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3話
しおりを挟む「ま、待ってくれ!」
しかし、デビットがソファから身を乗り出して私を引き止めた。
「なんですか?」
「どうしてもマーシャから手を引かないと言うのか?」
「ええ、もちろん」
「そうか……なら、君を脅迫の罪で訴えてやる!」
「はぁ?」
「今、マーシャと僕に対して慰謝料を請求すると脅して結婚できないようにした! これはつまり、君が僕との婚約を破棄したくないからだろう! 君は嫉妬に駆られて非道なことをしている!」
「あの……、何を言っているんですか?」
私は慰謝料の請求をしただけだ。
一方的に婚約を破棄されているのだから当然の権利だし、道理も通っている。
そもそも浮気していたのはデビットの方なのだが。
非道といえば、そちらの方だ。
「慰謝料を請求されたら、困窮しているマーシャは僕と婚約を渋々諦めるしかなくなる。それを狙っているんだろう! この醜い嫉妬女め!」
「はぁ? 言いがかりも甚だしいんですが」
デビットは挙句の果には暴言を吐き始めた。
なぜ自分が嫉妬されるほど魅力があると思っているのだろう。
確かについさっきまでは慕っていた。
しかしそれはこんな人だとは思っていなかったからだ。
「別にあなたのことを嫉妬して言っているわけではないんですけど」
私が反論するが、デビットは私の反論を無理やり打ち切った。
自分は言いたいことを言っているのに、本当に勝手な男だ。
「もういい! この家から出ていけ! 君みたいな道徳心の欠片もない奴とは少しも話していたくない!」
「言われなくても出ていきます。せいぜい頑張ってくださいね」
踵を返して私は屋敷から出ていった。
二度とここに来ることはないだろう。
★★★
「デビット様、これでよかったのでしょうか……」
マリアが出ていくと、マーシャがぽつりと呟いた。
「どうしたんだいマーシャ?」
「もっと話合うべきだったのではと思ってしまって……。ちゃんと私達の愛を理解してもらえれば潔く身を引いてくれたのではないかな、と」
少し申し訳なさそうに俯くマーシャを見て、僕の心は締め付けられた。
「ああ、マーシャ。君は本当に優しいね」
マーシャはマリアとは違って本当に優しさの塊のような女性なのだ。
僕が彼女に惹かれた理由の一つだ。
「君のことは僕が守るから」
マーシャを優しく抱きしめ、頭を撫でる。
僕はこの大事な女性を魔の手から守る、そう決意した。
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