診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ

文字の大きさ
347 / 357
第18章 回復と未来を目指して

345話 グッズの重さ

しおりを挟む
 ヴォクシブをスタジオに案内した後は帰宅した。

彼らも久しぶりの外出だったせいか、あるいは驚きの連続だったせいか、
かなり疲れたように見えたので「部屋でしっかり休むように」と伝えた。

帰宅して夕飯を取ったあと、コーヒーを飲んでいた。
「夏も疲れたなら早く寝た方が良いよ」

夏「うん、俺ちょっと莉子に相談があるんだ」
莉子「何でしょうか?楽しいこと?」

夏「多分ね。ヴォクシブのグッズをいろいろ作りたいんだけどさ、デザインをやってみる?」
莉子「う~ん、やっても良いけど、どんなのを作りたいの?」

夏「普通さ、人気歌手のグッズって種類が決まってるじゃない?でも莉子に頼むなら、もう一歩大人っぽくて高級なものがあっても良い気がするんだよね。

莉子らしさというか、うちでしか出来ない“一味違うもの”にしたいんだ。
大量生産じゃなくて、限定数でいい。大量に残ってしまうやり方はしたくないんだよ。

だから最初に見本を作って、注文分だけ限定数で作る形でもいいと思うんだ。
普通にうちわでもいいけど、うちらしいものがあってもいいよね。

1点ものでもいいし、リトグラフで30点限りでもいい。ヴォクシブの顔をデッサンして額に入れて、本人のサインと莉子のサインを並べる――そんな特別感があってもいいじゃない?」

莉子「ふ~ん、普通に持ち帰れるようなグッズは作らないの?」
夏「いや、それはもちろん作るよ。その上で“目玉”になるような、インテリアに馴染むものを作りたいんだ」

莉子「例えばさ、お菓子の缶の蓋に私のデッサンをプリントしてもいいの?皆の顔を描いたやつなんだけど」

夏「それいいんじゃない!ヴォクシブも皆30代になりつつあるし、ファンも大人になっていく。だから“大人っぽくて、部屋に置いても邪魔にならないもの”が良いと思う。
だってさ、今までオリオンで普通のグッズは山ほど作って売ってきたんだから、あえて同じものを作る必要はないよね。現に売れ残りが工場にいっぱい置いてあるんだし」

莉子「へえ~、それどうするの?」

夏「それさ、本当に要らないものなんだよね。でもオリオンに頼まれて、しょうがないからタダ同然で桐生さんが買ったんだって。だから、イベントでもやってプレゼントにしようかなと思ってるんだ」

莉子「なるほど。じゃあ、それを一通り見せてくれない?それから考えるわ」
夏「わかったよ。各種類を1個ずつ事務所に送ってもらうよ」

莉子「OK。見てみるよ。大体ファンのグッズってものが分からないからさ。その中でどれが一番売れてるのかっていうデータはないの?」

夏「うん?……やっぱり欲しい?」
莉子「もう……や~だ。夏らしくないわよ。真っ先に調べてあるかと思ったもん」
夏「はいはい、分かりましたよ。データを送ってもらうよ」

莉子「それとさ、メンバーの中で誰かオリジナルデザインとかはやらないの?」

夏「あっ、そうだ。考えてなかった。そういえば、そろそろ一人ずつ独立して新しい道を作っておいてもいいんだよね。聞いてみるわ」

ふたりの話を聞いていたけど、心地よい声に包まれて、居眠りしそうだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

網代さんを怒らせたい

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「なあ。僕たち、付き合わないか?」 彼がなにを言っているのかわからなかった。 たったいま、私たちは恋愛できない体質かもしれないと告白しあったばかりなのに。 しかし彼曰く、これは練習なのらしい。 それっぽいことをしてみれば、恋がわかるかもしれない。 それでもダメなら、本当にそういう体質だったのだと諦めがつく。 それはそうかもしれないと、私は彼と付き合いはじめたのだけれど……。 和倉千代子(わくらちよこ) 23 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 デザイナー 黒髪パッツン前髪、おかっぱ頭であだ名は〝市松〟 ただし、そう呼ぶのは網代のみ なんでもすぐに信じてしまい、いつも網代に騙されている 仕事も頑張る努力家 × 網代立生(あじろたつき) 28 建築デザイン会社『SkyEnd』勤務 営業兼事務 背が高く、一見優しげ しかしけっこう慇懃無礼に毒を吐く 人の好き嫌いが激しい 常識の通じないヤツが大嫌い 恋愛のできないふたりの関係は恋に発展するのか……!?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

芙月みひろ
恋愛
保険会社の事務職として勤務する 早瀬佳奈26才。 友達に頼み込まれて行った飲み会で 腹立たしいほど無愛想な高原宗輔30才と出会う。 あまりの不愉快さに 二度と会いたくないと思っていたにも関わらず 再び仕事で顔を合わせることになる。 上司のパワハラめいた嫌がらせに悩まされていた中 ふと見せる彼の優しい一面に触れて 佳奈は次第に高原に心を傾け出す。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...