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僕と姉上は十八歳になった。
そして遂に姉上が元気になり、僕の役目が終わる時が来た。
ある夜に王に呼ばれ、僕の方を見ることも無く告げられた。
「フェリの病気が治った。おまえの役目は終わりだ。今夜中に荷物をまとめて、国の端にある村に行くといい。途中まで兵をつける」
「…はい」
「わかっていると思うが、自分の出自を決して口にしてはならぬ」
「はい」
「用はそれだけだ」
この時が来るのを覚悟していたが、僕は不安で怖くなった。そして意を決して顔を上げた時にはもう、玉座に王の姿は無かった。
部屋に戻り白のシャツと灰色のズボンに着替え、黒いマントを羽織った。目立たないように移動するためだ。そして唯一、僕の物として与えられていた剣をベルトに挟むと、簡単な荷物を持って部屋を出た。
部屋の外にはすでに一人の兵が待っていた。兵の後をついて歩きながら、いつどこでラズールが現れて、僕を連れて逃げてくれるのかとドキドキしていた。だけどラズールが現れることはなく裏門に着いてしまう。
裏門には、四頭の馬と二人の兵が待っていた。
三人の兵は、皆見上げるほどに背が高く逞しい。
片や僕は、ずっと熱心に鍛錬をしてきた。なのに姉上の身代わりだと気づかれることが一度もなかったくらいに、小柄で華奢な身体付きだ。
ラズールも背が高く屈強な身体をしている。いつかは僕もラズールのようになりたいと願っていたのだけど、もう十八歳になってしまった僕は、この先大きくなれるのだろうか…。
「フィル様?」
「あ、うん」
「こちらの馬にお乗り下さい。門を出たら飛ばします」
「わかった」
僕は、四頭の馬の中に僕の愛馬のロロがいたことに安堵した。とても優しく賢い馬なんだ。だけど僕以外の人が乗ろうとすると怒って暴れる。だから僕と一緒に厄介払いをしたかったんだろうな。
「ロロ、長旅になるけど頼むね」
ロロが鼻先を僕にすり付ける。
僕はロロの首を数回撫でると、鐙(あぶみ)に足をかけて勢いよく飛び乗った。
「では出発します」
三人の中で最も位の高そうな青年がそう言って、先頭に立って進み始めた。
その後ろに僕が続き、二人が後からついてくる。
城の裏門を出て寝静まった街の通りを抜け、街を囲んでいる門も出てしばらく進んだ所で、前の兵が馬の横腹を蹴って勢いよく走り出した。
僕も慌ててロロの横腹を軽く蹴る。
そうするとロロは、わかったというように一度だけ首を振って軽快に駆け出した。
後ろの二人もピタリとついてくる。
五日程で目的の場所に着くと聞いた。しかしそこに行くまでに、いくつかの森を通らなければならない。森の中には、危険な魔物が出る所がある。無事に通ることが出来るのだろうか。
「いや…たぶん僕は…」
小さく呟いて思わず笑ってしまった。
僕はなぜ魔物の心配などしてるんだろう。魔物よりも怖いのは、この三人の兵達だ。城から追放した僕にわざわざ兵をつけるということは、確実に僕を消すためだ。
僕は、ラズールが僕を連れて逃げてくれたなら、この先もしぶとく生きようと思っていた。
だけどラズールは来なかった。僕を連れて逃げてくれなかった。たぶん王に気づかれていたんだ。今頃どこかに監禁されているのかもしれない。もしくは…僕と逃げるのが嫌になったのかな。ラズールは優秀だ。姉上に忠誠を誓えば、ラズールを気に入っている姉上に大事にしてもらえる。その方がラズールにとっても幸せだと思う。
ラズール、今までありがとう。僕は僕の運命を受け入れるよ。だからもう、僕のことは忘れて国のために頑張って。そして幸せになって。
そして僕の予想通りになった。
城から出て三日目の夜、深く暗い森の中で、三人の兵達に刃を向けられた。
そして遂に姉上が元気になり、僕の役目が終わる時が来た。
ある夜に王に呼ばれ、僕の方を見ることも無く告げられた。
「フェリの病気が治った。おまえの役目は終わりだ。今夜中に荷物をまとめて、国の端にある村に行くといい。途中まで兵をつける」
「…はい」
「わかっていると思うが、自分の出自を決して口にしてはならぬ」
「はい」
「用はそれだけだ」
この時が来るのを覚悟していたが、僕は不安で怖くなった。そして意を決して顔を上げた時にはもう、玉座に王の姿は無かった。
部屋に戻り白のシャツと灰色のズボンに着替え、黒いマントを羽織った。目立たないように移動するためだ。そして唯一、僕の物として与えられていた剣をベルトに挟むと、簡単な荷物を持って部屋を出た。
部屋の外にはすでに一人の兵が待っていた。兵の後をついて歩きながら、いつどこでラズールが現れて、僕を連れて逃げてくれるのかとドキドキしていた。だけどラズールが現れることはなく裏門に着いてしまう。
裏門には、四頭の馬と二人の兵が待っていた。
三人の兵は、皆見上げるほどに背が高く逞しい。
片や僕は、ずっと熱心に鍛錬をしてきた。なのに姉上の身代わりだと気づかれることが一度もなかったくらいに、小柄で華奢な身体付きだ。
ラズールも背が高く屈強な身体をしている。いつかは僕もラズールのようになりたいと願っていたのだけど、もう十八歳になってしまった僕は、この先大きくなれるのだろうか…。
「フィル様?」
「あ、うん」
「こちらの馬にお乗り下さい。門を出たら飛ばします」
「わかった」
僕は、四頭の馬の中に僕の愛馬のロロがいたことに安堵した。とても優しく賢い馬なんだ。だけど僕以外の人が乗ろうとすると怒って暴れる。だから僕と一緒に厄介払いをしたかったんだろうな。
「ロロ、長旅になるけど頼むね」
ロロが鼻先を僕にすり付ける。
僕はロロの首を数回撫でると、鐙(あぶみ)に足をかけて勢いよく飛び乗った。
「では出発します」
三人の中で最も位の高そうな青年がそう言って、先頭に立って進み始めた。
その後ろに僕が続き、二人が後からついてくる。
城の裏門を出て寝静まった街の通りを抜け、街を囲んでいる門も出てしばらく進んだ所で、前の兵が馬の横腹を蹴って勢いよく走り出した。
僕も慌ててロロの横腹を軽く蹴る。
そうするとロロは、わかったというように一度だけ首を振って軽快に駆け出した。
後ろの二人もピタリとついてくる。
五日程で目的の場所に着くと聞いた。しかしそこに行くまでに、いくつかの森を通らなければならない。森の中には、危険な魔物が出る所がある。無事に通ることが出来るのだろうか。
「いや…たぶん僕は…」
小さく呟いて思わず笑ってしまった。
僕はなぜ魔物の心配などしてるんだろう。魔物よりも怖いのは、この三人の兵達だ。城から追放した僕にわざわざ兵をつけるということは、確実に僕を消すためだ。
僕は、ラズールが僕を連れて逃げてくれたなら、この先もしぶとく生きようと思っていた。
だけどラズールは来なかった。僕を連れて逃げてくれなかった。たぶん王に気づかれていたんだ。今頃どこかに監禁されているのかもしれない。もしくは…僕と逃げるのが嫌になったのかな。ラズールは優秀だ。姉上に忠誠を誓えば、ラズールを気に入っている姉上に大事にしてもらえる。その方がラズールにとっても幸せだと思う。
ラズール、今までありがとう。僕は僕の運命を受け入れるよ。だからもう、僕のことは忘れて国のために頑張って。そして幸せになって。
そして僕の予想通りになった。
城から出て三日目の夜、深く暗い森の中で、三人の兵達に刃を向けられた。
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