灰かぶり君

渡里あずま

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策略と思惑と2

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「……随分と、ふざけた連中だな」
「刃金さん、皆さん、気持ちは嬉しいですけど落ち着いて下さい」

 昼休み、文化祭のことを話しに行ったらFクラスが一瞬で殺気立った。良かった、先に話しておいて――黙ってて後からバレたらもっと面倒になるところだった。

「一日頑張れば、それで済む話ですから。やらなきゃやらないで、また文句つけられるでしょうし」
「だけど、クイーン!」
「全く、女の腐ったような奴らだぜっ」
「同感だが……確かにおれ達が動いたら、余計に出灰の迷惑になるな」
「「「…………」」」

 不満そうな面々も、刃金さんの言葉を聞いて大人しくなった。
 まあ、これで嫌がらせがなくなるとも思えないけど、やらないよりはマシだ。
 そんなことを考えていたら、自分の席に座っていた刃金さんが笑顔で膝を指差した。
 それに俺は、キャッチャーからのサインに応えるピッチャーみたいに首を横に振る。
 すると刃金さんは、今度は隣の空いている席を指差したんで、俺は頷いてそこに座った――毎回断るんだから、まず自分の膝に座らせようとするの、諦めてくれないかな?

「このクラスは、文化祭では何をやるんですか?」

 今のやり取りを見つめる……ガッカリしている?(内藤さんは笑ってるけど)連中から話を反らす為、俺はそう尋ねた。

「控え室」
「……? 誰のですか?」
「おれらの」

 何でも白月の文化祭には六月末のせいか、あるいは金持ちイケメン狙いか、近隣の高校生や大学生が大勢くるらしい。その為、外部からの目を気にして風紀委員の見回りも、いつも以上に厳しくなるそうだ。
 とは言え、寮でサボることも出来ないのでFクラスの出し物は毎年『控え室』にして、教室にこもっているらしい。

「出灰のケーキが食えないのは、残念だけどな」
「「「だよなー」」」

 昼休みは限られている。そんな訳で、サンドイッチを食べながら聞いていた俺の頭を刃金さんが撫で、他一同がうんうんと頷いた。そっか、出歩けないんならSクラスにケーキ食べに来るのも無理か。

「よければ、試作品とか持ってきますか?」

 当日は、ホールケーキを切り分けて出すつもりだ。練習でいくつか作ってみるつもりなんで、皆に持ってきてもいいだろう。
 そう思って言った俺を、不意に刃金さんが抱きしめる。Fクラスにどよめきが走ったが、刃金さんは離れない。

「……刃金さん?」
「…………」
「キング、そんなにクイーンのさしいれ貰えるの、嬉しかったのー?」
「黙れ」

 内藤さんがからかうように言うと短い、だけど随分と低い迫力のある声で刃金さんが制した。そっか、嬉しかったんだ。
(可愛いな)
 年上の、しかも不良達をまとめてるような人に言うことじゃないだろうけど……こういうのが、ギャップ萌えって言うんだな、うん。

「そんなに喜んで貰えるなら、試作品じゃなく刃金さん用に作りますよ? あんまり、甘くない方がい……っ!?」

 そこで言葉が途切れたのは、不意に抱きしめてくる腕に力がこもったからだ。と、耳元でボソリと刃金さんが言う。

「……そうやって甘やかしてると、いつか痛い目見るぞ」

(うん、まあ、今ちょっと痛いって言うか苦しいけど)
 ただ、刃金さんが言うのはそう言うことじゃないんだろうし――俺は俺で、言い分がある。

「さっきのは特別扱いで、甘やかすならこうです」
「っ!?」
「出来ないことが多いんで、出来ることはしたいです……駄目ですか?」

 好きだって気持ちに、同じ気持ちで応えられない。キス以上の行為を受けられないし、返せもしない。
 だけど、たとえば今みたいに頭を撫でてみたり、食べたいものを作ったりとか――嫌いな訳じゃないって、俺も少しは示したいんだけどな。
(こういうのも『八方美人』とかになるのかね?)
 恋愛の意味で好かれるのって本当、難しい。そう思い、こっそり俺がため息をついた時だった。

「駄目じゃねぇ……けど、妙なことされそうになったらおれを呼ぶか、最悪、相手を殺す気でかかれよ?」
「……はい」

 それは過剰防衛じゃないかって思ったけど、刃金さんはそれだけ言って俺に頭を撫でられてくれたから――内心、許してくれたことにホッとしながら、俺は安心して貰う為に返事をした。

「キングー? こいつらにはちょーっと、目の毒だよー?」

 内藤さんに言われて、ここがFクラスだったのを思い出す。そして周りの面々は、刃金さんのイケメンオーラにやられたのか、赤くなって目を逸らしてた。



「全く。早速、面倒に巻き込まれて」
「……はぁ」

 放課後、会長の親衛隊に先週、ごちそうして貰ったお礼をしに行ったら――開口一番、隊長にため息をつかれた。
 多分、文化祭のことだろう。随分と早耳だな。

「はぁ、じゃない! クラスの出し物だと僕達、手伝えないんだからっ」
「あの、それはお気持ちだけで十分で」
「親衛隊は、Sクラスに入れないのっ……その決まりがなかったら、ちょっとは手伝ってやらなくもないのに!」
「……ありがとうございます」

 上からの言い方だけど、それはもうデフォルトだし。何より、差し入れに持ってきたクッキーを食べながらなんで、ただ可愛いだけだ。
 だから俺がお礼を言うと、途端にワタワタし出した――これくらいで照れるなんて本当、普段苦労してるんだな。気の毒に。
 そこまで考えて、俺はあることを思いついた。

「すみません、お願いがあるんですが」
「「「何々っ?」」」
「今度、ここでオーブンと炊飯器使わせて貰えませんか?」
「「「……え?」」」

 身を乗り出してきたチワワ達が、俺の頼み事を聞いてきょとんとした。
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