ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第63話新メンバーの準備が完了する

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「……渾身の出来でござる」

「流石だ桃山氏……」

 桃山君は繊細な作業を経て、ついにやり遂げた。

 服を一着、ダンジョン攻略でも使えるように実用レベルで作ろうというのだ。

 大変だったのは彼の目の下の隈が証明していた。

 だがそんな作業にもめげず、むしろ最速最短かつレイナさんの要望に出来る限り応え、衣装はついに完成した。

 袖の無いシャツに黄色いネクタイ。

 光沢のある黒いパンツはスラリと長いレイナさんの足をよりスマートに長く見せる。

 革製のごっついブーツは、靴底に鉄板が入っていたりとちょっとした戦闘用の工夫もちりばめられているらしい。

 探索者というよりはミュージシャンの様な出で立ちに感じるのは、細かいアクセサリーによるところが大きいのだろう。

 彼女が腕に巻いているのは、鎖とスカルが多用されたメタル仕様だった。

「おー、デスメタル風?」

「そんな感じです! こういうのすごく好き! シルバー沢山はデートにも行けると聞いてます!」

「そうね……アクセサリーを使いこなせたらお洒落の上級者な感じする」

「いいじゃない! 美人レイヤーはやっぱ全体のクオリティが違うわー。あーキャラモノもやりてー」

「まぁまぁ。なんにせよ一個ずつでござるよ……。でもアクセサリーで結構イメージ変わるでござるな。これにギターとステージ付きなら完全にミュージシャン……いや! アイドルでござるな!」

 桃山君は疲れも吹き飛ぶ完成形に、腕を組んで深々と頷いていた。

「最高です! こんなにいい衣装を作ってもらえるなんて思ってませんでした!」

 ニッコニコのレイナさんは桃山君にハグして、楽しそうに肩を叩いている。

 桃山君の細い目じりは、心なしかフニャリと下がった。

 ただ、僕には少し気になることがあった。

「でも僕は思うんだ、レイナさんの今のコスにはまだ足りないものがある」

 おもむろにそう言いだすと、桃山君はさすがにピクリと反応した。

「……何でござる?」

「顔を隠す装備です」

 とりあえず最初は顔を隠すという話だったのだが、それがない理由はなんとなく察しがついている。

 僕がそう言うと、レイナさんは首を傾げた。

「別にいらないですよ? 顔バレ上等です」

 マスクなんて邪魔だと、その表情が語るレイナさんの意向なのだろうなとは思うのだが、彼女が隠さないとあっという間に芋ずる式になりそうだ。

 桃山君も若干困り顔なので、僕はダメもとで秘策を使うことにした。

「後々バラしてもらうのはいいけど、最初は隠して置こうってことになってるから。それに……マスクは中々奥が深いよ?」

「奥が深い?」

「そうだとも、ではここで余興を一つ」

 僕は一枚の布を用意して、机の上に広げた。

 その上に一定量のアルミを用意、布に描かれた陣の上にセットする。

 そして僕は神に祈る様に両手を打ち合わせた時点で、全員の表情が明らかに変わった。

「ま、まさか!」

「それは!」

「出来るんで……ござるか!」

「そのまさかだとも……」

 僕はそっと陣の上に両手を押し付ける。

 とたんアルミは光り出して陣に仕込まれた魔術文字と僕のイメージに従って形を変えてゆく。

 出来上がったのは口を覆うタイプのドラゴンっぽいマスクだった。

「「「おおおお!!!!」」」

 感動している面々に僕はやってやった気分である。

 ちなみに別に手を合わせる必要は全くないし、手を陣に押し付ける動作もあんまり必要ないが、こういう細かいところにキラキラと輝く星のような浪漫は宿るのだ。

「はい。じゃあこれはプレゼント」

「いいんですか!」

「もちろん。これからダンジョンで本格的に活動するお祝いみたいなもんだよ」

「はい! 私もなんか欲しい!」

「拙者も欲しいでござる!」

 次々に浦島先輩と桃山君が手を上げるが、まぁ金属のストックはあるしリクエストに応えましょう。

「オーケーオーケー。じゃあ順番に始めよう」

 やはりこの錬金術は実に使い勝手がいいし、見栄えに拘れば人気が出るに違いない。

 バリバリと錬金術を駆使して手裏剣詰め合わせセットとか、なぜかメリケンサックとか作って遊んでいたら、レイナさんがボクの肩をトントンと叩いた。

「そう言えばお礼にワタシ、プログラミングしましょうか?」

「「「え!」」」

「やってましたよね? ワタシたぶん出来ると思いますよ?」

 突然の提案に驚いたが、レイナさんは自信ありげである。

 僕らのやっていたことを、彼女はすでに理解しているようだった。

 何という事だろう……天才肌っぽいと思っていたがこういうところでも天才だったか。

 では正直手こずっていたので、僕は丸投げさせてもらいたくて仕方がなかった。

「じゃ、じゃあ……お願いしていい?」

「任せてください! ああ、でも工作はあんまり得意じゃないです」

「そっちは僕がやるよ」

「じゃあちょっと貸してください! ……ああ、なんだほとんど出来てるじゃないですか。これならすぐ出来ます……」

 カタカタとパソコンを触り始めたと思ったら、彼女はその日の内にきちんとプログラムが走るようにしてしまった。

 おかしいな? 何が違うのかわからないけど、何かが決定的に違うのは分かる。

 ちょびっとだけ敗北感はあったが、これで浦島先輩がパワーアップするかもしれないのは、僥倖だった。

 新メンバーが加入したことでみんなで準備していたわけだが、ついにこの時が来たか。

 彼女のレベルアップの間に進めていた作業も完了したことで、僕らには更なる成長の道が開いたと言っていい。

 僕は頃合いと見て、切り出す。

「……じゃあ、装備の確認もかねてレベルアップ……やっていきましょうか?」

 僕の宣言に歓声は一つだけ。

「待っていました! 楽しみです!」

 一方で微妙な表情になるのは、浦島先輩と桃山君である。

「どうしました?」

「いや……ついに来たかと」

「ワタヌキ氏のレベル上げは……なんとも言えないでござるからなぁ」

「過酷という事ですか?」

 レイナさんはハッとして身構えるが、そう言うことではないのが説明に困るところである。

「いや、そうじゃないんだよねぇ……。むしろ簡単すぎるくらい簡単」

「そうでござるな。モンスターがかわいそうになることがあるくらいでござる」

「……そうなんですか? よくわからないですね?」

「まぁ、今回もそうだとは限らないけどね?」

「そうでござる。……して、目指す階層はどこでござるか?」

 場所を問う桃山君に僕は今回の狩場を発表した。

「47階層。氷と海のフロアだよ」
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