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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第21話 聞き分け
しおりを挟む「……レレナ、何故お前は口を挟まなかった」
クレアリンゼとセシリアが退出した後、ヴォルド公爵が低い声でそう尋ねた。
すると、対するレレナはすんとした表情で言葉を返す。
「だって反論の余地がありまして? セシリアさんの言う通り、今の彼に『劇』が出来るとは私にも思えませんでしたが」
聞こえてきたその声は、公爵にとっては忌々しい事にセシリア側の擁護だった。
公爵は、反論のための口を開いた。
しかしその反論は、残念ながら言葉にはならない。
それもその筈、何故なら。
(……反論の余地が、無い)
そう、心中で呟く。
やり玉に挙げられた彼の方に、チラリと視線を向けた。
そして、思わずため息を吐く。
そこにあるのは、依然として感情を御せていないクラウンだ。
「…… 『劇』が一番手っ取り早い手ではあったが、まぁ仕方が無い。一応和解は成ったのだ。あとは地道に対処していくしかないな」
レレナが言うならばきっと現状では『劇』作戦は成し得ないのだろうし。
そんな言葉は、公爵が心中でのみ呟いた言葉だった。
これは、公爵がレレナの社交能力を強くかっているからこその言葉だった。
ポツリと呟かれた諦めは、静かな室内も手伝って思いの外辺りに響いた。
その呟きは、正しく今日への諦めではあった。
しかし同時に、明日以降も戦い続ける事を示していた。
そして、その意思を聞いたモンテガーノ侯爵はというと。
彼の表情は険しかった。
しかしそこに、諦めの色は無い。
もしも後にこの時を振り返って何か反省する事があるとしたら、それは席配置の悪さだろう。
レレナの席から、彼のその表情は見えなかった。
ヴォルド公爵は、見える位置には居たがその表情には気付いても、その内心までは上手く飲み取れなかった。
そしてモンテガーノ侯爵は、背後に迫る現実的な脅威の足音に聞き分けよくいられはしなかった。
この食い違いが、後の一悶着の原因に発展する事を、この時の彼らはまだ知らない。
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