診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第5章 2号館、屋上から動き出す

95話 川瀬サイド・氷枕

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 ようやく今日の仕事が終わり、寮へ戻った。

真っ先に診療カバンを持って主任の部屋へ向かう。

ノックしても返事がない。――やはりまだ具合が悪いのか?

そっとドアを開けて近づくと、主任が目を覚ました。

「具合はどう?」

「ああ、川瀬先生。昨日よりはいいみたい」

「そうか。熱を測るよ。今日は点滴をしてもらった?」

「うん、朝に二本、午後は一本かな」

聴診する。呼吸音は悪くない。腎臓を軽く押すと、主任は小さく顔をしかめた。

「まだ痛む?」

頷き返す。

「熱は三十八度二分。炎症が強いのかもしれないな。一週間以上はかかりそうだね。氷枕を持ってくるよ」

主任は小さくうなずき、また力なく目を閉じた。

胸が痛い……なんだろう、この気持ちは‥‥‥。




リビングに戻ると、院長がいた。

院長「あれ、帰ってたの?」

「うん。主任はまだ熱が高いね。当分治りそうにない」

院長「大丈夫だよ。こんなに医者がいるんだから、より取り見取りだろ?」

……まったく。やたら明るいな。

冷凍庫を開けると、氷枕が二つ。ひとつを取り出し、タオルで包んだ。

「ちょっと置いてくる」

主任の部屋へ戻ると、再び眠っていた。

そっと頭を持ち上げ、氷枕を当てる。

顔にかかる髪を、指でやさしく梳いて後ろへ。――はぁ……。

眠る横顔をしばらく見つめていた。

「……またあとで来よう。佐久間先生のところにも行かないと」





台所に戻ると、もうおかずは詰め終わっていた。

「ありがとう。届けてくるね」

北原「はい、お願いします」

院長はせっせと台所仕事を続けていた。

佐久間先生のところへ届けてから、先に風呂に入り、リビングへ戻った。

そろそろ皆が帰ってくる時間だ。

汁物も、おかずも揃っていて、寮母がいないのに豪華だ。

川瀬「なんか色々並んでるな。北原が作ったの?」

院長「まさか。全部三輪さんたちが用意してくれたんだよ」

川瀬「そうか……。主任のお粥はある? あれば持って行くよ」

院長「ああ、卵粥が作ってある。果物も切ってあるし、ヨーグルトドリンクもある。食べられるといいんだけどね」

冷蔵庫から取り出し、お茶も添えると、トレーがいっぱいになった。

落とさないように、そっと部屋を出た。

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