診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第1章 サテライトオープン

20話 技師面接・逃げてきた人

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  院長「次は15時~24時勤務の技師のお二人ですね。花井部長、お願いします」

放射線技師の田嶋亮さん(39歳)と、臨床検査技師の岡部真一さん(34歳)が一緒に入ってきた。

花井「では、まず放射線技師の田嶋さんに伺いますね」

田嶋「はい、どうぞよろしくお願いします」

かなり緊張している様子だ。

花井「田嶋さんは夜間勤務専任でよろしいのですか?」

田嶋「はい。どうも夜型が抜けなくて……朝早いのは苦手なんです」

花井「理想的ですね!」

その言葉に、みんながどっと笑った。

花井「では、菜の花にどんなことを期待されていますか?」

田嶋「実は、期待ばかりなんです。ホームページを見過ぎたのかもしれません」

みんなクスクス笑い、俺も思わず吹き出しそうになった。

夏を見ると口に手を当てて笑っていた。

花井「なるほど。それは無理もありません。多分、ホームページの通りですから、安心してください」

再び笑いが広がり、田嶋さんも照れ気味に微笑んだ。



花井「では、岡部さんにお聞きします。現職をお持ちですが、並行して勤められるのですか?それとも転職なさいますか?」

岡部「転職を希望しています。ただ、なかなか辞めさせてもらえず、ずるずると二か月も引き延ばされているんです」

花井「ほう……決意のほどはいかがですか?」

場がクスクスと和む。

岡部「実はもう“決意書”を貼って逃げてきました。きりがないので」

花井「ほう~、勇ましいですね。……後は大丈夫ですか?」

岡部「“もう死んだと思ってくれ”と大書きしてきました」

どっと笑いが起こり、皆が腹を抱えて笑い転げる。まるで逃げる女房みたいだ。

花井「なるほど。それにしても、なぜそこまで嫌だったのですか?」

岡部「皆、夜勤を嫌がるんです。でも僕は夜型なので、その分、頼られて……仕事を山ほど残されるんですよ。わざととしか思えなくて、それでつい切れてしまいました」

花井「そうでしたか……それは大変でしたね。でも、ここで同じように仕事を残されたらどうしますか?」

またクスクスと笑い声が漏れる。

岡部「それはないクリニックだと信じています。僕も随分探しましたから。

菜の花のことは前から気になっていて……サテライトができると知った時、もう気持ちは固まりました」

花井「わかりました。こちらも岡部さんの思いに、できる限り応えたいと思います。それでよろしいですか?」

岡部「はい、よろしくお願いします」

花井部長が俺の方を見てうなずいた。

「では、お二人とも採用です。これからもどうぞよろしくお願いします」


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