診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第4章 菜の花、未来を味わう

78話 潮騒の宿・再び*

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 温かいものを食べると、なんだか幸せな気分になる。

「じゃあ、行こうか」

「うん、早く行きたい」――夏はにやっと笑った。

もう気持ちがはやっているらしい。俺のレバーを握る手に、さらに自分の手を重ねてきた。誘惑だな。

「いつものあそこ、でいいんだね? 海辺に寄らないでそのまま行っちゃう?」

「うん、そうしたい。待てないよぅ……」

ちらっと顔を見ると、少し唇を尖らせていた。もう~。

「ふふっ、待て」――まるでワンコだ。

もう甘えスイッチが入ったようだ。

日頃は莉子がいるから遠慮しているんだろうけど、二人きりで外に出ると、とたんに思いっきり甘えたになる。

まあ、それが可愛いんだけどね。

国道を下り、半島に入る。さらに1時間半ほど走ると、海岸沿いの少し先の丘に、その宿がある。

今までに何度か夏と来たことがある、思い出の場所だ。

シックな茶色の外観。部屋ごとに駐車場があり、専用階段を上ると部屋に入れる仕組み。

誰とも顔を合わせることがない。

まるでラブホテルのようだが、中はものすごく贅沢で広々としている。

他の音は一切聞こえない。ただ、リビングの掃き出し窓を開けると、広いウッドデッキが先端まで広がり、まるで海へとつながっているように見える。

その横には専用の露天風呂もある。

ベッドのある部屋は照明を落としてあるが、リビングは外の景色が明るく、真っ先に海が目に入る。

極端に言えば、トンネルの中から外の景色を眺めるような感覚だ。

何度来ても本当に素敵な宿。夏もここが大好きだ。

ヒノキの内風呂もあり、そこからも海を眺められる。

「ああ~いいなあ~」

夏はベッドにバタンと寝そべった。

俺はさっさと服を脱ぐ。先に内湯に入らないと始まらないだろう?

「夏、おいで。風呂に入るぞ」

「はい」

 さっと自分の身体を洗ってから、夏の身体も洗ってやった。

「一緒に湯船に入る? それとも外がいい?」

「外に行く」

バスタオルを巻いてデッキ横の露天風呂へ。

ここからも沖までの景色が広がっている。最高の癒しだ。

夏は俺の肩に頭を預け、リラックスしていた。

「ここんとこ忙しかったねえ」

「うん……お兄さんと過ごす時間がなくて、すごく寂しかったよ」

「そうなの? ごめんね。じゃあ、今から頑張っちゃおうかな?」

ふふふっと笑った夏は、くるっと向きを変えて俺の首に両手を回した。

抱きしめて――「のぼせちゃうね。上がろうか?」

「うん、た・の・し・み」耳元でささやいてくる。

「プレッシャーだなあ~」えへへへ。

「よし、行こう」

ざぶっと上がり、お互いをバスタオルで拭いた。

ベッドのそばで、余分にあったバスタオルをシーツの上に敷いた。

夏は「あっ」と恥ずかしそうに横を向いた。

「今さら恥ずかしがってるの? だって夏が出ちゃうんだから、しょうがないだろう?」

「知らない……だってお兄さんのせいだもん」

「はいはい、俺のせいです。おいで」

夏の手を取り、引き寄せる。濃厚なキスを交わした。

「ん? 夏さん、なんか反応してますよ?」

「お兄さんだって一緒でしょう?」

 ふふふ……二人で顔を見合わせ、笑った。


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