ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第100話はまると集めたくなるよね?

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「1階の売店を知ってる?」

「……ええ知ってるわ」

 僕が案内したのは1階に最近1軒だけ作った売店である。

 広い1階にランダムで現れるので、初見さんが探すのは大変なのだが……。

「……すぐ見つけたわね」

「まぁね」

 僕は簡単に場所を特定できる。

 攻略君に頼んでもいいけど、天使を店員に置いているから感覚頼りに進むことも可能だった。

 そして彼女を案内した理由は、未だに一個も売れていない商品をセールスするためでもあった。

「お店のカウンター前に置いてあるコレ、なんだかわかる?」

 もちろん指示したのは手探りのとんでも商品、精霊ガチャだ。

 実際やってることはかなりとんでもない。

 しかし出てきた精霊との親和性とか様々な問題点はあるものの、間違いなく素早い実力の底上げが可能!

 その上お値段は500円ポッキリ! はっきり言って異常でお得な値段設定だった。

「……なにかしら」

 ただ月読さんは根本的にそれが何なのか理解していないようで、僕は驚愕しつつも焦った。

「え? ガチャガチャ知らない? ショッピングモールとか、空港とかいろんなところにたまに置いてある―――お金を入れて、つまみを回すとカプセルトイっておもちゃが出てくるやつなんだけど?」

「知らないわ」

 きっぱり断言されて、こんなにショックを受ける自分に驚きだった。

「そう……えっと、そういうのがあってね? でもここのガチャから出てくるのは、おもちゃじゃないんだ」

「……そうなんだ。じゃあ、何が出てくるの?」

「契約前の精霊が出てくる」

「何それ?」

 こちらも全く知らない風だったが、こっちはそんなにショックじゃなかった。

 だから若干精霊については余裕をもって解説できた。

「精霊って種類のモンスターを仲間に出来るかもしれないガチャ。一回500円」

「モンスターを仲間に?……本当に?」

 まさしく本当である。当たりの上級精霊ばかりじゃガチャにした意味がないから、わざわざ下級の精霊まで足して出来上がった究極のガチャガチャです。

 まぁ商品と考えるとすこーしだけ懸念はあるけど、手塩にかけた商品である。

「別に信じなくてもいいよ。気が向いたらやってもらってもいいかなって思っただけだし」

「いえ、詳しすぎるなって」

「……それはそうかも?」

 まぁ自分が知らないことを他人が知っているなんてよくあることだ……という事にしておいてほしい。

 ただし、ものすごく一押しというわけでもないから、やめておくのもアリだとは思う。

 この精霊ガチャは完全に運だから。

 その上ガチャしたところで必ず仲間になるわけじゃない。

 中腰でじっとガチャを見ていた月読さんは財布を取り出す。

 しかしその中に硬貨は一枚も入っていなかった。

「……カードって使えるかしら?」

「……今日は500円貸すよ」

「……感謝するわ。ってなにその長い500円!」

 二度見されたのは僕が取り出したビニールで包まれた500円玉だった。

「いや、必要になるかなって……まとまった量を用意していたんだ。ガチャガチャ専用だよ」

「は、初めて見たわ。そんなのあるのね……驚きだわ」

 精霊ガチャガチャより、長めにパッケージングされた500円の方が驚かれてしまった。

 では新ためて、チャレンジするという事で。

 まず最初に月読さんは硬貨を入れる場所が分からず戸惑い。

 ようやく入れることに成功した!と思ったら今度はつまみを回すことがいまいちわからない。

 ムムムと眉間にしわを寄せている月読さんは、失礼ながらちょっと面白い。

 何回かのレクチャーを経て、ようやくコロリンと出てきたトイカプセルを手にした月読さんは、宝物のように大切そうにそれを取り上げた。

「……出来たわ!」

「初ガチャおめでとうございます」

 何だろう? 軽く感動してしまった。

 しかし出てきたそれを見て、僕は同時にギョッとしてしまった。

 月読さんの手にしたカプセルは、まさかの一発目から大当たり。

 カプセル越しにも感じる強い力は上級精霊に間違いなかった。

「へー……こんなものがあったのね。全く知らなかった」

「……ちなみに、月読さんの魔法属性って聞いてもいい?」

「それはマナー違反だけど……光属性よ」

「おお、大当たりだ」

「なにが?」

「そのカプセルの中身、光の精霊だよ。属性が合ってると気に入られやすいんです」

「……そうなんだ」

 月読さんはカプセルを開けることに苦戦していたが、何回かのトライでようやくパカリとカプセルは開く。

 カプセルは開いたとたんパッカーンと光輝いて、フワリと兎の形をした精霊が飛び出してきた。

「あっ……かわいい」

 月読さんが宙に浮かぶ精霊に、恐る恐る手を伸ばす。

 すると精霊は彼女の指先をスンスン嗅いで、前足を伸ばすとピカリと光ってまたカプセルの中に戻っていった。

「良かったね。気に入られたみたいだよ」

「……そう。みたい? なんかポカポカする」

 そう表現した月読さんには精霊とパスがすでに繋がっていて、わずかな魔力的つながりが見て取れた。

「仮契約の今のままでも力は借りられそう。気に入ったなら、なにか名前を付けてあげるとしっかり契約できるよ。もっと仲良くなると、力を借りられる幅は増えていくから、まぁ気長にやってみて」

「そうなんだ……」

 明らかに未知の現象に彼女もまた戸惑っている。

 再びカプセルからウサギを出した月読さんは、手のひらに光の精霊を乗せて顔を覗き込むと、フフッと微笑んでいた。

「面白い……貴方とダンジョンに潜ると、なんだか同じ所だとは思えないわ」

「まぁ、でしょうね……」

 トイレ作ったり売店でガチャしたり何を考えてダンジョンに来てんだって感じではあるけれども。

 自嘲気味の僕に月読さんは重ねて言った。

「……ちなみに褒めてるから。楽しかったわ。ありがとう」

「どういたしまして。相談に乗れたかどうかはわからないけど、そいつも役に立ててくれたらうれしいよ」

 まぁバトルじゃたぶん、すさまじく役立ってくれると思うけどね。

 何せ……レベルが違う。

 そして存分にこの精霊ガチャが有用だと、最前線で証明してください。

 ヘッヘッヘッ……汚いと笑いたければ笑うがいい。

 しかしこの宣伝費用なしの宣伝チャンス、逃す手はあるまい。

 さて営業はうまくいったはずだが、売れたとしても大抵は500円を取られるだけになるんだろうなとは思う悪い商売だ。

 知名度は月読さんの活躍に掛かっているけど、まぁ別に売れなくてもいい話ではあった。

 

 後日、月読さんのカバンに沢山ついていたカプセルトイの景品を見て思わず微笑んでしまった。

 気が抜けたなら何より。

 しかしわずかに同志の息吹を感じたのがどちらかと言えば雑談の成果として重要だと言えるのかもしれなかった。
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