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第八話
しおりを挟む「あぁ、一応言っておきますが何が『ガッタガタ』かと言いますと、もちろん領地経営がです。職務怠慢は日常茶飯事、その上横領まであるというのですから目も当てられません」
「き、貴様は……」
「あらお父様、実の娘に対して『貴様』とは流石にひどいと思いませんか? しかも今正に死を悼んでいた筈の娘に対して」
顔を青くした父に向って、私はそう言いベールを外す。
「私、死んでも死にきれず生き返って参りましたの。殺されたので、死にきれず」
狼狽した様子の父とまっすぐに目が合った。
実にいい気味である。
対して周りは途端に大きくざわつき始めた。
それはそうだろう。
死んだと思っていた人間が姿を見せた。
生きていたのか、それでも幽霊になって出て来たのか。
どちらにしても『殺された』というのが本当ならば、一体誰に殺されたのか。
そんな疑心があっという間に、辺りに色濃く立ち込める。
おそらくそれを「マズい」とでも思ったんだろう。
目の前の男が叫んだ。
「ピクティーはあの切り立った崖から落ちたのだ! そのせいで、遺体さえ探す事が叶わなかった。無事な筈が無いではないか! だというのにこの場に乱入し、尚且つ皆の心をかき乱すとは……無礼極まりない事だ!」
声を上げてそう言った彼は、傍から見れば娘思いの父のように見えるのだろう。
しかしそうでない事は、私が誰より知っている。
「あらお父様、最愛の娘の声を、顔を、お忘れですか? ……あぁ、お忘れかもしれませんね。なんせ社交のオフシーズンになる度に私だけを領地に帰して仕事をさせて、自分たちは王都で楽をしているくらいですもの」
つい先ほど彼が皆にしていた演説の嘘を暴き、本物の娘も分からない彼を揶揄してみせる。
先程確認してみたが、ここには私の友人たちもちゃんと参列してくれている。
父関係の付き合いで出席している貴族達なら未だしもとして、彼女たちが気付いてくれない筈はない。
すると私のこの気持ちに答える様に、「ピクティー……」「ピクティーですわ!」という声が口々に上がり始めた。
ありがとう、友たちよ。
が、こんな状況でも彼はまだ食い下ってくる。
「整形……そう! 別人が整形手術をして姿形を似せているのだ!」
「私が死んだ事になってから今日までは賞味1週間。整形手術をしていても、術後の完治に間に合いませんよ。悪足掻きはよしていただけません? 見苦しい」
わざとらしくため息を吐きながら周りにそう聞かせてやると、彼はカッと顔を赤くして怒り、「そんなものではお前が本物である証拠にはならない! 前から準備していた可能だってあるだろうが!」と声を大きく荒げてきた。
「……そんな偽証をするなんて、さてはお前こそがピクティーを事故に見せかけて谷に落とした真犯人だな? 自分で事件を起こすのならば、事前に整形手術を済ませておくのもさぞかし簡単だろうからなぁ!」
そう言うと、手持ちの騎士たちに「とっととこの不愉快な偽物を捕まえんかっ」と指示を飛ばす。
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