16 / 31
第二話 おばさん冒険者、特命依頼を受ける
8(第二話完結)
「あの隠し部屋の薬草畑は、自然のものだったらしい」
「えっ、そうなの?」
アリスは驚いて、手に取っていたカップをテーブルに戻した。
特命依頼から帰ってしばらく経ったころ、アリスは冒険者ギルドの応接室で、ドムから話を聞いていた。
「あんなに茂っていたのに?」
「ダンジョンの隠し部屋に特定の植物が群生しているのは、よくあるだろ?」
「あー、まあ、そうね」
アリスはうなずく。
(リーナが誘拐されたときも、爆裂草を隠し部屋から摘んで武器にしたって言ってたし)
「今回は、薬物の原料が群生しているダンジョンを、そうとは知らずにたまたま犯罪組織が拠点にしてたってわけだな」
「そうなのね……」
「あれを犯人が見つけてたら、あそこを手放すことはなかっただろうよ」
「それもそうよね。犯人たちに発見されなくて幸いだったってことかしら?」
「だな」
ドムは言葉を切って、眉間に皺を寄せる。
「あの闇騎士だがな。公開する情報は制限することになった」
「制限って?」
「魔物は餌が合わないと異常行動を取ることがある、ってのが公表する情報だ。違法薬物が魔物に影響を与える、ってのは隠すことになった。犯罪組織に伝わって悪用されちゃ困るってぇわけだ」
ソシレ伯爵や西の領主たちと、冒険者ギルドの本部の幹部が決めたらしい。
「リーナや『籠目』にも伝えたが、アリスも口外しないように気をつけてくれや」
「わかったわ」
アリスは了承して、お茶を飲む。
難しい話は終わりなのか、ドムもお茶を手に取った。
「『籠目』といやぁ、正式に採取専門になったぞ」
「そう。良かったわ」
身体に不安がある中での討伐は危険だ。
採取のときにも魔物に出会うことがないわけではないが、討伐が目的でないなら避けようがある。
「年には敵わんなぁ……」
ため息をつくドムに、アリスは聞いてみる。
「あなたはどうなの?」
「俺かぁ? そうだなぁ。俺も、今また七字名の魔物を討伐しろって言われても無理だろうな」
お前は? と聞き返されて、アリスは少し考える。
「接近戦は厳しくなってきたかしら? 防御壁で吹っ飛ばすのなら問題ないんだけど」
「防御壁だけでも十分戦力だろ」
ドムは笑って、
「『籠目』に採取依頼を回せるようになるから、お前も好きに依頼を受けて構わんぞ」
「そうねぇ」
好きな依頼、とアリスは考える。
「リーナを連れて行ける依頼がいいわね」
「お、そうか? 何ならパーティを組むか?」
「うーん。あたしがリーナとパーティを組んだらウィルがかわいそうだから、それはやめておくわ」
「ウィルと組むのか? あんなに逃げ回ってたのに、ついにか!?」
ドムが身を乗り出すのも当然で、結婚前アリスはウィルとパーティを組んではいなかった。ソロのアリスにウィルが付きまとっていたのだ。
(それが、なんだかんだで結婚してエディが生まれて……。人生ってわからないものねぇ)
初めて王城の交流会で会ったウィルは、無気力そうな王子だった。それから十年以上経って、こんな辺境まで追いかけてくるとは思ってもみなかった。
アリスが昔を懐かしんでいたところに、ドアが叩かれた。
ドムが返事をすると、顔を出したのはリーナだった。
「あのぅ、アリスおばさんに指名依頼が来たんですけど……」
「指名依頼? 何の?」
「護衛です」
それからリーナは言いにくそうに付け加える。
「えっとですね、依頼主が……、なんと! この間の捜査員のテリーさんなんです!」
「嫌よ!」
「『リリンの森』の植物は今まで採取依頼を出してたけど、護衛依頼を出せば自分で取りに行けるって思ったみたいで……」
「却下!」
アリスが顔を背けると、リーナは困り顔で、
「気持ちはわかりますけどー」
「だから、却下よ!」
ドムが「またおかしな奴に気に入られたみたいだな」と大笑いしたから、アリスは柔らか防御壁をぶつけてやった。
「えっ、そうなの?」
アリスは驚いて、手に取っていたカップをテーブルに戻した。
特命依頼から帰ってしばらく経ったころ、アリスは冒険者ギルドの応接室で、ドムから話を聞いていた。
「あんなに茂っていたのに?」
「ダンジョンの隠し部屋に特定の植物が群生しているのは、よくあるだろ?」
「あー、まあ、そうね」
アリスはうなずく。
(リーナが誘拐されたときも、爆裂草を隠し部屋から摘んで武器にしたって言ってたし)
「今回は、薬物の原料が群生しているダンジョンを、そうとは知らずにたまたま犯罪組織が拠点にしてたってわけだな」
「そうなのね……」
「あれを犯人が見つけてたら、あそこを手放すことはなかっただろうよ」
「それもそうよね。犯人たちに発見されなくて幸いだったってことかしら?」
「だな」
ドムは言葉を切って、眉間に皺を寄せる。
「あの闇騎士だがな。公開する情報は制限することになった」
「制限って?」
「魔物は餌が合わないと異常行動を取ることがある、ってのが公表する情報だ。違法薬物が魔物に影響を与える、ってのは隠すことになった。犯罪組織に伝わって悪用されちゃ困るってぇわけだ」
ソシレ伯爵や西の領主たちと、冒険者ギルドの本部の幹部が決めたらしい。
「リーナや『籠目』にも伝えたが、アリスも口外しないように気をつけてくれや」
「わかったわ」
アリスは了承して、お茶を飲む。
難しい話は終わりなのか、ドムもお茶を手に取った。
「『籠目』といやぁ、正式に採取専門になったぞ」
「そう。良かったわ」
身体に不安がある中での討伐は危険だ。
採取のときにも魔物に出会うことがないわけではないが、討伐が目的でないなら避けようがある。
「年には敵わんなぁ……」
ため息をつくドムに、アリスは聞いてみる。
「あなたはどうなの?」
「俺かぁ? そうだなぁ。俺も、今また七字名の魔物を討伐しろって言われても無理だろうな」
お前は? と聞き返されて、アリスは少し考える。
「接近戦は厳しくなってきたかしら? 防御壁で吹っ飛ばすのなら問題ないんだけど」
「防御壁だけでも十分戦力だろ」
ドムは笑って、
「『籠目』に採取依頼を回せるようになるから、お前も好きに依頼を受けて構わんぞ」
「そうねぇ」
好きな依頼、とアリスは考える。
「リーナを連れて行ける依頼がいいわね」
「お、そうか? 何ならパーティを組むか?」
「うーん。あたしがリーナとパーティを組んだらウィルがかわいそうだから、それはやめておくわ」
「ウィルと組むのか? あんなに逃げ回ってたのに、ついにか!?」
ドムが身を乗り出すのも当然で、結婚前アリスはウィルとパーティを組んではいなかった。ソロのアリスにウィルが付きまとっていたのだ。
(それが、なんだかんだで結婚してエディが生まれて……。人生ってわからないものねぇ)
初めて王城の交流会で会ったウィルは、無気力そうな王子だった。それから十年以上経って、こんな辺境まで追いかけてくるとは思ってもみなかった。
アリスが昔を懐かしんでいたところに、ドアが叩かれた。
ドムが返事をすると、顔を出したのはリーナだった。
「あのぅ、アリスおばさんに指名依頼が来たんですけど……」
「指名依頼? 何の?」
「護衛です」
それからリーナは言いにくそうに付け加える。
「えっとですね、依頼主が……、なんと! この間の捜査員のテリーさんなんです!」
「嫌よ!」
「『リリンの森』の植物は今まで採取依頼を出してたけど、護衛依頼を出せば自分で取りに行けるって思ったみたいで……」
「却下!」
アリスが顔を背けると、リーナは困り顔で、
「気持ちはわかりますけどー」
「だから、却下よ!」
ドムが「またおかしな奴に気に入られたみたいだな」と大笑いしたから、アリスは柔らか防御壁をぶつけてやった。
あなたにおすすめの小説
即席異世界転移して薬草師になった
黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん)
秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。
そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。
色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。
秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!
八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。
補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。
しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。
そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。
「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」
ルーナの旅は始まったばかり!
第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※