ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第84話お二人様ご案内

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 サプライズの瞬間はいつもドキドキだけど、僕はきっとこの瞬間が楽しいからいつも唐突に誰かをここに連れてきてしまうのだとそう思う。

「な、なんだこれは……」

「…………ダンジョンの中に建物がある」

「サブカルチャー同好会第二拠点。素敵なサブカルカフェですよ?」

「カフェって……建物が元々ここにあったのか?」

「いえ、自分で建てました」

「自分で建てただと!?」

 生徒会長のリアクションがすごくいい。

 しかしこれくらいの方が紹介のし甲斐があるというものだった。

「……おしゃれでユニーク。私は好き」

「……お前なぁ」

 対して副会長は冷静である。

 ちょっと何を考えているのかはわからないが、キョロキョロとメガネの奥の目がせわしなく動いているところを見ると、驚いてもいるし、興味は持ってもらえているみたいだった。

 やはり掴みはここに限る。

 苦労のかいあって、初見さんを驚かすならまずここに連れてくると、精神的に優位が取れる効果が期待できるというものだった。

「では中に入りましょう。食事も取れますよ―――」

 僕は先輩達を店の中に招いて扉を開くと、チリンチリンと呼び鈴が鳴った。

 そしててっきりアニメキャラのウエイトレスが迎えてくれるとばかり思っていたら歓迎の声は思っていたよりも足元から聞こえて来た。

「にゃー!」

「―――え?」

 僕は慌てて視線を落とす。

 するとそこには給仕服にエプロンを来た二足歩行の虎ネコが肉球をフリフリしていた。

「ネコ給仕実現しとる!?」

 僕にも思わぬ衝撃である。

 超絶なプリティ具合に、ハートを撃ち抜かれてしまった。

 そして後方では、ニヤニヤしながら腕を組む女子二人が不意にハートを撃ち抜かれた人間を見に来ていた。

「……いやぁ。もういるとわかったら、そりゃあ、仲間にしに行くでしょ?」

「ワタシも手伝いました!」

 店内をよく見ると、ウエイトレス猫は他にも沢山トレイ片手に歩き回っている。

 悪魔達はキッチンとカウンターにいて、人間の方が向いている作業を担当しているようだった。

 何という無駄のない布陣。

 そしてなんという行動力。

 すでにそこには驚くべきダンジョンの猫カフェがあった。

「すごいじゃないですか……、いやぁできるもんですねぇ」

 サプライズが完成し、超ご機嫌の浦島先輩はやってやったとお肌までツヤツヤである。

「だろう? ……こいつは絶対自慢してやろうって、秘密にしていたのさ!」

「はい。頑張りました! マタタビ探しが特にです……」

「ダンジョンマタタビは、この子たちが自ら守ってんのよ。ケットシー馬鹿ツヨだから。速いし魔法でたらめだし」

「ほわー……やっぱりそこはネコ科っぽいんだぁ」

 モンスターって奴は情報として知ってはいても、実際立ち回るまで厄介さはわからない。

 特に野生系は直感を侮ると、手厳しいしっぺ返しを食らうことはジャングルで学ばせてもらった。

 しかし我らが同好会の魔法コンビは、見事根こそぎケットシーのテイムに成功したみたいだ。

 その結果、この夢のようにかわいい空間が誕生したということか。

 元の女の子達が沢山いた時は若干いかがわしかったし、生徒会の人達を招待するためにも健全大いに素晴らしい。

 生徒会長と副会長もさぞかしこの可愛さにメロメロだろうと僕はニコニコで彼女達の様子を確認したのだが―――二人はビッシリと冷や汗を掻いていきなり襲い掛かっていた。

「……なんでそうなります?」

 剣と杖はケットシーの店員さんに迫る。

 店員さんは目を細めて―――攻撃をシルバートレイで受け止めた。

「にゃー!」

「「……!!」」

 そしてほとんどノータイムで発動された風魔法は、攻撃した生徒会長と副会長を入り口からたたき出した。

 とんでもない勢いで飛んで行った二人は、申し訳ないがコントみたいな飛っぷりだった。

「生徒会長ぉーーー!」

「あちゃぁ……手を出しちゃった? ダメだよあの子ら強いんだから」

「タメもなく魔法使ってきます……。カウンターが天才的です」

 うわぁそれ怖い。

 僕らは慌てて、生徒会長と副会長に手持ちのポーションを差し出した。

「大丈夫ですか?」

「ゴホッ。グハッ……モンスターだよな?……」

「……相当レベルが高い。手加減された」

「落ち着いてください? 彼らはモンスターですが人は襲いませんよ? 店員さんは浦島先輩がなだめに行きましたので、ちょっと待ってくださいね?」

 どうやら生徒会の二人はレベルが違いすぎて、威圧されてしまったようだ。

 瞬時にモンスターに反応して斬りかかる当たり、二人はかなり探索者していると言える。

 そしていったん猫をなだめ終わって外に走って来た浦島先輩に、僕は困り顔を向けた。

「……うーん。まだ猫カフェへの課題は多いんですかね?」

「……思わぬ課題が出たなぁ。人間の方がビビっちゃうとは……今のままじゃ会員制の楽園って感じ? やっぱり50階は自力で土を踏まないといけないんだなって」

「なるほど……タダの楽園はないんですね」

 しみじみ頷きながら、歩み寄って来たケットシーの頭を撫でて肉球をプニプニしていると、まず生徒会長が復活した。

「……今なんて言った? 50階? そんなバカなことが……」

「正確には50・5階ってところです。ね? ここの方がレベル上がりそうでしょう?」

 レイナさんがここぞとばかりにドヤ顔でネタバレをしていたが、それでも生徒会長には受け入れがたいようだった。

「いや、死ぬだろう? 仮に言っていることがすべて真実だとしてもだ」

 絞り出すように言う生徒会長だが、なんとなく僕は副会長の方に聞いてみた。

「……お二人でも無理そうですか?」

「……無理」

「そうですか……でもまぁ踏破すればセーフエリアが存在するのは真実ですよ。先に使わせてもらっているんですけど」

「ま、待ってくれ。じゃあ、このモンスター達は何なんだ? 敵対しないモンスターなんて聞いたことがないが……」

「それは私のテイムモンスターだね。私のジョブがテイマーだから。可愛いでしょ?」

 今度は浦島先輩が、貴重なテイムモンスター自慢チャンスでドヤ顔である。

 ただ、もちろんテイマーも一般には浸透していない情報だった。

「……そんなジョブが存在するの? 私も知りたい」

 こちらに興味を示したのは副会長で、その目はすでに猫店員に向かっていた。

「なー? 興味出て来たでしょテイマー」

「いいですよね! テイマー! でもテイムだけならテイマーにならなくてもできるんですよ?」

「……そうなの?」

 すごく自然に話しを始めた女子面子だったが、そこに混ざり切れないのはやはり生徒会長である。

「ちょっと待てぃ! 静流! なんでお前はそう受け入れるのが早いんだ! 絶対おかしいだろ!」

「……そうは言ってもこのモンスターを見たら納得。それを普通に愛でられているんだから、彼らの話に信憑性はあるでしょう?」

「ぐぐぐ……それは、確かにそうなんだが、常識というものがだな……」

「常識なんてダンジョンじゃ通用しない。潜っていれば誰でもわかる」

「……」

 それは確かに。ここ数年で出来上がって来た常識が、ほんの数日で薄い氷のように容易く崩れるのを僕は何度も体験した。

 ここは未知の宝庫だ。そして案内のある僕でさえ、さっとなぞった程度の知識しかないことは間違いなかった。

 生徒会長は、いったん肩を落として常識云々は諦めた様子だった。

「では一体どうやって君達はこんな力を? 特に君はこの間まで1階にいたはずだろう?」

 生徒会長と副会長の視線が、なぜだか僕に注がれる。

 なぜと言われると、1階層に入り浸っていたからこそ、ここに来ることが出来たんだけれど……そんなことを言っても説得力がないことは分かっていた。

「うーん……難しいですね。レベルを上げたっていうのは間違いないんですけど……信じてもらえるかどうかは正直微妙で」

「我々には説明できない事なのか?」

「いえ。説明しても信じてもらえない自信があるというか……。言ってしまえば同好会のメンバーが他と違うことがあるとすれば、信じてくれたかどうか、それにつきます」

「……」

 ここまで見せても、全てを信じられるかと言えば、そんなことはないだろう。

 なにせ面識があまりにも足りないし、信じる材料が何もないのだから。

 例えば今から僕らの案内で、ここが五十階だと証明するために見て回るとする。

 しかしそれは言ってしまえば血肉に飢えた猛獣の跋扈するサファリパークをバスなしで観光するようなものだろう。

 今の僕らに生徒会の方々がすべてを任さられる信頼があるかと言えば、まぁないと断言できた。

 しかし招待した以上は、その努力は必要だ。

 どうやったら少しでも信じてもらえるかなーと考えた時、僕はちょうどいい場所があることを思い出して手を叩いた。

「ああ! そうだ! 今、同好会のメンバーがレベル上げをしているから見学に行くっていうのはどうですか?」

「ああ! いいかもそれ! 私も桃山君が今何やってるのか気になるし!」

「いいですね! 頑張ってるモモヤマを応援しに行きましょう!」

 同好会のメンバーが賛成する。

 なんだかんだ言って努力している姿が、強さの裏打ちとしては一番説得力がある。

 わかりやすくレベルアップを見せられるかもしれない。

 しかも、かなり大変なことをしている桃山君の頑張っている姿を見せたら、心証も良くなるかもという、ちょっとゲスな下心があることは許して欲しい。

 生徒会の二人は、お互いの顔を見合わせて戸惑っているようだった。
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