診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
172 / 357
第9章 内定した方の為に

170話 岩城外科医のボーイ姿

しおりを挟む
 そのうちに高原君が口を開いた。

「初めまして、岩城先生。お噂はかねがね伺っています。

このたび医療界を騒がせてしまった――三次救命センターの8人が、僕たちです。

僕は高原と申します。救命医です。こちらが妻の真理で、救命ナースです」

すると次々と自己紹介が始まった。

「僕は救命医の高田道弘です」
「同じく救命医の河本隆です」
「私はICUナースの東山真央です」
「ICUナースの西田美咲です」
「僕は救命ナースの浅野です」
「僕も救命ナースの柏木です」

紹介されるたびに岩城はうんうんと頷いていたが、途中でちょっと疲れたらしい。ぷっ。おかしい。

岩城「はー、すごいね。8人の威力ってやつだな。

北原もやったなあ。儲けもんだよ。

じゃあ皆、これから仕事で一緒になるけど、こちらこそよろしくお願いします」

院長「さあ、座って。メニューでも見てね。ここのランチはうまいよ。

それに、庭の花もきれいだろう? 岩城先生の奥さん――つまり中村君の妹さんが、駅前で花屋をやってるんだ。

この庭の植栽も、全部彼女が手がけたんだよ」

みんなで一斉に背伸びをして、窓の外の花を見ていた。

そのとき莉子が俺のわき腹をつついた。

「あっ、そうだ。忘れてた。
こちらが――うちのかわいい奥さんの莉子と、娘の桃香です」

「どうぞよろしくお願いします」

二人がそろって笑顔を見せると、

「わー、本当にかわいいですねえ。院長先生ってお幸せなんですね!」

えへへへ、笑ってごまかした。

……あれ?ヤバい。夏が――横を向いてる。拗ねたな。ああ、疲れる。

「ええっとね、こちらの理事は、医大の1年の時からうちの下宿生でね。
ずーっと勉強を教えていたんだけど、そのままずっとうちに住みついて、もう家族なんだよ」

そう言うと、夏はやっとにっこり笑ってくれた。
ふう、危なかった。

「へえ~、そんな幸せな方がいらっしゃるんですね~」

誰かがそう言った瞬間、背中を汗が伝った気がした。

「ははっ、そうなんだよ。

俺の時は誰もいなかったけどね。

ただ、天才・岩城が同期だったから、俺と川瀬はもうコンプレックスの塊でさ。

いつも実力の差を見せつけられて、ほんとしんどかったよ」

アハハハ、とみんなが笑った。

「ああ~だから院長先生と川瀬先生と岩城先生は仲良しなんですね?」

岩城「まあ、そんなところかな」

岩城は笑いながら注文を取りにきた。

「じゃあ、みんな先に頼もう。岩城先生が待ってるからね」

「莉子と桃香は何にする?」
莉子「私は日替わりランチ」
桃香「桃香も!」
夏 「俺も同じで!」

結局、全員が日替わりランチを注文した。

何人かが庭のテラスに出て花を眺めている。

西田「院長先生は、ここによくいらっしゃるんですか?」

「そうだね。時々来るよ。

日曜日は“桃香の日”だから、午前中は家族でダンス教室、

お昼はこうしてみんなでここに来ることが多いかな」

「へえ~」と、全員が声を揃えた。

温かな笑い声と、コーヒーの香りがカフェに広がっていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...