溺れる天使は悪魔をもつかむ

明樹

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野外活動

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 隣のクラスとの合同講義は、学園の広大な敷地の中を歩きまわり、薬草や毒草を採取して、精製の仕方を学ぶというものだ。
 今は暑くなり始めた季節で、エイルリスはやる気が出ない。動いて汗をかくことが大嫌いだからだ。
 そもそも草の採取など、園芸部の奴らにやらせておけばいいのに。俺は快適に空調が完備された部屋で、精製技術だけを学びたい。草探しなんて、暑いし虫もいるし土で汚れるしで面倒臭い。何より面倒臭いのはこいつだ。
 エイルリスは背後にいる人物を睨む。
 アレンが笑顔で立っている。何がそんなに楽しいのか。それに距離が近い。というか、皆クラスごとに集まってるだろうが。なんでおまえはここにいるんだよ。俺の傍に立つな!
 エイルリスは口にこそ出さなかったが、嫌悪感丸出しでアレンを睨んだ。
 そこへ、一人の男子生徒が近づいてきた。アレンのクラスメイトらしい。
 アレンがそのクラスメイトに話しかけられている隙に、エイルリスは素早くその場を離れた。背後でアレンの「あれ?ルリスっ」という声が聞こえた頃には、集団になっている生徒達に隠れて、アレンから見えない場所にいた。

 まとわりつくアレンから離れたエイルリスは、一人で学園内の敷地に広がる森の奥へと、どんどんと入っていった。
 この講義は、一人一つの薬草または毒草を見つけなければならない。人が密集している場所では見つけにくい。それに早く見つけて快適な講義室に戻りたい。だから人がいない場所を選んで、森の奥まで来た。
 案の定、そこかしこに薬草毒草が生えている。エイルリスは手袋を嵌めた手を伸ばし、毒草を引き抜いた。
 この毒草は、見た目は紫の可憐な花だ。それなのに全てに毒があると、幼い頃に図鑑で読んだ。ずっと記憶に残っていた。こんな毒草が、生徒が自由に行き来できる敷地内に生えてるとは驚きだ。まあ、これを悪用するような悪人は、この学園にはいないってことか…。
 その時、背後で枝を踏む音が聞こえた。
 別に逃げる必要はないのだが、人と絡むことが嫌いなエイルリスは、反射的に逃げた。急いでその場を立ち去ろうとして、土から飛び出た根に気づかず、つまづいて転んでしまった。

「いた…」

 地面についた手に痛みを感じる。尖った石にでもぶつけたのか?
 手を退けてみる。地面の浅い位置に、割れた瓶が埋まっている。
 エイルリスの美しい顔が歪んだ。

「ちっ…誰だよ。こんな所にこんなもの捨てた奴は…くそが」
「ルリス!」

 エイルリスは更に顔を歪ませた。
 離れた場所にいると思っていたのに、アレンが来た。足音はアレンだったのだ。そのせいで、この場を離れようとして転んだ。手のひらの怪我はアレンのせいだ。
 エイルリスは、すぐ傍で膝をついたアレンを睨む。
 アレンはエイルリスの視線に気づいていないのか気にしていないのか、青ざめた顔でエイルリスの体を支えて顔を覗き込んできた。

「大丈夫?怪我してない?…あ!手っ、見せて!」

 アレンがエイルリスの手首を掴み、手のひらを上に向ける。そこでようやく、エイルリスは手のひらが血で真っ赤になっていることに気づいた。先ほどの痛みは、ガラス瓶で手のひらが切れた痛みだったらしい。
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