溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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 アレンが窓から外を見てる。
 エイルリスの部屋は三階にある。だから景色がよく、学園の建物を囲むようにして広がる森が、よく見える。その森を、アレンが見つめている。
 エイルリスはアレンの背中に向かって声をかけた。

「何かあるのか?」
「森の中に、何かいる」
「ふーん。またオリスが見張ってたりしてな。それとも、ユラか?おまえのことを思い出したとか」
「それはない。ユラとケントの俺とルリスに関する記憶は、完璧に消した」

 エイルリスは目を丸くする。
 当初からアレンが何かしたとわかっていたけど、
もう隠し事はしないつもりらしい。
 エイルリスも窓に近づき、外を見る。

「やっぱり、おまえが記憶を操作してたのか。まあその方が、ユラは辛い思いをしなくていいかもな」

 今度はアレンが目を丸くしてエイルリスを見つめ、愛おしげに目を細めた。

「ルリスは優しい。ルリスの傍にいると、俺まで優しい気持ちになれるんだ。俺は悪魔だから、心の中は黒くて醜い。正直、他人がどうなろうと関心がない。俺の心が動く時は、ルリスに関する事だけだ」
「それでいいよ。俺だって両親と兄を殺した悪魔を憎む気持ちで、心の中は暗くて醜い。そして他人に興味がない。アレンと同じだ」

 エイルリスは手を伸ばして、アレンの黒髪に触れた。
 アレンもエイルリスの金髪を撫で、「ありがとう」と微笑む。

「なにが?」
「俺を慰めてくれてるんだろ?ルリスは優しいね。本当は天使なんじゃ…」
「……アレン、俺は」

 エイルリスは迷いながら、アレンに全てを話そうと思った。こんなにも信じてくれるアレンに、嘘はつきたくない。アレンは悪魔だけど、悪魔に対しても嘘はつきたくない。
 しかし、エイルリスの言葉は、扉を叩く音に中断された。
 エイルリスは、勢いよく振り向いた。
 アレンのことを考えていて、誰かが近づく気配に気づけてなかった。情けない。復讐の時が近いのだから、もっと気を引き締めないと。
 アレンも、近づく誰かに気づけてなかったようだ。エイルリスと同時に扉を見て、驚いた顔をしていたから。
 エイルリスは、アレンは外の何かの気配に気を取られていたのだろうと思った。それに、俺に見とれていたし。
 しかし…とエイルリスは大きく息を吐き出した。
 せっかく誰もいない静かな寮の自室で考え事をしようと思っていたのに、来客が多い。アレンと知り合う前は、誰も来なかったのに。アレンと知り合ってからも、アレンしか来なかったのに。もしかしてアンバーか?
 エイルリスが扉に近づき「誰だ?」と聞く。
 でも、返事がない。代わりに再び扉が叩かれた。
 エイルリスは外の気配を探る。

「あ?アンバーじゃねぇな」
「ルリスはさがって。悪魔の気配がする」
「悪魔か。じゃあオリスだろ」
「そうらしい。あいつ、懲りもせず何しにした?」

 アレンが右手で取っ手をつかみ、左手の爪を鋭く尖らせる。そして、取っ手を回して引くなり、左手を振り上げた。





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