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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第15話 モンテガーノ侯爵の『提案』
しおりを挟むセシリアが脳裏でそんな思考を巡らせていると「それでこの後だが」と、侯爵が話の続きをし始めた。
「今日のお茶会で大々的にこの事実を公表しようと思うのだ。そこで、セシリア嬢にはそれに協力してもらう」
曰く、
私達の間に些細な認識の食い違いがあったが、それも話し合い誤解が解けた。
今は和解し、それどころかその交流を以って前よりも親交を深めるに至っている。
そう周りに印象付ける様に立ち回って欲しい。
それが彼の話の要点だった。
しかしそれは『あまりにも』だ。
幾ら社交の仮面を目深に被っているセシリアでも、思わずピクリと眉間が動いてしまう。
彼らの描いた筋書きは、おそらくこうだ。
クラウンはあの日、確かにセシリアのドレスを汚してしまった。
しかしそれに対し、クラウンはただ善意で『ドレスを着替えたらいい』と言っただけだった。
それをセシリアは『パーティーから帰れ』と言われたと認識した。
それは不幸な誤解だった。
その誤解は話し合いによって解け、両者は和解に至った。
それどころか腹を割って話をしたお陰で、より友好を深めることが出来た。
今はとても仲良し。
だから王族案件に発展する事も無い。
そんな筋書きを目の当たりにして、セシリアは一人思考する。
(もしそれが周りに浸透すれば、確かにあちらの抱えている問題は一気に解決するだろう)
社交に一定の方便を使う事を、セシリアは決して否定しない。
ただそこに至るまでのプロセスを省く彼のやり方に、セシリアは大きな引っ掛かりを覚える。
(そもそも、私達はまだその一件について何1つ具体的な話をしていないのに)
そう思わずにはいられない。
例えば『両者間では認識の食い違い』について。
「それは誤解だったのだ、こちらにその意図は無かった」
「そうなのですね、こちらも変な誤解をしてしまいすみませんでした」
「いや、そもそもこちらがドレスを汚してしまったのが悪いのだ。気にしないでくれ」
等という会話をする必要が、そもそもあるのだ。
ソレは全く互いの気持ちを反映していない、何とも白々しいやりとりに聞こえるかもしれないが、必要な物でもある。
少なくとも『和解』という形式を取るのなら。
しかしその手間さえもを省いて、彼は段取りを話し始めた。
そうする事によって、手取り早く自分達の要求をただ呑ませようとしているのだ。
ただ決められた台本通りに動けばいいのだ。
そういう意図が感じられる、その態度。
そんなものを向けられて、良い気持ちなどする筈がない。
(こっちがそういう気持ちになるって事くらい、少し考えればわかる筈なのに)
にも関わらず、和解どころか『親交を深める事が出来た』なんていうプラスαに快く力を貸すなどと、一体どうしたらそんなにも事を楽観視出来るのか。
セシリアにはそれが不思議でならない。
すると、セシリアのそんな心情を読んだのか。
レレナが柔らな声でこんな事を言ってくる。
「これは、互いにとって非常に良い手です。だってもしこれが成功すれば、新たに得た『モンテガーノ侯爵家との友好』のお陰できっとこの先の社交が楽になるでしょうから」
モンテガーノ侯爵家と仲良くしたい家がオルトガン伯爵家に対しても勝手に便宜を図ってくれる。
彼女は言外にそう言った。
しかしその言葉の内容よりも『ヴォルド公爵夫人』がそう言ったという事実の方がより重い。
(――これは、一種の脅しだ)
彼女の言葉を、セシリアは瞬時に、かつ正しく理解した。
この話に乗る事を、ヴォルド公爵家も望んでいる。
そして、もしそれが成されない時。
ソレはヴォルド公爵家の意に反する時である。
つまり、彼女がセシリア達に何を突きつけてきたのかというと。
(『両家を敵に回すつもり?』と言いたいのだ、あちらは)
自分の権力を以って押し通す。
そんな意思がそこにはあった。
そんな彼女を前に、セシリアは『最善』を考える。
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