どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
7 / 12

第八話

しおりを挟む


「あぁ、一応言っておきますが何が『ガッタガタ』かと言いますと、もちろん領地経営がです。職務怠慢は日常茶飯事、その上横領まであるというのですから目も当てられません」
「き、貴様は……」
「あらお父様、実の娘に対して『貴様』とは流石にひどいと思いませんか? しかも今正に死を悼んでいた筈の娘に対して」

 顔を青くした父に向って、私はそう言いベールを外す。

「私、死んでも死にきれず生き返って参りましたの。殺されたので、死にきれず」

 狼狽した様子の父とまっすぐに目が合った。
 実にいい気味である。


 対して周りは途端に大きくざわつき始めた。

 それはそうだろう。
 死んだと思っていた人間が姿を見せた。
 
 生きていたのか、それでも幽霊になって出て来たのか。
 どちらにしても『殺された』というのが本当ならば、一体誰に殺されたのか。

 そんな疑心があっという間に、辺りに色濃く立ち込める。

 
 おそらくそれを「マズい」とでも思ったんだろう。
 目の前の男が叫んだ。

「ピクティーはあの切り立った崖から落ちたのだ! そのせいで、遺体さえ探す事が叶わなかった。無事な筈が無いではないか! だというのにこの場に乱入し、尚且つ皆の心をかき乱すとは……無礼極まりない事だ!」

 声を上げてそう言った彼は、傍から見れば娘思いの父のように見えるのだろう。
 しかしそうでない事は、私が誰より知っている。

「あらお父様、最愛の娘の声を、顔を、お忘れですか? ……あぁ、お忘れかもしれませんね。なんせ社交のオフシーズンになる度に私だけを領地に帰して仕事をさせて、自分たちは王都で楽をしているくらいですもの」

 つい先ほど彼が皆にしていた演説の嘘を暴き、本物の娘も分からない彼を揶揄してみせる。


 先程確認してみたが、ここには私の友人たちもちゃんと参列してくれている。
 父関係の付き合いで出席している貴族達なら未だしもとして、彼女たちが気付いてくれない筈はない。

 すると私のこの気持ちに答える様に、「ピクティー……」「ピクティーですわ!」という声が口々に上がり始めた。
 ありがとう、友たちよ。


 が、こんな状況でも彼はまだ食い下ってくる。

「整形……そう! 別人が整形手術をして姿形を似せているのだ!」
「私が死んだ事になってから今日までは賞味1週間。整形手術をしていても、術後の完治に間に合いませんよ。悪足掻きはよしていただけません? 見苦しい」
 
 わざとらしくため息を吐きながら周りにそう聞かせてやると、彼はカッと顔を赤くして怒り、「そんなものではお前が本物である証拠にはならない! 前から準備していた可能だってあるだろうが!」と声を大きく荒げてきた。

「……そんな偽証をするなんて、さてはお前こそがピクティーを事故に見せかけて谷に落とした真犯人だな? 自分で事件を起こすのならば、事前に整形手術を済ませておくのもさぞかし簡単だろうからなぁ!」

 そう言うと、手持ちの騎士たちに「とっととこの不愉快な偽物を捕まえんかっ」と指示を飛ばす。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!

杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。 彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。 さあ、私どうしよう?  とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。 小説家になろう、カクヨムにも投稿中。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...