令嬢は魅了魔法を強請る

基本二度寝

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「おかしい、どうして」

シュラブはミファセスの他人行儀な対応に戸惑った。

ミファセスはシュラブを愛していた。
他の令嬢と居ても、何も言わずに熱い目線を送ってきていた。

それが無くなったのはいつからだろうか。
そんなことに気づきもせず、他の令嬢との逢瀬を楽しんでいた。

誕生日。
今年シュラブの贈り物の中には、ミファセスからのものは無かった。
いつも高価なセンスの良い装飾品を贈ってくれるので、見栄のために利用させてもらっていた。
それが、今年はカードの一つも無かった。

なんという不出来な婚約者だ!

これは一言言っておかなければならぬ、と意気揚々と翌日ミファセスを呼び止め、耳にした噂の他愛ない令息とのやり取りを誇張して人目のある場所で叫んでやった。

婚約破棄をチラつかせれば、すぐに縋って謝ってくると考えていたのに…。



「父上。馬鹿な話を聞いたのですが、ミファセスとの婚約がすでに破棄されているなんて事実ありませんよね?」

ミファセスの言葉は嘘なのだと、強がりのでまかせだと信じて、帰宅するなりシュラブの父、侯爵家の長に確認した。

「?そう聞いているが、どうした、今更」

「…えっ?」

シュラブの父は、魔法石の付いた魔道具を磨きながらシュラブに視線を向けた。

「き、聞いてはおりませんがっ!?」
「言う必要もないと思ったんだろう?ミファセス嬢を蔑ろにしていたのだから、お前の望んだ事なのだろう?」
「蔑ろに、なんて」
「お前の素行は記録された映像で確認した。伯爵家に詫て婚約破棄の違約金も支払っている。伯爵にはお前の謝罪は受け付けないと言われていたので、婚約破棄の手続きの場には連れて行かなかった」

父が頭を下げて繋いだ縁談を、破棄される原因がシュラブにあったと知られていた。
額から汗が吹き出す。

本来なら怒りの感情が見えても良さそうなものだが、父は淡々と事実だけを述べる。

「もう、しわけ…ありま、」
「私に謝られてもな」

父はシュラブから目線を外し、手元の魔道具を大事そうに磨く。

「すべてを片付けたのは長男だ。この件を機に代替わりは済ませている」

「…は?」

シュラブの兄は優秀な後継者だ。
昔から出来がよく、面倒みも良かった。

シュラブの婚約も喜んでいたのだが、学園入学からどこで知られたのかミファセスへの態度を改めよと小言を言うようになり、疎ましく思っていた。

シュラブが口先の返事のみで態度を改めずにいたら、いつの間にか兄との会話も無くなっていた。
煩わしさがないと喜んでいたのだが…。

「学園卒業まではみてくれるだろうが、卒業したら身の振り方を考えろ。私の選んだミファセス嬢では不満だったのだろう?」

父はいつものように、怒鳴りつけることはしない。
それが逆に不安を煽られる。

もう、見限られたのか、と。
おそらく、父より先に兄には見限られた。

だから、小言もなくなったのだ。

急に、将来あすへの不安で足元が揺らいだ。
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