診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第14章 2号館がオープンへ

260話 すそ野を広げる場所

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 11階の休憩室に行った。

机や椅子は休憩できるように並んでいた。

あと奥には昼寝も出来る一人用ソファで、上半身をぐっと平行に近いくらい倒すと、オットマンも平行になるようになっていた。

それが10台くらい並んでいた。

あと、膝丈くらいの高さがある畳台の上に、厚手のマットが敷かれたフリーの寝転がってもいいような場所もあった。ここだと10人くらいは横になれるかな。

夜勤明けの人が風呂に入って、ここで休んで行っても良いなと思った。

ブランケットや枕も用意してあったし、ちょっと人目を避けられるようにカーテンが引けるようになっていた。
いいね。でもこれは取り合いにならないかな?

一度の昼休憩を取る人数は、多分180人くらいだと思う。

みんな一度に座れるだろうか?という心配があった。
ざっと数えると180席くらいはあった。じゃあ、大丈夫か。

あと、9階のエレベーター前にも研修生用のラウンジがあるから、そこも使える。
本館やサテの休憩室はいっぱいだからね。

カフェのカウンターを見ると、三輪さんがいた。

「お疲れ様です」

「あ、院長先生。お疲れ様です。大変でしょう?」と、逆に聞かれた(笑)

「三輪さんたちの方が大変でしょう? 進んでいますか?」

「ええ、まあまあです。そんな大したことはしないんですよ。
気まぐれで作るだけなんです」

もう目一杯の謙遜なのか、本心なのかは分からないが楽しそうだ。
義務的なものがないと、多分気持ちが解放されるんだろうなあ。

「じゃあ、楽しみにしていますよ」

「はい、ありがとうございます。ぜひ食べにいらしてください」


それから屋上のガーデンへ。
ホッとしたくて、寄ってみることにした。

やはり、緑の樹木がいっぱいの屋上ガーデンは気持ちが良い。
自販機も並んでるし、ちょっと買って一服しよう。

珍しくカフェオレにした。
甘いのが飲みたくなった。

デッキの椅子に座って飲んでいると、洋子さんが偶然通りかかった。

洋子さんは岩城の奥さんで花屋を経営している。
それとカフェをやってる同級生の中村の妹でもある。
この屋上ガーデンの植栽も洋子さんが担当した。

「あら? 院長先生、お元気ですか?」

「うん、元気ですよ。洋子さんはお手入れですか?」

「はい、週に1回くらいは様子を見に来ようと思ってるんですよ」

「そうですか。いつもきれいにしていただいてありがとうございます」

「あ~とんでもないです。もう社長さんのきっぷが良いから驚いてますよ」

「え? どんなことですか?」

「まず予算がないんですよ。こちらの好き放題ってことですよね?
それと、土にすごくお金をかけたんです。
でも、全く文句を言われなかったんですよ。すごくないですか?」

「あははは。そうですね。確かに。社長らしいな」

「え? いつもですか?」

「そうですよ。お金のことで文句を言われたことは一回もないですよ」

「えー? 節約しろとかもないんですか?」

「全くなかったですね」

「それは凄すぎる。経営者がそれでいいんでしょうか?」

ヘラヘラ笑ってしまった。

「あの社長は、大きな目標のためには、目先のことにはこだわらないんですよ。
回り回って利益が戻ってくると考えているみたいですね。

うちの病院は投資ばっかりで、一向に回収はできていないんですよ。
普通なら、とっくに倒産していると思うんだけどね。
その分は、他で回収しているみたいですよ。

すそ野を広げて、固めて、伸ばしていく——という感じでしょうかね。

うちも今は、すそ野を広げることの連続で、追いつかなくて大変ですよ。
ただ、いつかうちの病院も回収できるようになるとは思いますけどね。
ただ、もっと広げなければの話ですが。

莉子のデザインで、クッキーやTシャツを海外に売ってね。
そんなことで儲けるのかなと思ったんだけど、
実際に各国に売ると、すごく利益になってるみたいですよ。
そういう先見の明が凄いんですよ」

「へえ~、そうなんですか」

「ただ、普通の会社では無理だと思いますよ。
やはり潤沢な資金と商才がないと、どれも無理ですよね」

「ああ、そこへ来ましたか。納得です。要はそこですね。恐れ入りました」

クスクス笑った。

確かに、そこなんだよね。

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