3 / 12
第三話
しおりを挟む
「……お久しぶりですね、夕希さん」
「うん、久しぶり。あはは、ごめんね? 久しぶりなのにこんな姿で」
夕希さんは微笑みながら言うが、その表情には明らかに元気はなかった。ただ、青色のデニムジャケットにベージュのロングスカート、そして自然な感じのメイクにサラサラとした長い栗色の髪は綺麗であり、本当に元気がないところ以外は大人っぽいオシャレなお姉さんであり、他の客、特に男性達からの目も惹いていた。そして俺の隣に夕希さんが座ると、泰希はにやにやしながら夕希さんに話しかけた。
「姉ちゃん、やっぱり泰希がいるって聞いたらすぐに来たな。小学生の時からスゴく気に入ってたもんなぁ」
「だって、しば君は本当に可愛いし、素直でいい子だったから。けど……今は体格も良くなって顔つきも凛々しくなったし、カッコカワイイって感じ……かな?」
「可愛いの部分は無くならないんですね……」
俺はがっくりとしてしまった。けれど、それはそうだろう。夕希さんからすれば、俺なんて一回りも違う子供であり、夕希さんが異性として見るにはまだまだ色々なものが足りないのだから。肩を落とす俺を見ながら夕希さんはクスクス笑った。
「でも、久しぶりにしば君に会えたのは本当に嬉しいな。ウチには遊びに来てくれてたみたいだけど、私は実家から離れてたし中々会う機会がなかったからさ」
「そうでしたね。だから、俺も嬉しいです。本当はもっと気の効いた言葉でも言えたら良いんですけど……」
「そんなの気にしないよぉ。ふふ、せっかくだから抱きついちゃえ」
「え?」
俺が驚く中で夕希さんは本当に抱きついてきた。体の柔らかい感触とふんわりと漂う良い香り、そして服の上からも主張してきていた豊満な胸が俺に押し付けられ、思春期の俺にはとても刺激が強かった。
「ちょ、夕希さん……!」
「はあー……久々のしば君吸いはキマるなぁ。やっぱりこれだよねぇ」
「色々危ない発言はしないでくださいよ! というか、恥ずかしいですって!」
相変わらずの夕希さんのスキンシップに困惑したが、それと同時に変わらない部分がある事に安心感を覚えた。そして嬉しさと恥ずかしさを感じていると、それを見ながら泰希は更にニヤついた。
「大和、人前なんだからこんなとこで盛るなよ? そういうのは適した場所があるんだからな?」
「盛るか! それより泰希、さっきの話を夕希さんにしないといけないんじゃないか?」
「ん、それもそうだな。姉ちゃん、ちょっと話があるから大和から離れてくれ」
「はいはい」
夕希さんが離れた瞬間に安心感と寂しさを同時に感じたが、俺はとりあえずそれらを彼方に追いやった。そして夕希さんが注文を終えると、泰希は頷いてからまた真剣な顔をしながら夕希さんを見た。
「姉ちゃん、さっき大和には頼んだし、父さん達にも話したんだけどさ」
「うん」
「大和に姉ちゃんの事を任せようと思う」
「任せる……え、どういう事?」
夕希さんはとても困惑した様子で俺と泰希を見回す。初耳だったのもそうだろうが、任せるという言葉の意味もわからなかったのだろう。
「交際とまではいかなくとも、大和に姉ちゃんとの外出や愚痴に付き合ってもらって、姉ちゃんの心のガス抜きをしたいんだ。今の姉ちゃんはやっぱり見てられないし、あの父さんも大和になら任せられるって言ってたしな」
「そ、そんな突然……それに、しば君だってそんな事を言われたら迷惑じゃ……」
夕希さんがおろおろする。もちろん俺からしたら迷惑ではないが、夕希さんからしたら久しぶりに会った弟の友達、それも高校三年生という忙しい時期にそんな事を頼むのは迷惑だと考えたのだろう。そんな夕希さんの姿を見て、俺はふうと息をついてから震える夕希さんの手を静かに握った。
「大丈夫ですよ、夕希さん。進学組ではありますけど、勉強を疎かにする気はないですし、俺だって夕希さんを放ってはおけませんから」
「しば君、でも……」
「姉ちゃんも大和なら安心だろ? だって、姉ちゃんは昔から大和の事を……」
「ちょ、泰希! それは!」
夕希さんは慌てた様子で泰希を制止する。気に入られているという事を言おうとしただけだと思うが、そこまで慌てるような事かと俺は首を傾げるしかなかった。そして夕希さんは大きく息を吐いて気持ちを落ち着けると、少し申し訳なさそうな顔で俺を見た。
「ま、まあ……しば君が良いって言うならお願いしようかな。私もこのままじゃいけないなと思ってたし、これもいい機会だから」
「わかりました。夕希さん、これからよろしくお願いします」
「……うん、よろしくね」
夕希さんは安心した様子で笑う。その笑顔を見られただけでも来てよかったと思えた。
「よーし、そうと決まればここで飯を食べながら午後の事について決めようぜ」
「午後の事?」
「そう。午後はなんと……二人にデートしてもらうからな!」
「デ……!?」
「デート……!?」
泰希の突然の言葉に俺と夕希さんは驚くしかなかった。
「うん、久しぶり。あはは、ごめんね? 久しぶりなのにこんな姿で」
夕希さんは微笑みながら言うが、その表情には明らかに元気はなかった。ただ、青色のデニムジャケットにベージュのロングスカート、そして自然な感じのメイクにサラサラとした長い栗色の髪は綺麗であり、本当に元気がないところ以外は大人っぽいオシャレなお姉さんであり、他の客、特に男性達からの目も惹いていた。そして俺の隣に夕希さんが座ると、泰希はにやにやしながら夕希さんに話しかけた。
「姉ちゃん、やっぱり泰希がいるって聞いたらすぐに来たな。小学生の時からスゴく気に入ってたもんなぁ」
「だって、しば君は本当に可愛いし、素直でいい子だったから。けど……今は体格も良くなって顔つきも凛々しくなったし、カッコカワイイって感じ……かな?」
「可愛いの部分は無くならないんですね……」
俺はがっくりとしてしまった。けれど、それはそうだろう。夕希さんからすれば、俺なんて一回りも違う子供であり、夕希さんが異性として見るにはまだまだ色々なものが足りないのだから。肩を落とす俺を見ながら夕希さんはクスクス笑った。
「でも、久しぶりにしば君に会えたのは本当に嬉しいな。ウチには遊びに来てくれてたみたいだけど、私は実家から離れてたし中々会う機会がなかったからさ」
「そうでしたね。だから、俺も嬉しいです。本当はもっと気の効いた言葉でも言えたら良いんですけど……」
「そんなの気にしないよぉ。ふふ、せっかくだから抱きついちゃえ」
「え?」
俺が驚く中で夕希さんは本当に抱きついてきた。体の柔らかい感触とふんわりと漂う良い香り、そして服の上からも主張してきていた豊満な胸が俺に押し付けられ、思春期の俺にはとても刺激が強かった。
「ちょ、夕希さん……!」
「はあー……久々のしば君吸いはキマるなぁ。やっぱりこれだよねぇ」
「色々危ない発言はしないでくださいよ! というか、恥ずかしいですって!」
相変わらずの夕希さんのスキンシップに困惑したが、それと同時に変わらない部分がある事に安心感を覚えた。そして嬉しさと恥ずかしさを感じていると、それを見ながら泰希は更にニヤついた。
「大和、人前なんだからこんなとこで盛るなよ? そういうのは適した場所があるんだからな?」
「盛るか! それより泰希、さっきの話を夕希さんにしないといけないんじゃないか?」
「ん、それもそうだな。姉ちゃん、ちょっと話があるから大和から離れてくれ」
「はいはい」
夕希さんが離れた瞬間に安心感と寂しさを同時に感じたが、俺はとりあえずそれらを彼方に追いやった。そして夕希さんが注文を終えると、泰希は頷いてからまた真剣な顔をしながら夕希さんを見た。
「姉ちゃん、さっき大和には頼んだし、父さん達にも話したんだけどさ」
「うん」
「大和に姉ちゃんの事を任せようと思う」
「任せる……え、どういう事?」
夕希さんはとても困惑した様子で俺と泰希を見回す。初耳だったのもそうだろうが、任せるという言葉の意味もわからなかったのだろう。
「交際とまではいかなくとも、大和に姉ちゃんとの外出や愚痴に付き合ってもらって、姉ちゃんの心のガス抜きをしたいんだ。今の姉ちゃんはやっぱり見てられないし、あの父さんも大和になら任せられるって言ってたしな」
「そ、そんな突然……それに、しば君だってそんな事を言われたら迷惑じゃ……」
夕希さんがおろおろする。もちろん俺からしたら迷惑ではないが、夕希さんからしたら久しぶりに会った弟の友達、それも高校三年生という忙しい時期にそんな事を頼むのは迷惑だと考えたのだろう。そんな夕希さんの姿を見て、俺はふうと息をついてから震える夕希さんの手を静かに握った。
「大丈夫ですよ、夕希さん。進学組ではありますけど、勉強を疎かにする気はないですし、俺だって夕希さんを放ってはおけませんから」
「しば君、でも……」
「姉ちゃんも大和なら安心だろ? だって、姉ちゃんは昔から大和の事を……」
「ちょ、泰希! それは!」
夕希さんは慌てた様子で泰希を制止する。気に入られているという事を言おうとしただけだと思うが、そこまで慌てるような事かと俺は首を傾げるしかなかった。そして夕希さんは大きく息を吐いて気持ちを落ち着けると、少し申し訳なさそうな顔で俺を見た。
「ま、まあ……しば君が良いって言うならお願いしようかな。私もこのままじゃいけないなと思ってたし、これもいい機会だから」
「わかりました。夕希さん、これからよろしくお願いします」
「……うん、よろしくね」
夕希さんは安心した様子で笑う。その笑顔を見られただけでも来てよかったと思えた。
「よーし、そうと決まればここで飯を食べながら午後の事について決めようぜ」
「午後の事?」
「そう。午後はなんと……二人にデートしてもらうからな!」
「デ……!?」
「デート……!?」
泰希の突然の言葉に俺と夕希さんは驚くしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる
九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。
※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる