ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第83話連れ戻しに来た

 皆、新しい目標を定めて、サブカル同好会一同は未だかつてないほど活発に活動していた。

 しかし、外から見ていても全然わからなかったに違いない。

 一見すると放課後に集まって、部室とダンジョンをうろうろしている変な集団である。


 マッタリ。

 その日のサブカル同好会の雰囲気はまさにそんな感じだったと思う。

 まさにoffの日。

 やっていることと言えばカードショップを経営してカードを剥く作業を延々と繰り返すことくらいのものだった。

「……桃山君、来ないですねぇ」

「……そうだねぇ」

「……あ、ワタシ1000万のカード出ました!」

「「うそぉ」」

 レイナさん、あんたやっぱり持ってるなぁ。流石の豪運に脱帽である。

 悔しさで更なるカードを求めていたのだが、何やら外が騒がしかった。

 まぁ―――いいか。

 誰もこの部室に興味なんてないだろうしなと、僕は再び意識をゲームに戻したのだが……ガラッと開いたのはうちの部室の入り口だった。

 とたんゾクッとするような気迫が部室の入り口から発せられ、僕らは顔を上げる。

 扉を開けたのは珍しい顔が二人。

 生徒会の会長と副会長だったのだから、自然と背筋が伸びてゆく。

「……これはまずいところを見られたかな?」

「……ひょっとしてですけど、生徒会長お怒りですか?」

 何だろう? 心当たりがない。

 困惑して見ているのもマズかったらしく、八坂生徒会長のこめかみに青筋が浮かんでいた。

 そして如月副会長の視線は僕らの誰かを見ていて、呟いた。

「……いたね」

「まさか本当にいるとは。……さて、どういうことか説明してくれないか? トーレスさん?」

 どうやら二人の目的は、レイナさんにあるらしい。

 しかし当の本人はキョトンとした顔をして、小首をかしげていた。

「はい? 何の説明でしょう?」

「……なんでこんな所にいるのかの説明だよ」

「説明はもうしましたよ?」

「生徒会辞めます。やりたいことが出来ましたーは説明というにはあまりにも足りない」

「そうですか? きっちり全部説明してますよね?」

 そう僕らを見るレイナさんだが、ちょこっとそこで僕らに振られても困ってしまうところだった。

「……百歩譲って生徒会を辞めるのはいいとしよう。しかし代わりに所属するのがサブカルチャー同好会ではまずいでしょう? 貴女はダンジョン探索者の特待生なんですよ? 私達も学校側からトーレスさんに目を掛けるように言われているんです」

 ああ、うん。レイナさん特待生だったんだ。

 ダンジョン探索者にもそういうのあるんだと、ちょっと感動してしまった。

 まぁ彼女の雷の魔法は最初から超強力だったし、スキルも豊富だ。なるほど実力を認められているとはそういう事かと納得した。

 ただレイナさんの方は八坂先輩の言い様は納得できていないようだった。

「ワタシにも選択の自由があります。ここに所属する方がワタシにとってプラスになると思ったから辞めたんです」

「……それはどういう意味?」

 今度は如月副会長が聞き返す。

 なんて言うつもりだろう?

 僕はレイナさんの顔に自然と視線が向かうと、彼女はすごくいい笑顔で持論を主張した。

「ワタシはどちらかと言えば日本的な組織形態よりも、カルチャーの部分に興味があります!」

 うん。実に容赦のない主張だった。

「……しかし貴女は国を代表するダンジョン探索者なんですよ? ここにいて、レベルの一つも上がらないのはプラスとは言えないでしょう?」

「そうでしょうか? ここにいる方が強くなっていると思いますけど?」

「……なんだって?」

 うーん。そうだろうけどさらっと情報公開するなぁこの娘。

 ただ、考えてみるとレイナさんが注目されるのは当然で、そして今の現状をレイナさんが隠しておくことは難しいことに僕も気がついてきた。

「生徒会よりも、サブカルチャー同好会の方が強いし、レベル上げには最適です。
なにより楽しい! これ重要ですネ!」

 そしてまさかのサブカル同好会大絶賛だ。

 しかし一般的にサブカルチャー同好会で出てくるはずのない賞賛が多いことは問題だった。

「それは……聞き捨てならない。私達のレベルが彼らに劣ると?」

 八坂生徒会長? そんなに厳しい表情にならなくても、馬鹿にしている意図なんかはないと思いますよ?

「だいぶん下だと思います」

 そしてレイナさん? 追い打ちするのちょっと良くないと思うな僕は。

「は? 冗談にしても笑えない類ではある」

 八坂生徒会長が一言発すると、ザワリと部屋の魔力が騒いだ。

 高レベル者の激しい感情は、魔力を通じて周囲に影響を与えるから勘弁してほしい。
 
 流石に見かねて、浦島先輩が割って入っていた。

「ちょいちょいちょい! 待った待った! 何かいろんな勘違いが発生してない!? まずは落ち着いてね?」

 ただ割って入ると同時に浦島先輩は、いきなり今後の方針を決めなくちゃならなくなって盛大に目が泳いでいた。

「ちょっ、ちょっと待ってね! 作戦タイムで!」

 ああ、やはり急では決めかねたか。

 浦島先輩はいったん僕の方にやって来て小声で話しかけてきた。

「……どうするよ? ワタヌキ君……これってなんかヤバい話の流れじゃない?」

「……そうですね」

「そうですねって。なんか言わないと……バレちゃうよ色々」

 どうやり過ごす? と浦島先輩の目が訴えてくる。

 僕は一瞬様々なものが頭を巡ったが、こう―――閃くものがあった。

「ありがとうございます、先輩。でももう……あまり隠す必要ないような気がしてきました……」

「ワタヌキ君!?」

 いやそれはないと浦島先輩は目を見開くが、別に僕は捨て鉢になったわけではないから安心して欲しい。

「いや、まぁ……隠し続けた方が碌なことにならないと思いませんか?」

「う、うーん……」

 僕達も同好会のメンバーにレベル上げを提案してから色々あった。

 そして目論見は思っていた以上にうまくいって、色んな知恵を検証して、共有できたはずだ。

 もはや様々な攻略情報は僕の頭の中の妄想の類ではない。

 では確定した情報を隠した方がいいのか? はたまた公開した方がいいのか?

 その選択を、僕は昨日済ませていた。

 元より僕は―――程よく情報は共有するスタンスだ。

「もう動画も上げちゃってますし」

「……マジか…………いやそうだね。私が思うに生徒会長はいい子だし、実家が太いよ?」

「……言い方よ。でもサンキューです」

 最低限の話し合いを終えて、今度は僕が前に出る。

 なんとなく先輩というのは威圧感があるものだが、さらにそこから生徒会長という肩書の圧力で、胃液が逆流しそうだった。

 それでも僕は頑張った。

「えー生徒会長? ……せっかく来てくれたので、少しお話したいことがあるんですけど、この後お時間いただけますか?」

「……もちろんだと言いたいところだが、これから私達はトーレスさんとじっくり話すことがある」

「ちょうどいいです。その件にもがっつり関係があるので……この後ダンジョンに付いて来てほしいんですよ」

「……ダンジョンに? なぜ?」

 八坂生徒会長は眉をひそめたが、まずは見てもらわないと話が始まらない。

 ひとまず僕のポジションも、ポーションをたまに持ってくる怠惰な学生からランクアップをさせてもらうとしよう。

「見せたいものがあるからです。それはレイナさんがこの同好会にいたいと主張している原因かもしれませんよ?」

 やたら楽しそうなレイナさんは、この展開を期待していたのかもしれない。

 生徒会長が基本的にいい人だという事は僕もなんとなく察してはいたが、あんまりアグレッシブに事態を動かされると、気が弱い僕なんかは心臓に悪いから、お手柔らかにしてほしいものである。

「……どうする? 怪しいことは怪しいね」

「……いいだろう。行こうじゃないか」

 生徒会の二人は警戒しているけど、そんなに悪いことにはなりませんよ?

 さーどうなるかなぁ?

 人生とは選択の連続なのかな?なんて疑問はともかく、そう言う選択は大抵自分以外の誰かから叩きつけられるものが一番勇気がいって面倒なんだろうなって僕はため息をついた。
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