音を交えつつもフォローしてた。

「出灰……大変だね」
「ありがとな。これ、土産」
「……ありがとう」

 労いの言葉をかけてくる奏水に、遊園地で買った煎餅を渡した。ナムルとかが好きなら、甘いものよりこっちの方が良いかなって思ったからだ。
 それは正解だったみたいで、奏水は嬉しそうに笑って受け取ってくれた。その笑顔に和みつつ、夕飯を用意して持って行くと――共有スペースが、いつもの美形(真白達)に会長が加わっていっそ無駄なくらいキラキラしてた。
(このキラキラが、実際の照明として役立てば節電出来るのに)
 まあ、ここの学校の生徒で光熱費とかに気を配るようなのはいないんだろうけど。
 何てことを考えながら、俺は作ってきたハンバーグを皆の前に並べた。弁当のおかずを作った時、ひき肉があったから一緒に作っておいて良かった良かった。

「……俺と紅河の、一茶達と違う?」

 そのハンバーグを見て、真白が首を傾げる。
 そう、一茶と奏水は大葉と大根おろしの和風ハンバーグにしたけど、真白と会長のはトマトソースの上にチーズを乗せたイタリアン風にした。二人ともお子様舌だからな。

「会長様、まだ食べちゃ駄目ですよ……いただきます」
「「「いただきます」」」
「……いただきます」

 食べようとした会長を止めると、真白達の後、少し遅れて会長もそう言った。
 今は三人も、俺に合わせてちゃんと言うけど――俺とこうして、一緒に飯を食うまでは「いただきます」を言ってなかったらしい。
(一茶と奏水は寮生活長いし、真白も……一人で食うのが、多かったらしいからな)
 さて、会長は「ごちそうさま」を言えるのか。そこまで考えて、俺はふと思いついた。

「会長様? 飯食わせるのは約束しましたけど、毎日だとむしろ会長様が時間合わせるの難しいですよね? 週一とか、都合の良い時にメールくれるとかにしませんか?」
「……それ、やめろ」
「えっ?」
「役職呼び」

 驚いて会長を見たら、ハンバーグを完食していてまた驚いた。って、食うの早いな。

「ピーマン入れてないんですから、つけ合わせの野菜も食べて下さいね。足りなかったです? もう一個、食べますか?」
「今度は、目玉焼き乗せろ……って、そうじゃなくて」

 ハンバーグ、多めに作っておいて良かった(これで無くなるけど)と思ってたら、会長に訂正された。とは言え、俺にも言い分がある。

「親衛隊の方々に、許可を取ってからにします」
「……あぁ?」
「だって好きな相手のこと、勝手に名前呼びしたら嫌な気分になるでしょう?」

 まあ、ないと思うけど。性格良いし、そもそもチワワ達も『紅河様』呼びしてるしな。
(あ、様付けはしないと駄目かな?)

「……俺が、呼べって言ってるのに? 制裁が怖いなら」
「違います。あの方達はそんなこと、絶対にしません……ただ、これから飯作るんだからちゃんと筋を通したいだけです」

 チワワ達に対して、変な誤解をされたら困るのでキチンと否定した。そんな俺に、軽く目を見開くと――何故だか嬉しそうに、会長が笑う。

「約束、だからな」
「……? ええ、そうですね」
「さっきの話だが……確かに、週明けから文化祭準備が始まるからな。忙しくなるから、食いたくなったら連絡する」
「はい」

 会長の言葉に頷いてから、俺は一茶を見た。そんな俺に、一茶が裏ピースをして高らかに答える。

「王道学園らしく、素敵出し物が盛り沢山♪ 去年のうちのクラスは、劇だったよっ」
「プリンセス達が、王子の一茶を取り合う話だったね」
「魔法使いの奏水も可愛かった! そして、俺って言うのが残念だったけどチワワ達は可愛かったよ!!」

 そっか、女装がまかり通るのか――まあ、チワワ達は可愛いしな、うん。

「出灰のお姫様も、可愛いと思うぞ!」
「……こういう時は、お前がお姫様になると思うぞ、真白」

 そして真白の言葉をやんわり否定し、俺はハンバーグと目玉焼きを作る為にキッチンへと向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル
BL
【完結】 ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。 けど、話してみると違和感がある。 これは、嫌っているっていうより……。 どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。 ほのぼの青春BLです。 ◇◇◇◇◇ 全100話+あとがき ◇◇◇◇◇

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

誰かの望んだ世界

日燈
BL
 【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。  学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。  彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。  過去との邂逅。胸に秘めた想い――。  二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。  五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。  終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…? ――――  登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。  2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

処理中です...