173 / 431
第9章 内定した方の為に
171話 カフェにて・岩城外科医と8人
しおりを挟む
ランチはとても美味しく、みんなもすっかり満足そうだった。
食後には、香り高いコーヒーとデザートが運ばれてくる。
「わあ~、これ何だろう?」と真理さんが目を輝かせる。
院長「たぶんカッサータじゃない? 北イタリアのお菓子だよ。莉子も前に作ってたよね。リコッタチーズにドライフルーツとかクルミを混ぜるやつ」
莉子に聞くと、うれしそうに笑った。
「そうそう。意外と簡単にできるのに、すっごく美味しく仕上がるのよ」
莉子「夏も“売り物にできる”って言ってくれたよね?」
そう振ると、夏は口いっぱいにほおばったまま、うんうんと頷いた。
「わあ、私も作ってみようかな。これ、ほんと美味しいね」と東山さん。
そんな賑やかな空気の中、厨房の奥からエプロンを外した岩城がやって来た。
「お楽しみのところ悪いんだけどさ……一度だけ、事情を聞かせてもらえないかな?」
その声は穏やかだったが、真剣な響きを帯びていた。
岩城「話がさ、世間には一方的に伝わってるみたいなんだ。それは理不尽だろ?
俺に話してみて。吐き出したほうがいい。……それに、いつかは俺がリベンジしてやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、真理さんも美咲さんも、真央さんまでもがポロポロと泣き出してしまった。
長い間、張りつめていた何かが、ようやくほどけたようだった。
桃香と莉子が驚いたように目を見合わせたので、俺は夏に二人を連れて帰ってもらうように頼んだ。
男子組も皆、静かに涙ぐんでいた。
――悔しかったんだろうな。どれだけ我慢してきたことか。
院長「みんな、一度は吐き出したほうがいいよ。俺もいつかはリベンジするつもりだ。
スタッフの身体をボロボロにするなんて、絶対に間違ってる」
そう言うと、高原くんが静かに口を開いた。
「……奥さん、一度妊娠したんです。でも体がつらくても休ませてもらえずに、流産してしまいました」
声が震えていた。
「それで“もうこんな環境では無理だ”と思って、別の職場を探していたときに、菜の花の募集記事を見つけたんです。だから、どうしてもここに来たかったんです」
彼の話に、誰も言葉を挟めなかった。
静かな涙がテーブルを伝った。
「一番悔しかったのは、鬱でもないのに“鬱”にさせられて、強制的に辞めさせられたことなんです。
病気じゃないのに“病気扱い”されて……レッテルを貼られて、追い出された。
今までの働きは何だったのかって、思います」
「きっと、後に残る人たちへの“見せしめ”だったんだと思います。
そんな時代錯誤、もう終わりにしてほしい。
残った仲間たちも、今頃は同じようにつらい思いをしているはずです」
岩城は黙って、彼らの言葉をひとつひとつ噛みしめるように聞いていた。
やがて全員が話し終えると、ゆっくりと頷いて言った。
岩城「よし、事情はよくわかった。これから少しずつ、リベンジしていくよ。
少なくとも、立場を逆転させてやる。しばらく待っててくれ」
頼もしい言葉だった。――けれど、本当にそんなルートがあるのか?
いや、岩城様なら……きっとあるのかもしれない。
少なくとも、大学病院の院長には真実を伝えてほしい。
俺も浅田社長に話してみよう。
この8人は、これからの菜の花を支えてくれる大切な仲間だ。
守らなきゃいけない。
ふと見ると、皆の表情がどこかすっきりしていた。
今まで、誰も本気で話を聞いてくれなかったのだろう。
俺は「まだ早い」と思っていたが……
こうしてみると、むしろ早い段階で聞けてよかったのかもしれない。
――なんせ、これが後に“あっ”という展開へとつながっていくのだから。
食後には、香り高いコーヒーとデザートが運ばれてくる。
「わあ~、これ何だろう?」と真理さんが目を輝かせる。
院長「たぶんカッサータじゃない? 北イタリアのお菓子だよ。莉子も前に作ってたよね。リコッタチーズにドライフルーツとかクルミを混ぜるやつ」
莉子に聞くと、うれしそうに笑った。
「そうそう。意外と簡単にできるのに、すっごく美味しく仕上がるのよ」
莉子「夏も“売り物にできる”って言ってくれたよね?」
そう振ると、夏は口いっぱいにほおばったまま、うんうんと頷いた。
「わあ、私も作ってみようかな。これ、ほんと美味しいね」と東山さん。
そんな賑やかな空気の中、厨房の奥からエプロンを外した岩城がやって来た。
「お楽しみのところ悪いんだけどさ……一度だけ、事情を聞かせてもらえないかな?」
その声は穏やかだったが、真剣な響きを帯びていた。
岩城「話がさ、世間には一方的に伝わってるみたいなんだ。それは理不尽だろ?
俺に話してみて。吐き出したほうがいい。……それに、いつかは俺がリベンジしてやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、真理さんも美咲さんも、真央さんまでもがポロポロと泣き出してしまった。
長い間、張りつめていた何かが、ようやくほどけたようだった。
桃香と莉子が驚いたように目を見合わせたので、俺は夏に二人を連れて帰ってもらうように頼んだ。
男子組も皆、静かに涙ぐんでいた。
――悔しかったんだろうな。どれだけ我慢してきたことか。
院長「みんな、一度は吐き出したほうがいいよ。俺もいつかはリベンジするつもりだ。
スタッフの身体をボロボロにするなんて、絶対に間違ってる」
そう言うと、高原くんが静かに口を開いた。
「……奥さん、一度妊娠したんです。でも体がつらくても休ませてもらえずに、流産してしまいました」
声が震えていた。
「それで“もうこんな環境では無理だ”と思って、別の職場を探していたときに、菜の花の募集記事を見つけたんです。だから、どうしてもここに来たかったんです」
彼の話に、誰も言葉を挟めなかった。
静かな涙がテーブルを伝った。
「一番悔しかったのは、鬱でもないのに“鬱”にさせられて、強制的に辞めさせられたことなんです。
病気じゃないのに“病気扱い”されて……レッテルを貼られて、追い出された。
今までの働きは何だったのかって、思います」
「きっと、後に残る人たちへの“見せしめ”だったんだと思います。
そんな時代錯誤、もう終わりにしてほしい。
残った仲間たちも、今頃は同じようにつらい思いをしているはずです」
岩城は黙って、彼らの言葉をひとつひとつ噛みしめるように聞いていた。
やがて全員が話し終えると、ゆっくりと頷いて言った。
岩城「よし、事情はよくわかった。これから少しずつ、リベンジしていくよ。
少なくとも、立場を逆転させてやる。しばらく待っててくれ」
頼もしい言葉だった。――けれど、本当にそんなルートがあるのか?
いや、岩城様なら……きっとあるのかもしれない。
少なくとも、大学病院の院長には真実を伝えてほしい。
俺も浅田社長に話してみよう。
この8人は、これからの菜の花を支えてくれる大切な仲間だ。
守らなきゃいけない。
ふと見ると、皆の表情がどこかすっきりしていた。
今まで、誰も本気で話を聞いてくれなかったのだろう。
俺は「まだ早い」と思っていたが……
こうしてみると、むしろ早い段階で聞けてよかったのかもしれない。
――なんせ、これが後に“あっ”という展開へとつながっていくのだから。
4
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
月弥総合病院
僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる