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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第14話 喜劇主人公のフォロー(2)
しおりを挟む在学中、2人は確かに同じ学校に通う生徒だった。
しかし2人の現在の関係性を考えれば、間違っても『級友』という言葉は出てこない筈である。
言葉を飾らず、オブラートに包む事もせずに言うのなら、おそらくは『鬱憤晴らしの為の玩具』というのが、侯爵が抱くこちらへと認識だろう。
(それが分かってて、嫌な気持ちにならない筈がない)
しかしそんなフラストレーションはお首にも出さない。
大人顔負けに、笑顔で気持ちを押し込める。
すると、そんな私に、侯爵はこう尋ねてきた。
「それで改めて確認するが、そちらは『和解を受ける』という事で良いんだな?」
「はい。構いません」
モンテガーノ侯爵の確認に、セシリアはきっぱりとそう答えた。
セシリアは、モンテガーノ侯爵家に対しては元々良い感情を持っていない。
今日のこの短い時間で行われた様々な言動にも、少し思う所は存在する。
しかし。
(それとこれとは、分けて考える)
その位の分別を、セシリアはきちんと持ち合わせてている。
対してモンテガーノ侯爵はというと、改めての了承にどうやら安堵や喜びの感情は抱かなかった様である。
彼はおそらく最初から『彼女の選択肢はYesの一択だ』と、最初から思っていたのだろう。
そもそも彼は、最初からそういう態度だった。
だから最初に送って来た謝罪の手紙だってあの体たらくだったのだし、その後も回りくどく小賢しい工作を行い、今日のお茶会に至ったのだ。
そう考えれば彼のこの様子も、決して不思議ではない。
そしてモンテガーノ侯爵が抱くそれらの感情は、例えば他の貴族達が相手だったなら、綺麗さっぱり隠し通せていたのかもしれない。
しかし相手がセシリアであるが故に、その可能性はものの見事に潰えた。
否、彼女だけでは無い。
おそらくオルトガン伯爵家の血筋、その中でもとりわけ社交に関する洞察力に優れたクレアリンゼの素質を受け継ぎ、彼女から英才教育を受けて育った3兄妹。
もしも彼らの内の他の人間が、この場に居合わせたのならば。
(こんな薄ガード、等しく容易に食い破った事だろう)
それは疑いようもない。
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