溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 アレンの攻撃を、オリスがギリギリで避ける。

「いきなり何すんだよ!」
「おまえこそ、なぜここに来た?オキザリス寮の者が勝手に来るなっ」

 アレンの怒鳴り声が、廊下に響く。
 エイルリスは、アレンの迫力に驚いた。
 他に誰もいないとはいえ、大声を出し過ぎだ、バカ!

「アレン落ち着け。あんた、俺に何か用?週末も俺の後をつけてたんだろ?暇なの?」

 エイルリスは、アレンの腕を掴んでなだめ、オリスを睨んだ。そして少しだけ、表情には出さずに驚いた。
 オリスの顔の口から耳にかけて、薄く赤い線が引かれている。アレンに付けられた傷の跡だ。完治しなかったのか。それって、オリスの力が、アレンよりも劣ってるってことだよな。
 エイルリスの視線に気づいたオリスが、赤い線を指でなぞる。

「これさぁ、きれいに治らないんだけど。たまに痒くなるし。どうしてくれんの?おまえの顔も同じにしなきゃ、腹の虫がおさまらねぇ。それとも代わりに、エイルリスの顔に傷をつけてやろうか?」
「は?おまえ…ルリスに手を出したら、もっと切り刻んでやる」

 アレンの全身から禍々しい気配が噴き出した。
 エイルリスは舌打ちをして、アレンの手を強く握りしめる。

「アレン、挑発に乗るな。無視しろ。それに俺は大丈夫だろ?おまえが守ってくれるんだから」
「ルリス…もちろんだ」

 霧が晴れるように、アレンの禍々しい気配が消える。
 エイルリスは息を吐き出し、再びオリスを睨みつけた。

「早く要件を言えよ。俺はあんたの顔を見たくないんだけど」
「ふん、俺だっておまえ達の顔を見たくない。胸糞悪いからな。…頼まれたんだよ。そこの悪魔に客を連れてきた。俺は、そいつがポインセチア寮に入って行ったから、追いかけてきただけだ」
「俺に客?誰だ?」
「…外で待たせてる。部外者は建物の中には入れないからな。ついて来いよ」
「わかった」

 アレンは頷き、エイルリスに部屋で待つように言う。
 エイルリスは、胸騒ぎがした。自分も行かなければいけない気がした。
  だから「俺も行く」と言い、アレンよりも先に部屋を出た。

「ルリス!俺の客だ!人間じゃないかもしれないっ」
「そうかもな」
「危険だ」
「おまえがいてくれるから大丈夫だろ。それに、悪い予感がする。だから行く」
「ルリス…。わかったよ。でも、絶対に俺の傍にいて。離れないで」
「わかってるよ」

 エイルリスとアレンのやり取りをしり目に、オリスが二人の前を進んでいく。
 ポインセチア寮を出て、中庭や建物の横を通り過ぎ、森の中へ入っていく。

「おい、どこに行くんだよ。まさか、森の中で待ってるのか?」

 オリスが歩みを止めて振り返った。

「そうだよ。部外者だから、学園内の人に見つかると面倒くさいだろ。その人、許可を取らずに入ってきたし」
「誰だよ一体…。アレンの親か?」

 エイルリスが、アレンを見上げた。

「いや、それはない。俺の親は今、他国に行ってるはずだ」
「ふーん。じゃあ兄弟とか友達とか」
「俺に兄弟も友達もいない」
「ほんとか?ま、会えばわかるんだけどな。おい、今さらだけど、俺たちを嵌めようとしてないよな?」

 オリスが再び進み出し、前を向いて言う。

「どうだろうな?別に引き返してもらっても構わないぜ?怪しいと思うなら戻れ。興味があるなら来い」

 
 



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