診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

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第17章 夏輝・人気と自由と……

321話 軽井沢にて・会席コース

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 ──ブルーベリーを食べる時間、ちょっと遅すぎたかな。

内心、そう思ってしまった。

おしゃれをして、小粋な和食の店へ向かった。
予約していたので、奥のテーブルに案内された。

他のテーブルの脇を通ると──

「えー!」
「NATSUさんじゃない?」
「すご~い、ここで会えるなんて!」

──全部、耳に入ってしまう。

お店の人も気にしてくれて、
「では、ここではなく2階にご案内しましょうか?
そこは店舗ではないんですが、よろしいですか?」

「はい、かまいません。お願いします」

2階に案内されると、そこは普通の和室だった。
真ん中に座卓があり、座布団を押入れから出してくれた。

「すみませんねえ、こんなところしかなくて……」

「いえいえ、ありがたいです。おかげでゆっくりできます」
──そう伝えた。

コース料理は、心のこもった季節の和食。
どれも美味しかった。やっぱり夜は、和食のコースに限る。
デザートの水菓子まで、しっかり堪能。

食後のコーヒーを飲んでいると──
店主が恐縮しながら、色紙と筆ペンを持ってきた。

俺と莉子は、くすくす笑ってしまった。

夏も笑いながら、筆ペンでお店の名前と日付を入れて、サインを書いていた。
──本当に惚れ惚れするような、見事な筆書きだった。
見栄え、最高だよ。

そうして、ホテルへ戻った。

スイートの部屋にはバルコニーに温泉露天風呂がある。
莉子たちは大浴場へ行くというので、

その間に、夏と二人で部屋の風呂に入ることにした。

「夏、お疲れ様。身体、洗ってあげるよ。
でも莉子たちがすぐ帰ってくるから、俺たちも大急ぎだよ。
それとも、大浴場に行く?」

夏「俺、もうどこの大浴場にも行けなくなった。ごめんね。
お兄さん、温泉が大好きなのにね……」

──泣きそうな顔で言うので、そっと抱きしめた。

「今度、時間が出来たら潮騒の宿に行こうよ。
あそこなら、いいだろう?」

「うん」──とうなずいた。泣かせたくない。

このかわいい子を、これから一体どうしたらいいんだろう……。

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