【完結】あなたのいない、この異世界で。

Mhiro

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第一章

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会場に到着すると既にお祭り騒ぎで、みんな思い思いに食事をしていた。中には樽ジョッキでエールやワインを楽しんでいる人もいる。
院長は食事の配膳ブースへ向かうために途中で別行動となり、僕はリリィとアリスを連れて司祭様たちがいるテーブルへ向かった。

「ああ、来たかい」
「すみません、遅くなりました」

リリィとアリスをベンチに座らせてからテーブルをざっと見渡すと、ルークとユアンの姿がなかった。

「あれ?ルークとユアンは?」
「ふたりなら食べ物取りに行ったよ。みんなの分も持ってきてくれるって」

ライルが教えてくれたところに、丁度ふたりが戻ってきた。持っていたトレイにはたくさんの食事や飲み物が乗っている。

「お待たせ。ユイさんたち来てたんだね」
「遅いよ!ふたりとも何してたんだ」
「ルーク兄さんがいろんな女性に絡まれちゃって」

呆れ気味にユアンは言いながら、トレイをテーブルに置いた。ルークもそれに倣い、溜息交じりにトレイを置いて僕の隣に座った。

「俺は何もしていないだろ?」
「あの様子だと、またお声がかかるだろうね」
「応じるつもりはない」

いつも一緒だから忘れがちだけど、ルークって綺麗な顔をしているからやっぱりモテるんだよね。それに最近はまた背も伸びて、だんだん大人っぽくなってるし。

「お疲れ様、ルーク。食事、持ってきてくれてありがとう」
「ユイもお疲れ様。演奏、素敵だったよ。それに、今の髪もすごく綺麗だ」
「リリィの練習の成果だよ」

「いちゃいちゃしてないで早く食べろよ」

ライルがジトっとした目で言い、リリィとユアンはにこにこしながら僕たちのやり取りを見ていた。そして司祭様はどこか遠い目をしていて、アリスは食事に夢中だ。

いちゃいちゃなんて……、してないよね?



食事が終わったら、各自好きに行動することになった。子ども達はステージ近くの催し物に参加するといって駆け出して行き、司祭様は村の男衆と飲み交わしに席を立った。

「ダンスの時間になったら、いっしょにおどろうね!」

去り際にリリィが手を振って言った。あんなにはしゃいで、ダンスの時間まで体力が持つだろうか?笑顔で手を振り返していると、ルークがトンと肩を寄せてきた。

「ユイはこの後どうするの?」
「うーん、ダンスの時間までまだ時間があるし…。院長の手伝いに行こうかな」
「なら、俺も一緒に行く」

ふたりで席を立とうとしたら、明るい声が後ろから話しかけてきた。

「ルーク!一緒にステージの方を見に行こうよ!」

声を掛けてきたのはサラだった。彼女も今日は髪をまとめて可愛く着飾っている。

「無理。今からユイと院長先生の手伝いに行くから」
「もうっ、またユイさんと!?別にふたりで行くことないじゃない!」

サラは余程ルークと一緒に行きたいのだろう。涙を浮かべて、今にも泣きそうな顔をしている。何だか気の毒になってルークをちらっと見ると、彼も同じことを考えていたのか、困った顔をして僕と視線を合わせた。

「ルーク、サラと一緒に行っておいでよ。僕はひとりで大丈夫だから」
「………分かった。サラ、行こう」
「っ!ありがとう!!」
「ユイ、またあとでね」

そう言うとふたりは、ステージの方へ並んで歩いて行った。

こうやって見ていると、お似合いなんだよなぁ……。

程よい身長差のふたりの後ろ姿を見て、そう思わざるを得なかった。



食事の配膳ブースでは、院長が孤児院で作ったクッキーとパイを配っていた。どちらも残りはわずかで、他のブースの料理も同様に残りわずかだ。

「院長、お疲れ様です。交代しますよ」
「あらユイ!ありがとう。それじゃあ、ちょっとお願いしていいかしら?」
「ええ。ゆっくり楽しんでください」

院長が別のエリアに移動すると、僕はさっきまで院長が座っていた椅子に腰かけた。この時間になると、ほとんどの人が食事を終えているため、ブースに来る人はまばらだ。

「よぅ、楽しんでるか?」
「アラン!」

行きかう人たちを眺めていたら、アランに声を掛けられた。アランは近くにあった椅子を引き寄せると、僕の隣に座る。

「催し物は見に行かないのか?」
「ここで見ているだけでも、充分楽しいよ」
「そっか。………なぁ」
「ん?」
「……今日の礼拝、すごいよかった。ユイも…、キレイだった」

アランの照れ隠しは相変わらずぶっきらぼうだ。言っていることが誉め言葉じゃなかったら、誤解をしてしまうかもしれない。
この姿を見るたびに、笑いが込み上げてくる。

「……っっ、ありがとうっ。そう言ってもらえると、頑張った甲斐があったよ」
「なっ、なに笑ってんだよ!…って、おい。目元になんかついてるぞ?」
「えっ、ホント?」
「こっち向け。取ってやる」

アランの方に身体を向けて、僕は目を閉じた。アランの手が頬に触れるのを感じ、親指で目元を優しく撫でてきた。

「取れた?」
「……いや、もう少し」

そう聞こえたから、もうしばらくアランの親切心に身を委ねることにした。頬を触れられている間ずっと目を閉じていて、アランがどんな表情をしていたかなんて、僕には分らなかった。

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