15 / 24
第二話 おばさん冒険者、特命依頼を受ける
7
しおりを挟む
「なぁ、さっきの見ただろ? 膝使わなくても討伐に参加できんだよ!」
「あれはアリスの防御壁の中だからだ。何もないところで囲まれたらどうすんだよ!」
「それは普通に拳でさぁ」
「それじゃダメだろ!? また膝やられたらどうすんだよ!」
列の先頭のリックと、後方のサダイズの大声での会話だ。
(なんだか、逆になっちゃいました……)
余計なことをしたんじゃないか、とリーナはおろおろする。
今、パーティを続けたいと言っているのはサダイズで、辞めるべきと言っているのはリックだった。
(サダイズさんもやっぱり冒険者を辞めたくなかったんですよね)
リーナの提案で球を投げて闇騎士を倒したことで、サダイズはまだ続けられると考えたようだった。
それでリックと揉めている。
「内輪の話で、すみませんね」
ダウトがラリーに謝ると、
「いやぁ、お互い様ですよ」
と、昨日うっかり罠を発動させて誰よりも迷惑をかけたテリーが答えた。
お前が言うか? という微妙な空気がその場に流れたのは当然だ。
――リーナたちは闇騎士がいた部屋の調査を終わらせ、次の隠し部屋に向かっている。
残されていた薬物や器具は、記録を取った後、ラリーが持ってきたマジックバッグに入れた。証拠品は持ち帰って詳しく調べるそうだ。
「もう! 何なのよ! うるさいわね!」
アリスの叫びが響いた。
それで、リックとサダイズの大声が止まった瞬間、テリーが「あっ!」と叫んだ。
「こんなところに、八股蔦が!」
テリーは止める間もなく、壁に生えている蔦のツルを引っ張った。
「あ!」
「え?」
「またなの!?」
ががががっと重い音を立てて、蔦があった壁が動く。
「隠し部屋ですか!?」
壁がずれた向こうはやけに明るい部屋だった。
床が一面緑だ。
「これは! 魔封風負草!」
駆け込もうとするテリーをビリーが慌てて止めた。
「魔封風負草って違法薬物の原料じゃないですか! まさかここでも育ててたんですか?」
「いや、犯人の供述にはなかったんですが……」
ラリーが答えたとき、奥から何かが飛び出してきた。
「闇鎧鼠だ!」
ダウトが言うやいなや、アリスが隠し部屋に駆け込んだ。
「アリス! 何やってんだよ!」
リックもアリスを追う。
闇鎧鼠は金属でできた鼠だ。闇騎士の鼠版と言えるか。一抱えくらいあり、普通の鼠はもちろん、他の鼠系魔物と比べても大きい。
(違法薬物の原料があるってことは、もしかして、この鼠もおかしな行動をするんでしょうか?)
「あんたたちはそこに残ってなさい!」
アリスはリーナたちを囲む防御壁を出した。
「おい! 俺も」
「鼠しかいなそうだから、あいつらだけで十分だろ」
サダイズをダウトが止める。
「リーナ、何か投げるもんねぇのか?」
「ありませんよぉー」
鼠は数は多そうだけれど、アリスもリックも一発で仕留めているから、どんどん減っている。
出てきたそばから吹っ飛ばされるため、鼠が異常行動を取っているかどうか確認する隙もなかった。
ガチャンガチャンと鎧の音が響く中、
「前と後ろで大声で言い争いして、イライラするのよ! そういうのは、帰ってからやりなさいよ!」
アリスは鼠をリックに向けて蹴る。
それを避けたリックは、「俺のせいじゃねぇよ!」と怒鳴る。
「何なのよ! いい大人が子どもみたいに!」
「うるせぇ! ガキで悪いか!?」
リックもアリスに向けて鼠を蹴った。
(鼠にとっては完全に八つ当たりですよね?)
「そのガキは、何のために冒険者になったの? 何がしたくてパーティ結成したわけ?」
「ずっとガキのままでいたかったからだよ! 三人でつるんでいたかったんだよ!」
ガシャンっと音を立てて、リックが蹴った鼠が防御壁に当たって跳ね返った。
それが最後の鼠だったようで、部屋の中に立っているのはアリスとリックだけになる。
「三人で一緒にいたいだけなら、何とでもなるじゃない! 討伐や護衛は断って、採取依頼を受ければいいのよ。日帰りで行けるところに三人で行けばいいでしょ?」
「日帰り……? 採取?」
「まだまだ人生は続くのよ。長く楽しく、無理せずに、うまくやっていかないと」
アリスはこちらを振り向いて、防御壁を消した。
ダウトが一歩前に出る。
「それはいいな。『籠目』は採取依頼専門ってことにしよう」
リックとサダイズがダウトを見た。
「リック、お前だって、疲れが取れないって言ってただろ。俺だって、もう若い頃のようにはいかないと思う。何かあってからじゃ遅いのは、俺もお前も同じだろ」
「あ、ああ……」
「俺は『籠目』を辞めたくねぇよ!」
サダイズが訴えると、リックは「あーっ!」と吹っ切るように大声を出した。
「わかったよ! 採取な! 三人でまた白爪蓬でも摘むか!!」
リックがそう言うと、ダウトがぶっと吹き出す。
「それ、最初の依頼だろ」
「リックが間違えて花咲兎の花を摘もうとして、毒被ったやつな!」
サダイズも笑って、隠し部屋の中に入っていった。
「いちいち大きな声を出さないとならないの、何なのよ」
アリスは小声で文句を言いつつも笑顔だ。
リーナも、「まとまって良かったですね!」と笑う。
「ええ、そうね」
と、リーナに笑顔を返したアリスは、くるりと振り返った。
すうっと笑顔が消える。
「テリー! そこに座りなさい!」
「ひぃ! 申し訳ありませんー!」
リーナはそのときのアリスの顔を見て、心に強く誓った。
(アリスおばさんだけは怒らせないようにしましょう!!)
「あれはアリスの防御壁の中だからだ。何もないところで囲まれたらどうすんだよ!」
「それは普通に拳でさぁ」
「それじゃダメだろ!? また膝やられたらどうすんだよ!」
列の先頭のリックと、後方のサダイズの大声での会話だ。
(なんだか、逆になっちゃいました……)
余計なことをしたんじゃないか、とリーナはおろおろする。
今、パーティを続けたいと言っているのはサダイズで、辞めるべきと言っているのはリックだった。
(サダイズさんもやっぱり冒険者を辞めたくなかったんですよね)
リーナの提案で球を投げて闇騎士を倒したことで、サダイズはまだ続けられると考えたようだった。
それでリックと揉めている。
「内輪の話で、すみませんね」
ダウトがラリーに謝ると、
「いやぁ、お互い様ですよ」
と、昨日うっかり罠を発動させて誰よりも迷惑をかけたテリーが答えた。
お前が言うか? という微妙な空気がその場に流れたのは当然だ。
――リーナたちは闇騎士がいた部屋の調査を終わらせ、次の隠し部屋に向かっている。
残されていた薬物や器具は、記録を取った後、ラリーが持ってきたマジックバッグに入れた。証拠品は持ち帰って詳しく調べるそうだ。
「もう! 何なのよ! うるさいわね!」
アリスの叫びが響いた。
それで、リックとサダイズの大声が止まった瞬間、テリーが「あっ!」と叫んだ。
「こんなところに、八股蔦が!」
テリーは止める間もなく、壁に生えている蔦のツルを引っ張った。
「あ!」
「え?」
「またなの!?」
ががががっと重い音を立てて、蔦があった壁が動く。
「隠し部屋ですか!?」
壁がずれた向こうはやけに明るい部屋だった。
床が一面緑だ。
「これは! 魔封風負草!」
駆け込もうとするテリーをビリーが慌てて止めた。
「魔封風負草って違法薬物の原料じゃないですか! まさかここでも育ててたんですか?」
「いや、犯人の供述にはなかったんですが……」
ラリーが答えたとき、奥から何かが飛び出してきた。
「闇鎧鼠だ!」
ダウトが言うやいなや、アリスが隠し部屋に駆け込んだ。
「アリス! 何やってんだよ!」
リックもアリスを追う。
闇鎧鼠は金属でできた鼠だ。闇騎士の鼠版と言えるか。一抱えくらいあり、普通の鼠はもちろん、他の鼠系魔物と比べても大きい。
(違法薬物の原料があるってことは、もしかして、この鼠もおかしな行動をするんでしょうか?)
「あんたたちはそこに残ってなさい!」
アリスはリーナたちを囲む防御壁を出した。
「おい! 俺も」
「鼠しかいなそうだから、あいつらだけで十分だろ」
サダイズをダウトが止める。
「リーナ、何か投げるもんねぇのか?」
「ありませんよぉー」
鼠は数は多そうだけれど、アリスもリックも一発で仕留めているから、どんどん減っている。
出てきたそばから吹っ飛ばされるため、鼠が異常行動を取っているかどうか確認する隙もなかった。
ガチャンガチャンと鎧の音が響く中、
「前と後ろで大声で言い争いして、イライラするのよ! そういうのは、帰ってからやりなさいよ!」
アリスは鼠をリックに向けて蹴る。
それを避けたリックは、「俺のせいじゃねぇよ!」と怒鳴る。
「何なのよ! いい大人が子どもみたいに!」
「うるせぇ! ガキで悪いか!?」
リックもアリスに向けて鼠を蹴った。
(鼠にとっては完全に八つ当たりですよね?)
「そのガキは、何のために冒険者になったの? 何がしたくてパーティ結成したわけ?」
「ずっとガキのままでいたかったからだよ! 三人でつるんでいたかったんだよ!」
ガシャンっと音を立てて、リックが蹴った鼠が防御壁に当たって跳ね返った。
それが最後の鼠だったようで、部屋の中に立っているのはアリスとリックだけになる。
「三人で一緒にいたいだけなら、何とでもなるじゃない! 討伐や護衛は断って、採取依頼を受ければいいのよ。日帰りで行けるところに三人で行けばいいでしょ?」
「日帰り……? 採取?」
「まだまだ人生は続くのよ。長く楽しく、無理せずに、うまくやっていかないと」
アリスはこちらを振り向いて、防御壁を消した。
ダウトが一歩前に出る。
「それはいいな。『籠目』は採取依頼専門ってことにしよう」
リックとサダイズがダウトを見た。
「リック、お前だって、疲れが取れないって言ってただろ。俺だって、もう若い頃のようにはいかないと思う。何かあってからじゃ遅いのは、俺もお前も同じだろ」
「あ、ああ……」
「俺は『籠目』を辞めたくねぇよ!」
サダイズが訴えると、リックは「あーっ!」と吹っ切るように大声を出した。
「わかったよ! 採取な! 三人でまた白爪蓬でも摘むか!!」
リックがそう言うと、ダウトがぶっと吹き出す。
「それ、最初の依頼だろ」
「リックが間違えて花咲兎の花を摘もうとして、毒被ったやつな!」
サダイズも笑って、隠し部屋の中に入っていった。
「いちいち大きな声を出さないとならないの、何なのよ」
アリスは小声で文句を言いつつも笑顔だ。
リーナも、「まとまって良かったですね!」と笑う。
「ええ、そうね」
と、リーナに笑顔を返したアリスは、くるりと振り返った。
すうっと笑顔が消える。
「テリー! そこに座りなさい!」
「ひぃ! 申し訳ありませんー!」
リーナはそのときのアリスの顔を見て、心に強く誓った。
(アリスおばさんだけは怒らせないようにしましょう!!)
176
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい
あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。
誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。
それが私の最後の記憶。
※わかっている、これはご都合主義!
※設定はゆるんゆるん
※実在しない
※全五話
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる