ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
78 / 176

第78話まぁこうなる

しおりを挟む
「……で、まぁこうなるよね。薄々そうは思っていたよ」

 というわけで、まぁ協力するのなら準備は万全にしておかないと未練が残る。

 今回一人でやって来たのは、速度的な効率を最優先した結果だった。

『友達思いで素晴らしい事じゃないか。私はそんな君を応援しているよ。まぁ死ぬことだけはないようにしよう。今からの準備が成功すればの話だが』

「毎度の事じゃないか。協力するって約束しちゃったからがんばるけど、作らされたアクセサリーは本当に身に着けなくていいんだね?」

『ああ、君のじゃないからね』

 そう言う事なら身に着ける必要はないのだろう。

 正直いつものコレが始まる時は、崖に飛び込むような心境だった。

 最近、初めて来る階層でも結構戦えることに気がついてからは恐怖が少しだけ和らいだが、結局ダッシュで通り過ぎるんだから意味のない話である。

 ただ、今回のダッシュの性質は少しだけ違っていた。

 それというのも攻略君がこんなことを言い始めたからだ。

『よし。まずはこの階層で出来るかぎり速そうな悪魔を捕まえよう』

「僕、テイマーじゃないけど?」

『テイマーじゃなくてもテイムは出来るさ。そもそもモンスターのテイムがテイマーの習得条件だっただろう?』

 だがこういうお使いミッションが追加されると、危険度が跳ね上がることを僕もよくわかっていた。

「まぁ……頑張ろうか」

 悪魔のいる階層は、基本的に薄暗くやはり様々なフィールドが用意されている。

 捕獲の為に向かった階層には鬱蒼とした森があったのだが、ここには奇襲が得意ですばしっこい悪魔系モンスターが山ほどいるらしい。

 僕は足が遅いというのにあの手この手と攻略君を最大限駆使して、階層を駆けずり回りながら、インプという小さな悪魔を大学ノートに封じ込めることに成功した。

「ギギー!」

 だが言われた通り捕まえられたのは良かったが、テイムしたインプを見ていて思った。

「……ホントにこれで正解? 絶対守護者に勝てないでしょ?」

 真ん丸な目をした小柄な悪魔型モンスターはほとんどハンディーサイズのぬいぐるみみたいでまったく強そうじゃない。

 だというのに攻略君はこのインプ君こそが今後の鍵だと言った。

『大丈夫。まぁ最適解とは言わないが及第点だと思うよ。そして彼が今回のキーキャラだ』

「そうか……本当に?」

『ホントホント』

 いや不安だ。

 そしてそのまま階層を下り、視界もろくに利かないような吹雪と氷の極寒の階層を最後に突破した僕はそれなりに疲弊して70階にやって来た。

 待ち構えるのは当然守護者なんだけど、今度のフロアはずいぶん明るく、そして妙な空気に包まれていた。

「神々しい……そんな風に感じる」

 そして一面広く白い床の階層にそいつは精緻な鎧を纏った姿で僕を待ち構えていた。

「うわぁ……なにあれ?」

『この階層の守護者だよ。まぁパワータイプだね』

 特徴的な光の輪に純白の翼はあまりにも美しい。

 しかし全然厳かとかではないモーニングスターを杖のように地面に立て、佇んでいる。

 ああ。これと今から戦わないといけないのかと思うと単純に躊躇ってしまった。

「めっちゃくちゃバチ当たりそう」

『見た目に騙され過ぎだ。もっと内面を見る目を養いたまえよ?』

「目で見えないものをわかった気になるのを、人は気のせいって言うんだよ攻略君」

『わかっているじゃないか。あれはモンスター。すべて気のせいだ。さぁ張り切って行こう』

「うひぃ」

 流れるように始まる攻略に、僕はきゅっと唇をかんだ。

『この階層を守っているのは天使属性の守護者だ。聖騎士のジョブをメインに据える君と同じ聖なる属性のモンスターだね』

「そうか、僕ってば聖騎士だったわ。しかし……同じって言われると違和感半端ないな。モンスターでいいんだよね?」

『もちろん。ダンジョンに現れるのはすべてそうだ。では構える前に、例の悪魔契約の書を取り出そう』

 悪魔よりもなんなら威圧感がすさまじい天使を前にして、僕は慌て気味にノートを開く。

 そこからポンと現れたインプ君は、天使を目の前にしてビビビと尻尾を縮めていた。

 だがそれ以上に変化も起る。

 それは守護者の天使がインプをその目にしたとたん、明らかにキレたのだ。

「キエエエエエエエエエエ!」

「えええええ! そんなキレることある!」

『まぁ……曲がりなりにも天使としての宿命だよね』

 さっきまでは、寡黙でガッツリ規律に従う軍人さんの様だったのに、モーニングスターを肩に担ぎ、今にも飛び掛かりそうな天使は奇声を上げて、その辺のヤンキーでももう少し自制していそうなほど、凶暴性剥き出しだった。

 ああ、やっぱりインプじゃ絶対勝てない。

 この時点で僕もそう思うが、しかし攻略君に従って僕は素早さを増強するイヤリングをインプに渡すとこう指示した。

「絶対に掴まらないように逃げろ」

 インプ君はコクコク何度も頷いて一目散に逃げ出すと、守護者の天使も走り出す。

 しかしなんだろう……この守護者、天使の羽根も使わないし、普通に走って追いかけている。

 それにそんなに速くもなかった。

 いや、重装甲の鎧のせいかむしろ遅くさえあって、インプに追いつくことはできそうにない。

 それでも天使は追いかけるのを止めない。

 たまにモーニングスターをぶん回しているが、全て空振りで終わっていた。

『ああして、天使は目の前の悪魔を決して無視できない。悪魔への大きすぎるヘイトは同時に彼らの弱点だ。いけないね。やはり執着というやつは目を曇らせる』

「……そうみたいだね」

『さぁ追いかけて後ろから殴り給え。今なら後頭部を全力で一撃できるよ?』

「……」

 ああ、絶対そういうこと言うと思った。だって背中が隙だらけだし。

 だから僕はすでにハンマーを構えていて、追走準備も万端だった。

「ああ。なんだろう……。たぶん僕は天国には行けないな」

『では極楽でもヘブンでも好きに目指すといいさ。そんなことよりインプがやられたらそこで試合終了だ。急ごうか』

「言われなくてももう追ってますよ」

 何度でも言おう。ダンジョンで攻略君の言う事は絶対である。

 そしてこう言っては何だがすごい楽!

 おかしなことを言い出さない攻略君の攻略は、本当に容赦がなかった。



 そして聖なる飛沫をざっくり拭い、作戦は終了した。

 光の粒子となって消える天使型モンスターはやはり美しかった。

「ふぅ……よし。討伐完了」

 生還したインプ君が小ネズミのように震えていたが、君もよく頑張ってくれたと褒めてあげたい。

 天使は強かった……というか硬かった。

 スレッジハンマーの直撃を3度も叩き込んだのに、まだ悪魔を追う姿は真面目に仕留められないんじゃないかと目を疑ったものだ。

 それでも、目標達成できたのはやはり彼が逃げ切ったおかげだと言えるだろう。

 インプ君をノートに戻していつもならすぐに帰るところだが、今日は守護者ではなくこの先の階層に用事がある。

『では行こう。次からは天使の階層だ』

「うん、行こう。もう何が出たって驚かないさ」

 僕は次の階層に向かう。

 だが辿り着いた光あふれる美しい花園を見て、僕はやはり足を止めて見入ってしまった。

「うわぁ……天国みたいだ」

『やれやれ、急がないとモンスターに囲まれても知らないよ?』

「……ですよね。急ぎますよ」

 まぁわかっちゃいたが、見渡す限り花畑の明るすぎる階層を僕はずかずかと標的目指して突き進んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

現代ダンジョン奮闘記

だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。 誰が何のために。 未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。 しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。 金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。 そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。 探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。 少年の物語が始まる。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

処理中です...