逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝

文字の大きさ
8 / 11

しおりを挟む
幼い頃に会ったきりだったグリシアは、フレイグの想像以上に美しく育っていた。

呼ばれた侯爵家で再会し、久しぶりだと声をかけてみれば、頬を染めてフレイグを見つめている。

どうやら、フレイグは賭けに勝ったようだった。


そして、事態もフレイグに都合の良いように動いていく。


「フレイグ」
「公爵様。お久しぶりでございます。いつも我が商会をご利用いただき誠に」
「あぁ、挨拶はいい」

以前のように、公爵当主は国を渡り侯爵家にやってきて、フレイグを呼びつけた。
まるで屋敷の主のように振る舞い、フレイグをソファに促す。

「フレイグ。君の父親も素晴らしい商人だったが、代替わりした君の腕も買っている」

「ありがとうございます」

今までになかった賛辞に、何か無茶な要求でもされるのかと、フレイグは身構えた。

「グリシアは番を見つけることができれば、王家との婚約を解消できるんだ。
君どうだ?グリシアの番にならないか」



ーーー
隣国からグリシアが戻ってくる。

ヴェロージオは今か今かとその時を待っていた。

グリシアは国王と謁見し、正式に婚約が解消される。

その前に、どうにか彼女を引き止めねばならない。

ヴェロージオは、ぐっと手に力を入れる。
手に入れたばかりの魔道具を握りしめていた。

ーーー

「…本当に番なのかしら」

謁見の間には、国王だけでなく王妃も同席した。
そう簡単に出会えるはずのない番を、たった二年で見つけ出したというグリシアに王妃は懐疑的だった。

王妃の呟きに、その場に居るヴェロージオも同意したい気持ちだった。

(番じゃなければ…)

国王の入室の許可が下り、扉の向こうから待ち望んだ婚約者が帰還した。

一人ではない。
彼女の隣には、スラリと背の高い男がグリシアをエスコートしていた。

いや、エスコートと言うにはあまりにも…。

貴族の所作を忘れたように、グリシアは男に身体を預け切っている。
視線は前を見るわけでなく、国王の御前だというのに、じっと男を見つめ続け、何が不服か唇を尖らせている。

グリシアの甘えた声が謁見の間に響いた。

「フレイグ。もう帰りたいの」
「グリシア。もう少しだけ我慢しよう、ね?」

妃教育でも手のかからないと言われたグリシアが、国王の前だというのに、男に口付けを求め始める。
仕方がないと、男もそれに応え…、

ヴェロージオは思考が停止していた。

あれは、グリシアなのか…?
目の前で行われている行為を理解できず、狼狽えた。

婚約関係であった今まで、一度も見たことがないほど緩んだ顔をして、端ない音を立てて他の男と唇を交わすグリシアに、動揺してヴェロージオは一歩二歩と後ずさった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】貴方をお慕いしておりました。婚約を解消してください。

暮田呉子
恋愛
公爵家の次男であるエルドは、伯爵家の次女リアーナと婚約していた。 リアーナは何かとエルドを苛立たせ、ある日「二度と顔を見せるな」と言ってしまった。 その翌日、二人の婚約は解消されることになった。 急な展開に困惑したエルドはリアーナに会おうとするが……。

処理中です...