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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第22話 解消と、巡る可能性(1)
しおりを挟むあの後、最初に二人をあの部屋へと案内した執事が慌てて一行の後を追いかけてきた。
「お茶会会場へご案内いたしますので」
そう言った彼に、クレアリンゼは「それならば」と口を開く。
「その前に、少しお化粧を直したいのだけれど」
その声に、執事は2、3秒の沈黙の後で「ご案内します」と頭を下げた。
着いたのは、身なりを整える為の部屋だった。
俗に言う休憩室というやつで、こういうお茶会では客用に幾つか用意されているものなのである。
勿論客人の数だけ用意する事は出来ないので、一時的に休憩する場所だ。
用事が済んだらすぐに出なければならないが、逆に言えばその間だけはプライベートスペースに成り得る。
セシリア達は計2人、使用人を家から連れてきている。
その為、ここまで案内してくれた執事は「御用があればお呼びください」と言い部屋を辞去した。
おそらく今は、部屋の外に待機しているのだと思われる。
そんな一室で、セシリアは小さく息をついた。
それは安堵とも疲れとも取れる様な息だ。
しかし、男勢はともかくレレナを相手にしていたのだ。
そんな複雑な感情がため息を吐かせても別におかしなことではない。
セシリアは、息を吐くことで意識的に自身の中の戦闘状態を一時解除した。
そして貴族から10歳の少女に戻り、「お母様」と声をかける。
その声に、クレアリンゼは振り返ることなく「なぁに?セシリア」と答えた。
どうやら『化粧直しがしたい』というのも、決して嘘では無かった様である。
鏡の前に座りポーラに僅かな化粧崩れを直してもらっているため、振り替える事ができないのだ。
その代わりと言わんばかりに、鏡に映った母とセシリアの目が合う。
そんな彼女に、セシリアは少し不安げに告げた。
「こんな大事な事、私達で決めてしまってよかったのでしょうか……?」
セシリアが今気にしている「大事な事」というのは、何を隠そう和解『劇』を拒否した事についてだった。
侯爵とクラウン、あの2人の態度には、オルトガン伯爵家として看過できない部分があった。
あからさまに舐められていると分かっているにも関わらず『権力を使えばこちらが何でもする』だなんて、絶対に思われてはならない。
だから「本人からの謝罪を拒否する事」と、「和解『劇』という相手の要望を却下する事」は必要で必然だった。
そしてその必要で必然を成す為には、アレが最も効率的なやり方だった。
少し挑発混じりに思えたかもしれないが、互いにマウントを取り合うのが仕事なのだから貴族間ではあんな事日常茶飯事なやりとりだ。
あれくらいの事で一々感情を荒げていては、社交など満足に出来やしない。
しかしその最善のせいで、もしも父の予測や予定に狂いが生じたのなら。
(それはそれで、ちょっと「申し訳ない」って思う)
特に、最善や効率を抜きにした感情的な部分で。
勿論、その言動の前にはクレアリンゼに視線で無言のお伺いを立てていた。
しかしセシリアだって人間だ、ふと不安になる事だってある。
家族の社交に、ひいては領地に関係する事柄を、ほぼ自分の独断で行ってしまって良かったのか。
そう口に出して問い、答えをもらって安心したい事だって。
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