ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第101話名前だけではきっと済まない

 僕らは本番に備えてしっかりと練習に励んでいたと、そう言える時間が続いていた。

 僕は消耗したアイテムのストックを用意したり、他のメンバーの振ってくる仕事に対応したりで大わらわ。

 桃山君は、武器が一本ダメになったから新調したり、三人分の本番衣装をカスタマイズしたりで忙しそうだ。

 カフェ近くの防音部屋からは、毎日わずかに練習の音が響いていて、毎日完成度が上がっていくのが心地いい。

 まぁ……いきなりの舞台が大きすぎて、切羽詰まっているとも言う。

 そして別ベクトルで頑張ってくれていた浦島先輩は考える限り最高の成果を、僕達に披露した。

「はい! ではみんなに紹介したい人がいます! サブカルチャー同好会に顧問の先生が付きました!」

「おお~」

「いや、まだ顧問になったわけでは……」

「「……!」」

 僕と桃山君は純粋に驚いた。

 また学内で結構な有名人を連れて来たもんだ。

 僕はまだ浦島先輩の手腕を見誤っていたようだった。

「……龍宮院だ。よろしく頼む。とはいえ私も君達のことをよくわかっているわけではない。聞いたところによると、サブカルチャー文化に対する研究をする同好会という話だけど……」

「まぁ詳しい話は移動してからにしましょう。じゃあ、ワタヌキ君? 早速行きましょうか?」

「ああ、なるほど。了解です」

 しかしまだ完全に引き入れているわけではないと。

 どういうつもりなのかはわからないが、僕は浦島先輩の目を信じることにする。

 他のメンバーもだいたい同じような感想の様で、浦島先輩の言葉に従って準備を始めているようだった。

「これから? どこに行くんだい?」

 戸惑っているのは龍宮院先生だけだが、そんな彼女を安心させるように穏やかに浦島先輩は対応していた。

「もっと話しやすい場所ですよ。具体的に言うとダンジョンです。きっと先生も気に入ってくれると思います」

「ダンジョン? ……全員そろっているならここでいいんじゃないか?」

「先生の作品もそこに置いてありますよ?」

「……よし行こう。今すぐ連れて行きなさい」

 あれ? ひょっとして浦島先輩何か弱みでも握ってる?

 いや、まさかそんなことはないか。

 しかし、龍宮院先生は一見するととても真面目そうなイメージの先生だった。

 クールというかカッコイイというか、明らかに陽の者のオーラを感じる。

 そんな彼女が果たして、あの拠点を気に入ってくれるかどうか?

 正直望み薄という言葉が浮かんだのは僕だけではなかったらしい。

「……大丈夫かな?」

「どうでござろうな?……可能性は低いと思うんでござるが」

「そうですね……お話したことありますけど……」

 1年一同、あまり期待は出来ないという感想―――だったのだが。



 やってきた拠点にて、準備万端整えられた料理の並ぶ席で、どこかで見たことのあるアニメキャラの美少年に囲まれた龍宮院先生は、ちょっと彼女からは想像もできない歓声を上げながら耳まで真っ赤になっていた。

「ヒョー……えぇぇ。ナニコレ私明日死ぬ?」

 おんや? やはり僕はまだまだ人を見る目が養われていなかったようだ。

 龍宮院先生に一気に親近感が増した僕は、何もわかっていなかったのだと大いに反省した。

 レッテル張ったりとかやっぱりよくないね。そしてお膳立てを整えたらしい浦島先輩は大いに満足そうに、その結果を眺めていた。

「……どうです先生。上の子はまだまだでしたがカフェ店員は練度が違うでしょう? あと生徒の前ですので落ち着いてください?」

「……ウオッホン! んんんっ! いや、失敬。しかし凄いな。これがすべてモンスターとは……こんなに人間に近い……いや、普通の人間とは違うか。空想のキャラクターまで再現してしまうとはね。参考までに、何のモンスターなのか聞いても? 出来ればテイムの方法も」

 一応表情だけ取り繕っているが、完全には無理だった。

 僕なんかはもはや仲間認定でいい気がして来た。

「顧問になってくれるなら全部教えますよ?」

「……たまにしか来れないが、構わないかな?」

「もちろん。名前を貸してくれるだけでもかまいません」

「…………また来るよ」

「お待ちしてます。ああ、電気が使えないので気を付けて? 本なんかの紙媒体は移動してありますから。御自由にどうぞ」

「……なるほど、元より大分好き勝手にやっていた同好会みたいだね」

「そんなことありません。一般常識の範囲だと思いますよ?」

 苦笑する龍宮院先生に、ニッコリと言い切る浦島先輩だが、まぁ結構好き勝手やっていた同好会なのは間違いなかった。

 そしてあっという間に交渉は成立してしまったようだ。

 浦島先輩も良くやる。しかしこれで部の昇格までまた一歩進んでしまったと思っていいだろう。

 ただそのあと一歩は途方もなく大変そうだけど……一応準備も順調だった。

「それで、ここは一体どこなんだ? なにかこう、一気に魔力が濃い気がするが……結構深い階層だろう?」

「あ、はい。50階です」

「50階ぃ!?」

 ……しかし龍宮院先生は、かなりいいリアクションをしてくれる。

 定番のくだりだけど、やっぱりこの瞬間はいい物だった。

「どうやってそんな階層に……いや、そもそもそんな場所になぜカフェが?」

「みんなで建てました♪」

「建てたぁ!? 建設したって意味かい!?……いや、まさかそんなことが?」

 うんうん。なんだか心が温かくなるね。

 同好会一同、頑張りましたので。

 最近はこの驚き声が、賞賛と=になってる。

 混乱している龍宮院先生に今度はレイナさんがすかさず質問を投げかけた。

「はい! 先生! 先生は車の免許を持っていますか?」

「え? ああ、持っているけど……」

「じゃあ、さっそく引率お願いしてもいいですか?」

「どこかに出かけるのか……まぁかまわないよ。引き受けた以上は少しくらいらしいことをしておかないとね」

「わお! じゃあお願いします! しばらくしたら連絡しますネ!」

「……」

 うーん、なんという流れるような誘導具合。

 一回情報過多で思考停止させてからの、極めて普通の会話で同意を引き出した。

 きっと龍宮院先生は、ここからしばらくしてもう一驚きさせられるんだろうなって確信が僕にはあったがきっとそんなの序の口である。

 よくよく考えてみるとこれから先、サプライズのネタは山ほどあるなと思うと僕もちょっと楽しみになって来た。
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