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第一章:奔走する者と、機を待つ者。
第1話 寝耳に水(3)
しおりを挟む何がまずいかといえば、それが『王族主催のパーティー』での出来事だという噂な所だろう。
主催者である王族に何の断りも無く、他貴族をパーティーから追い出す。
もしもそんな事があったのなら。
(否、実際にあったのかどうかが問題なのではない。そういう噂が立っている事自体がまずは問題だ)
そんな風に思いながら、グランは思わず心中で青ざめる。
真実がどうであれ、噂を聞いた他貴族達には「爵位を笠に着た行い」に見える事必至だ。
しかも、一度パーティー会場に入った王族の招待客を、彼らの断りも無く追い出す行為は、「王族の意志をないがしろにした」と取られてしまっても文句は言えない。
もしもこの噂が、王族の耳に入ったら。
そして、もしもその事で王族にに咎められる様な事になれば。
グランの防波堤になってれる者は誰も居ない。
何故ならここは王国であり、王政を布いているこの国の最高権力者は王なのだから。
ドクリ。
心臓が嫌な音を立てた。
思わず唾を無意識に嚥下しながら、グランは混乱した頭で考える。
(その噂は本当なのか。……否、そんな事はどうでも良い。この噂を消さなければ)
噂が流れる事自体が問題なのだ。
そしてその噂は、この会場内の空気を見るに相当な範囲に広がってしまっている。
しかし。
(噂の存在自体、初めて知ったのだ。情報が足りない。収束を焦るばかりに此処で下手な事を言ってしまえば、却って状況が悪くなる可能性だってある)
グランも、かれこれ社交歴25年になる。
余計な口が新たな火種になるという事は、既に経験則として知っているのだ。
だから、今出来る最大限の応急処置に出る。
「それはまた、事実が随分と歪曲されているな。まぁ社交界の噂など大抵はそんなものばかりだが」
焦る心をひた隠しにて、グランは笑顔で笑い飛ばした。
するとそんな彼に呼応して、周りの空気が安堵に緩む。
「あぁ、そうですよね。噂に一々踊らされるなどと、私達もまだまだですな」
「本当に。もし噂が本当なのだとしたら『王族案件』になるかもと、柄にもなく少し焦ってしまいました」
「はははっ、お互いに噂話の道化にはならん様にせんとなぁ」
周りが口々にそんな事を口にする。
それらを聞きながら、グランは無理やりに笑顔を作り続けたのだった。
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