診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第13章 菜の花の新しい風

259話 ところがどっこい

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 2号館の引き渡しから2週間が経った。

ほとんどの設営は終わっている。
診察に使う医薬品や医療器具、備品類は、どこもセッティングが完了しているようだ。
各フロアの医局も、すでに整っている。

ただ、病床のベッドにはまだシーツなどが掛けられていない。
これは看護助手が実習として行う予定で、1月になってから始めるそうだ。
今からやると、埃をかぶってしまうからだ。

1階に行くと、耳鼻科も眼科もOK。
医事課と受付、総合案内、相談ルーム、入院受付も準備できている。

ああ~でも、どうかなあ?
もしかしたら、入院受付は1階が混むようなら、4階にしてもいいかもしれない。
様子を見よう。

あとは院内処方ができる薬局。
これは薬局のメーカーさんにお願いしているので、すべてお任せの場所だ。

それから、通路を利用したミニ売店。
壁をうまく利用して、あまり場所を取らないように設計されている。

ここの担当は、菜の花フーズから派遣された小林佳奈さんと杉山朋子さん。

「お疲れ様。どうですか? 整いましたか?」

「あっ、院長先生。お疲れ様です。ありがとうございます。
もう大体は整っています。ただ、生鮮品をどの程度入れて良いのか、まだ分からないんです」

「いいですよ。様子を見ながらで。需要があってから入れても間に合いますよ。
まだオープンは1月ですからね」

「はい。わかりました」と、声を揃えてくれた。

さて、あとは10階だな。覗きに行こう。

10階は、夏や莉子がいるところだ。何やってるんだろう?
このフロアは、2日間で引っ越しを終了して、とっくに営業を開始している。

ドアを開けて、音楽事務所の方に行った。

今日の夏はレッスンに行っていて不在だ。

「西嶋さん、調子はどうですか? 制服がなかなか似合っていますよ」

ふふふ、と照れ笑いをしていた。

「電話番と聞いていたのですが、ところがどっこいでした」

「うん? どうしたの?」

「もう、難しいことばっかりやってと言われてます」

うん? と桐生さんを見ると、苦笑いをしていた。

「ああ~、あいつが犯人だね?」と桐生さんを指さした。

みんながドッと笑った。桐生さんは笑いながら、片手で顔を隠した。

「多分ね、西嶋さんもここで1年くらいやってると、すごいキャリアになると思うよ」

「えー、そうですか?」

「うん。でも他所に行かないでね。多分、ここが一番給料をもらえるはずだよ」

「はーい! 分かりました」と、元気よく返事が返ってきた。

桐生さんは、ニヤニヤしながら両手で拝むように俺に手を合わせた。
もっと拝めー!とは言わないが、「かわいがってやってね」と一言添えておいた。

その時、なんか変な歌が隣から聞こえてきた。なに??

そっちの方に行くと、アニメプラスだった。

歌っていたのは、藤堂流星さんだ。

誰かが「院長先生だ」と言ったので、

えっ? 振り返って俺を見て、歌を止めた。

「今のはなんの歌なの?」

藤堂「今のはABCDのアルファベットの歌なんですけど、
コマンドの早覚え歌と言いますか、いい加減なんですけど、どんどん替え歌にしていくんですよ。
自分がすぐ忘れることとか、覚えたいことを歌にしていくと、思い出すんですよね」

「へえ~、そうなんだ」

それを教わっていた新人、アニメーターの野村碧人さんに聞いた。

「歌ってみてどうですか? やっぱり覚えやすいですか?」

野村「はい、覚えやすいのですが、同じメロディだとダブっちゃうので、
別のメロディーを持ってきたりするんですが、今度はどのメロディーにしたかを忘れちゃうんですよね」

もう、どっとみんなが笑った。藤堂さんも苦笑いしていた。

「頑張って」と言って終わりにした。邪魔してもいけない。

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