灰かぶり君

渡里あずま

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策略と思惑と1

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「髪を梳いてくれないかしら。あと、靴にブラシもかけて腰帯も締めてくれる?」
「このお皿の中に入ったえんどう豆、これを灰の山の中に投げるから、全部拾いなさい」
「そうしたら、パーティのことを考えてあげてもいいわ」

 ……そんな風に、パーティに行きたいシンデレラを、継母と義理の姉達はこき使う。
 もっとも、それだけやらせても結局は連れて行かないんだけどな?
 とは言え、俺はそもそもパーティ、もとい文化祭を満喫したい訳じゃない。
 そんな訳で文化祭当日、俺は教室に用意された厨房で一人、黙々とケーキを焼いていた。

(童話と違って、ハトとかスズメに手伝って貰う訳にもいかないし)

「私を助けて」とか空に向かって呼びかけるってそれ、何てメルヘン? 仮に出来たとしても俺はやらないな、うん。



「喫茶店がいいと思います」

 文化祭の出し物を決めていた時、そう提案したのはチワワタイプの奴だった。
 名前は話したことがないんで覚えてないが、よく睨んでくるんで他のチワワ達との区別はつく。

「喫茶店? メイド喫茶? それとも、執事喫茶?」
「柏原君……接客もだけど、どういう系統とか希望はある? 仕入れ先の手配もあるからね」

 一茶がワクワクしながら言うと、委員長が苦笑しながらチワワに聞いた。
 Sクラスにいるから、見た目&家柄良しはデフォルトだけど、このクラスには珍しく真面目って言うか控えめなタイプだ。
 そんな穏やかな委員長が、いや、クラスほぼ全員が驚くことをチワワは言ってのけた。

「それは、谷君に聞いたらいいですよ。作るのは、彼なんですから……生徒会の方々が絶賛するくらい、お上手なんでしょう?」
「あの……目黒めぐろ君?」
「そうだね! きっと谷君なら、このクラスの為に頑張ってくれるよねっ」
「逆に、僕達が手伝ったら足を引っ張っちゃうだろうし」
「ま、せいぜいガンバレなー」

 妙な流れを感じたんだろう。委員長がチワワ(目黒って言うらしい)を止めようとしてくれたけど、他のチワワやガチムチも乗ってきた。

(うん、気に食わない俺をこき使ってやろうって訳だな)

 王道学園らしく、白月ではほとんどのイベントを生徒で決めて動かす。橙司先生がいない今は、絶好のチャンスだろう。
 そして面倒な役職を押しつけられている委員長に、これ以上を求めるのは可哀想だ。

「お前らっ」
「……真白、落ち着いて」
「流石に、一人は無理じゃないかな? 僕も、手伝」
「気持ちだけ受け取っておく。それこそお前らは、接客の方が人も入るだろうし」

 怒鳴りつけようとした真白を、一茶が宥める。そして、奏水がフォローしてくれようとしたけど――俺は、それを止めた。
 そんな俺に真白達や委員長、そしてチワワやガチムチが目を見張る。
(何だよ、俺を困らせたかったんだろう?)
 ああ、泣きつくとでも思ったか? とは言え、思い通りになってやる義理はない。
 頑張ったからって出来て当たり前、失敗したらそれこそ鬼の首でも取ったみたいに文句をつけてくるんだろう。だけど、やらないとやらないで面倒臭そうだしな。俺にとっては、こき使われる方が(主に精神的に)楽だ。

「じゃあ、手作りケーキの喫茶店で……それなら、メイドも執事も出来ますよね?」

 うん、コスプレしないで済むだけ万々歳だな。
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