272 / 357
第14章 2号館がオープンへ
270話 山本君の爆弾
しおりを挟む
翌週の金曜の午後、美術出版社の山本君が取材にやって来た。
今日は一人だ。何事だろう?
夏も「一緒に聞いてほしい」と言うので、家ではなく、2号館10階の莉子の事務所に来てもらった。
「院長先生、オープンおめでとうございます」
「ありがとう」
ふふっ、なんだか照れくさいな。
桐生さんや音楽事務所のスタッフにも紹介した。
今日は、莉子と俺と夏に話があるらしい。
でも一応、音楽事務所のスタッフにも同席してもらうことにした。
山本君が口を開いた。
「前にうちの雑誌社で取材させていただいて、ゲーム本を出したら大ヒットしたんですよ。
あれからもう4年くらい経って、上からも“そろそろ何かあるだろう?”とせかされてまして……。
私自身も、また何か取材をお願いしたいと思ってるんです。
もし材料がなければ、逆にこちらから提案させていただきたいんですよ」
「えー?」
なんだろう?と、みんな顔を見合わせてニヤニヤしている。
莉子が胸に手をあてて、「何ですか~? 怖いなあ……」と笑った。
山本君は、少し身を乗り出して話し始めた。
「まず1つ目ですが。2号館がオープンしたということで、
莉子さんの事務所がある外の通路に、作品がたくさん展示されているなら、それを特集したかったんです。
病院なのにアート鑑賞ができて、11階のカフェでデザートを食べて、屋上のガーデンで癒される——
そんな特集を組みたいと思ったんです。
でも、残念ながら2~3枚しか飾られていませんでしたよね?
勿体ないと思いませんか?」
夏が答えた。
「そうなんですが、莉子の絵は高価なので、盗難が怖くて出せないんですよ」
山本「そこなんです。本物を出す必要はないんですよ。複製で十分です。
それを院内のエレベーター横や、1階の待合室、カフェなどに飾ったらどうでしょう?
院内美術館ですね。
それに、作品の絵ハガキを作って販売してもいいと思うんです」
夏が「あっ、そういえば莉子の絵の絵ハガキって、作ったことないよね?」と言うと、
莉子も「確かにないわ。現物を売ることしか考えたことなかったもん」と頷いた。
山本君は続けた。
「次に2つ目ですが。4年前にゲームと絵のイベントをされましたよね?」
「うん、やった」と莉子。
「あの時、一番売れたのは院長の顔のリトグラフだったと聞いたんですが、あってますか?」
夏が笑いながら答えた。
「そうなんですよ。あれはKAI君が買ってくれたことで人が押し寄せて、
結局500枚限定で後日リトグラフを作ったんだよね?」
「うん、もうあれは本当に大変だったよ」と莉子。
山本君は、少し声を弾ませて言った。
「それ、勿体なくないですか?
だって、ご本人がそこにいらっしゃるのに、描かないのは勿体ないですよ」
莉子が苦笑いしながら答えた。
「そうなのよ。売れるのは春ちゃんの顔ばかりだから、最近もデッサンしてるの」
「だったら、もっと顔だけじゃなくてバリエーションを増やして、
院長先生の特集ができるくらい描いてみませんか?
インスタもフォロワーが100万人いるじゃないですか。
展示もして、ネット販売したら、またブレイクすると思いますよ。
その過程や出来上がりを、取材させていただけたらと思ってるんです」
「ええ~!? 俺、恥ずかしいんだよね。なんで俺なんだよ」
皆がぷっと笑った。
夏が肩をすくめて言った。
「だってしょうがないでしょう? 絵になる顔なんだから。
この際、莉子に協力してくださいよ」
山本君は、さらに続けた。
「3つ目ですが——夏さんはプロとしてデビューされたじゃないですか?
これだけイケメンでカッコよかったら、絵になりますよ。
莉子さんに、いろんなショットを描いてもらったらいいと思うんです。
勿体ないですよ。写真とか、商品としてまだ出てないようですね?
オフィシャルサイトは拝見しましたけど」
桐生さんが笑った。
「確かにそうなんですよ。まだそこまで手が回らなくて。
急遽サイトを作っただけの状態なんです」
山本君は、少し身を乗り出して言った。
「いっそ、有名な写真家に頼んで写真集でも出したらどうですか?
うちでも扱っていますので、よろしければ、うちから出版させていただけないでしょうか?」
みんなでどっと笑った。
商売、うまいんだもん。
夏が笑いながら「先輩は商売がうまいなあ~。負けた」
まだみんながくすくす笑っている。
桐生さんが言った。
「それはいい考えですね。すぐ写真家にオファーして、写真集を作りましょうよ」
夏は少し照れながら、でも嬉しそうに言った。
「照れくさいけど……いいのかなあ?」
夏が久しぶりに笑った。
エージェント契約を解除して以来、夏はやっぱり笑顔が少なかったんだ。
村瀬さんがぽつりと言った。
「それは最高にいいですよ。今だったら時間もあるし、いいものができると思いますよ」
今日は一人だ。何事だろう?
夏も「一緒に聞いてほしい」と言うので、家ではなく、2号館10階の莉子の事務所に来てもらった。
「院長先生、オープンおめでとうございます」
「ありがとう」
ふふっ、なんだか照れくさいな。
桐生さんや音楽事務所のスタッフにも紹介した。
今日は、莉子と俺と夏に話があるらしい。
でも一応、音楽事務所のスタッフにも同席してもらうことにした。
山本君が口を開いた。
「前にうちの雑誌社で取材させていただいて、ゲーム本を出したら大ヒットしたんですよ。
あれからもう4年くらい経って、上からも“そろそろ何かあるだろう?”とせかされてまして……。
私自身も、また何か取材をお願いしたいと思ってるんです。
もし材料がなければ、逆にこちらから提案させていただきたいんですよ」
「えー?」
なんだろう?と、みんな顔を見合わせてニヤニヤしている。
莉子が胸に手をあてて、「何ですか~? 怖いなあ……」と笑った。
山本君は、少し身を乗り出して話し始めた。
「まず1つ目ですが。2号館がオープンしたということで、
莉子さんの事務所がある外の通路に、作品がたくさん展示されているなら、それを特集したかったんです。
病院なのにアート鑑賞ができて、11階のカフェでデザートを食べて、屋上のガーデンで癒される——
そんな特集を組みたいと思ったんです。
でも、残念ながら2~3枚しか飾られていませんでしたよね?
勿体ないと思いませんか?」
夏が答えた。
「そうなんですが、莉子の絵は高価なので、盗難が怖くて出せないんですよ」
山本「そこなんです。本物を出す必要はないんですよ。複製で十分です。
それを院内のエレベーター横や、1階の待合室、カフェなどに飾ったらどうでしょう?
院内美術館ですね。
それに、作品の絵ハガキを作って販売してもいいと思うんです」
夏が「あっ、そういえば莉子の絵の絵ハガキって、作ったことないよね?」と言うと、
莉子も「確かにないわ。現物を売ることしか考えたことなかったもん」と頷いた。
山本君は続けた。
「次に2つ目ですが。4年前にゲームと絵のイベントをされましたよね?」
「うん、やった」と莉子。
「あの時、一番売れたのは院長の顔のリトグラフだったと聞いたんですが、あってますか?」
夏が笑いながら答えた。
「そうなんですよ。あれはKAI君が買ってくれたことで人が押し寄せて、
結局500枚限定で後日リトグラフを作ったんだよね?」
「うん、もうあれは本当に大変だったよ」と莉子。
山本君は、少し声を弾ませて言った。
「それ、勿体なくないですか?
だって、ご本人がそこにいらっしゃるのに、描かないのは勿体ないですよ」
莉子が苦笑いしながら答えた。
「そうなのよ。売れるのは春ちゃんの顔ばかりだから、最近もデッサンしてるの」
「だったら、もっと顔だけじゃなくてバリエーションを増やして、
院長先生の特集ができるくらい描いてみませんか?
インスタもフォロワーが100万人いるじゃないですか。
展示もして、ネット販売したら、またブレイクすると思いますよ。
その過程や出来上がりを、取材させていただけたらと思ってるんです」
「ええ~!? 俺、恥ずかしいんだよね。なんで俺なんだよ」
皆がぷっと笑った。
夏が肩をすくめて言った。
「だってしょうがないでしょう? 絵になる顔なんだから。
この際、莉子に協力してくださいよ」
山本君は、さらに続けた。
「3つ目ですが——夏さんはプロとしてデビューされたじゃないですか?
これだけイケメンでカッコよかったら、絵になりますよ。
莉子さんに、いろんなショットを描いてもらったらいいと思うんです。
勿体ないですよ。写真とか、商品としてまだ出てないようですね?
オフィシャルサイトは拝見しましたけど」
桐生さんが笑った。
「確かにそうなんですよ。まだそこまで手が回らなくて。
急遽サイトを作っただけの状態なんです」
山本君は、少し身を乗り出して言った。
「いっそ、有名な写真家に頼んで写真集でも出したらどうですか?
うちでも扱っていますので、よろしければ、うちから出版させていただけないでしょうか?」
みんなでどっと笑った。
商売、うまいんだもん。
夏が笑いながら「先輩は商売がうまいなあ~。負けた」
まだみんながくすくす笑っている。
桐生さんが言った。
「それはいい考えですね。すぐ写真家にオファーして、写真集を作りましょうよ」
夏は少し照れながら、でも嬉しそうに言った。
「照れくさいけど……いいのかなあ?」
夏が久しぶりに笑った。
エージェント契約を解除して以来、夏はやっぱり笑顔が少なかったんだ。
村瀬さんがぽつりと言った。
「それは最高にいいですよ。今だったら時間もあるし、いいものができると思いますよ」
4
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
網代さんを怒らせたい
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。
しかし彼曰く、これは練習なのらしい。
それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。
それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。
それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。
和倉千代子(わくらちよこ) 23
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
デザイナー
黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟
ただし、そう呼ぶのは網代のみ
なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている
仕事も頑張る努力家
×
網代立生(あじろたつき) 28
建築デザイン会社『SkyEnd』勤務
営業兼事務
背が高く、一見優しげ
しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く
人の好き嫌いが激しい
常識の通じないヤツが大嫌い
恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する
早瀬佳奈26才。
友達に頼み込まれて行った飲み会で
腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。
あまりの不愉快さに
二度と会いたくないと思っていたにも関わらず
再び仕事で顔を合わせることになる。
上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中
ふと見せる彼の優しい一面に触れて
佳奈は次第に高原に心を傾け出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる