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しおりを挟む友達という存在に恋い焦がれる私には良く分かる。
きっとハンナお母様は許せなかったの
だ。
少女時代を共にした何者にも代え難い親友の心を壊した私の実母という存在が。
何の責任も取らず周囲に尻拭いを押し付けてさっさと死んでしまったサンドラが。
きっとそのことが関係してるんだろうと思っているのだが、学園を卒業すると同時に結婚させられた私の置かれた状況は、なんとも名状しがたいものとなった。
キャッシュ侯爵家に嫁いで丸4年、婚姻関係が今も継続しているのかどうかすら自信がないのだが配偶者である侯爵様にお会いしたのは一度きりである。
お名前は確かJで始まるジェフリーだかだったと記憶しているが、お顔に関してはもはや思い浮かべることすらできない。
私は広い屋敷の端っこに建てられた離れに住んで、勝手に外出しないように言われている。
旦那様は母屋で愛人と仲良く暮らしているようだ。
私と旦那様の結婚式は侯爵家らしく盛大に行われたらしいのだが私は参加していない。
ついでに言うと私と旦那様の間に3才になる息子がいることになっているが、当然私は見たこともなければ生んだ覚えもない。
推察するに侯爵様はハンナお母様の親友に繋がる誰かで、私は絶賛制裁継続中と言ったところなんだろう。
離れでの毎日は誰に気を使うでもなく気楽といえば気楽であったが、とにかくすることが無くて暇だった。
使用人は嫌がらせもしないが、敬いもしない。
良くも悪くも無関心なのだが、
「結婚式はそれはそれは盛大に行われたそうですよ」
とか
「跡継ぎがお生まれになられて奥様もご安心ですね」
とか余計な情報は聞きもしないのに入れてくるところを見ると、私の反応が憂さ晴らしくらいにはなっていたんだろう。
私は身の回りの世話は最低限で構わないことを告げ、食事はドアの外に置いてもらい洗濯物もドアの外に出しておくと綺麗になった衣類が篭に入ってドアの外に置いてあるシステムになった。
なにしろ暇でしかたがないので部屋の掃除は自分でするようになった。
特別に必要なものがある時だけメモでやり取りすることにして、使用人とは極力顔も合わせなければ会話も無い。
まあ、入ったことはないけど贅沢な監獄みたいなもんじゃないだろうか。
私はそんな生活を特に不満に思うこともなく淡々と受け入れていた。
死んだ親の借金は子供に返済義務があるというなら実母が買った恨みの支払いは当然私がしなきゃいけないんだろうな、と。
しかし、もうどうにも暇すぎる。
そんな軟禁生活状態が一年ほど過ぎたある日、散歩を許されている裏庭をほっつき歩いていた私は偶然に抜け穴を見つけた。
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