逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝

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貴族として育った者達なら、目の前のグリシアの姿に眉をひそめたはずだ。

頬を染めて、本能の儘相手を求める行為。

品のない、端ないと言われる振る舞いを、周囲の目を気にせずにグリシアはやってのける。

この場にそぐわない粘着音を立て、暫くして二人は唇を離すと、体の力が抜けたように、グリシアは男にもたれ掛かった。

「お待たせしてすいません。グリシアが、このような状態だったので」

貴族の作法を知らない男は平民で、勝手に口を開き言い訳を始める。
それなりの格好はしていても、所作にその粗さが垣間見える。

「…其方がグリシアの番か」
「…私はなんとも」

肩をすくめる男はこの国の者ではない。

男に獣人の血が混じっていなければ、相手を番と認識する機能は備わっていない。

ならば、とグリシアに目をやる。
相変わらず、此方に目を配ることなく、男を見上げている。
彼女の目にはもうこの男しか入れたくないと言わんばかりだった。

国王は、過去に見た、番を得た者の姿をグリシアに重ねた。
互いしか認めず、二人の世界を作っていた、その姿を。

「…父上、ならば二人が番同士であると証明は、できません」

ヴェロージオは、二人の姿に臆しながらも国王に訴えた。
これだけグリシアが無作法を続けていてもまだ、ヴェロージオはグリシアのことを諦めきれないでいた。

番の証明など、本人らが認めれば他者にはそれを覆す手立てなどない。
男の事はこの場にいる誰も知らないが、ここまで貴族令嬢の吟侍を捨てているグリシアの態度に、国王も王妃も、この場にいるや見届け人の宰相や近衛騎士らも、男を彼女の番だと認めつつあった。

待ったをかけたのはヴェロージオだけだった。
国王は首を振る。

「…グリシアのあの姿が何よりの証拠だろう?今の姿に、未来の王太子妃の影は微塵もない」

男に凭れ、身体を撫でられているグリシアは、抵抗もない。

「証明方法はあります!」

ヴェロージオがこの為にと調べ尽くして他国から取り寄せた魔道具を国王の前に差し出した。

「番を鑑定する道具です」

グリシアの番という男がそれを見つめ、ふっと笑ったように見えた。

「それで、番を証明しろとでもおっしゃるのですか?」
「番と言い張るなら出来るだろう!?」
「…僕は別に、番と言い張ったことはないんですがね」

それでも、反論せずにヴェロージオの望むよう、平民の男は魔道具を受け取る。

「グリシア、君も手を出して」
「…ん、」

番同士が魔道具に触れることで、光を放つ。
もし、番でなかったならば…。

二人が触れた魔道具に変化は起こらなかった。

「は、ははっ、やはりな!魔道具は証明した!お前たちは番などではなかったんだ!!」

ヴェロージオは、歓喜に震えた。
番と称してグリシアをかすめ取ろうとした平民に向け、指をつきたて断言したのだ。

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