診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
46 / 357
第3章 新たな人材を求めて

44話 理事の試練

しおりを挟む
 地元の耳鼻科と眼科を誘致するために、最初の手紙やアプローチ文、メリットの説明などを、夏に宿題として出しておいた。

さて、出来栄えはどうだ?

「夏、手紙はできたか?」

「できました。これです」

手紙の文面がプリントされた紙を手渡され、目を通す。完璧な内容だった。

「これ、自分で書いたのか?」

夏「いいえ、桐生さんです」

はあ……。しばらく黙ってしまった。

「それで、アポイントを取った後は三人で行くことになるが、そのとき何を話すか考えているか?」

夏「ええっと……院長が話してくれるんじゃないの?」

「それで理事は黙ってるつもりか?」

夏「ええ……っと、そこまで分かんないよ。行ったことないんだもん」

「それは俺だって同じだよ。でも、どういうやり取りがあるかは想像できるだろ?

相手の心証を悪くしてもいけないし、プライドを傷つけてもいけない。

どういう方向に持っていけばいいのか、その練習はしておけよ。

向こうが何と言ったらこう返すとか、何かを聞かれてすぐに答えられない理事なんて、相手が不安になるだろ?」

「桐生さん、お願いなんですが、理事に台本を作ってやってくれますか? どんな応答にも困らないように、練習して鍛えてやってくれますか?」

桐生「はい、かしこまりました」

夏はぷーっとふくれたまま、部屋を出て行った。

はあ……。ダメだな。まだまだ甘えたが抜けてない。

次の成果を待つとしよう。

さて、久しぶりにイケオジの顔でも見に行くか。

地下へ降りてみた。イケオジだからな。

モデルクラブに入ったって最高に面白いけど、笑わないようにしないといけない。

ちょっと気まずいから、会うのもなんだかなあ~。

そうこう思っているうちに、見つかってしまった!

山野「あっ、お疲れ様です」

「はい、お疲れ様です。どうですか?変わりはありませんか?」

山野「ちょっとね、お話したいことがあったんですよ」

「はい、なんでしょう?」

山野「今度の新しいビルの件なのですが、11階建てになると、かなり患者さんも増えると思うんです。それでお願いがあるのですが、人員を増やしてほしい部署があるんですよ」

「はい、いいですよ。お話を伺います」

山野「じゃあ、ちょっと管理室でご説明しますね。メモしてあるものがあるんです」

そのまま地下の管理室へ向かった。

山野「これなんですけどね、自分の想像で恐縮ですが、シミュレーションをしてみたんです。

それで、必要な掃除スタッフの人数を割り出してみました。

常勤が見つかればいいのですが、パートだとロッカーが2倍必要になるので、その分スペースが必要になっちゃうんですよね」

メモを見せてもらった。

新ビル:常勤なら11名、パートなら倍

ドライバー1名、駐車場係1名

それぞれの理由も書かれていた。

「そうですね。常勤が見つかればいいですね。

すぐ募集して、建物が完成したら来てもらえるようにします。

あと、駐車場係ですね。分かりました。

それからドライバーですね?これはバスを増やしたいという意味ですか?」

山野「それだけじゃないんです。リスク管理です。

夏がすごく暑いので、こまめに休ませてあげたいのですが、乗りたい患者さんが多すぎて、休めないんですよ。

それで、かなりバテてるようなんです」

「それは申し訳なかったですね。ぜひ休んでもらいたいです。身体が一番大事ですからね」

山野「それとですね、バスは今後増やしますか?

実は、乗り切れない患者さんが結構出ているんです。

ただ、バスが走らない住宅地の中だと、気の毒で乗せてあげたいのですが、もう限界なんですよ。

どうしましょうか?

もしバスを増やす予定があるなら、ドライバーは2名にしていただきたいんです」

「よく分かりました。ドライバーと駐車場係はすぐ募集します。バスの件は少しお時間ください。社長に相談しますので」

山野「はい。分かりました。どうぞよろしくお願いします」

すぐ院長室へ向かった。

ああ~、夏にもこういう危機管理を学んでほしいよ……ったくさあ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...