ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第110話内見に行こう

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「うーん」

 ブロックを積む。

 そしてブロックを削る。

 部室でせっせと拠点作りをしているのは、ゲームの世界でのことだった。

 いやぁ、とりあえず色々やってみるならゲームというデジタルは、想像力を刺激するのにちょうどいい。

「材料さえあれば一から作ることは出来る……モデルがあれば参考にも出来る。でも手が込んでいればいるほど、時間も魔力も大いにかかる……」

 ではどうするか?

『素材を生かすというのはどうだろう? もうすでに建てられた建物をリフォームするんだ』

 そんな攻略君の提案は、現実的かつ魅力的だった。

「ああ、なるほど! それなら……でもそんなに都合のいい建物があるかな?」

『あるとも。とても都合がいい場所が。では時間がないだろうし、さっそく始めようか?』

 なるほど? 嫌な前振りである。

 しかしこの後の展開は僕はだいたい予想できた。

「……よし。薄々わかっていたけど―――やるか」

 せっかく作っても、間に合わなかったんじゃ意味がない。

 今頃浦島先輩は自分の部屋で原稿に励み、なんなら他のメンバーも手伝いに動いているかもしれない。

 偏に僕がその手伝いに声がかからないのは、謎の一日が一年になる部屋の可能性が大きいことに他ならないのだろう。

 ならば期待に応えねば、男が廃るというものだった。

「目指す階層は?」

『ちょうどいいのは……90階かな?』

「……おーまいごっと」

 だがなかなかに大台に乗って来たなぁって感じだった。

「でもそれって守護者の階層じゃない?」

『そうだよ。これは裏技に近いんだが……守護者の階層に陣地を構築する方法がある』

「……なにそれ?」

 裏技とは穏やかではないが、攻略君曰く相応にデメリットも多い方法のようだった。

『節目となる階層は守護者が守っているだろう? まぁそこで……テイムしてから、陣地を構築すればそのエリアは疑似的にセーフエリア化するんだよ』

「そうなんだ……考えたこともなかった」

 そういえばテイマーになると、陣地を製作してセーフゾーンを自分で作り出すことが出来るんだったか。

 何時も走り抜けて帰るから忘れてしまっていた特殊なスキルである。

『……だがデメリットがかなり大きい』

「デメリット?」

『ああ。守護者がリポップしなくなる。階層そのものの支配権を奪ってしまうからだ』

 つまり陣地を構築することで、リポップポイントまで制圧しちゃうから次が生まれないってことかな?

「元に戻すことは?」

『構築した陣地を解除すればいい』

「結構解放自体は簡単なのか……リカバリーできるならまぁ」

『後はまぁ主のテイマーが死亡したりすると、リフォームしたものが全部リセットされて消滅する危険があるよ?』

「……それはある意味怖いけど。そもそもそう簡単に死にたくはないしなぁ」

 何時ものように守護者の階層として機能させたいのなら、テイマーが放棄すればいいということか。

「でもじゃあ、精霊の階層はどうなの?」

『構築できる権利はすでにあるよ。やった瞬間、上位精霊がリポップしなくなるが……それは精霊の場合もったいなさすぎないか?』

「……もったいないね。それはやめておこう。それで? 90階層だったね。深すぎない?」

 何より陣地構築がどうというよりもそちらの方がくつろぐには問題だと思うんだけど、それでも利点はあるようだった。

『転移宝玉で移動できるのが一つ。しっかりとした建物があるのが一つ。そしてある程度作業に集中できる環境をすぐに整えられるのが一つだ』

「そう聞くと、すごくいい物件の様な気がする……けどダンジョンの中だよね? そんなにいい建物なんて期待できる?」

『期待していいよ。今までだって人工物っぽい階層はあっただろう?』

「そう言われると……スライムの小部屋やら、研究施設っぽいところやらちょっと豪華仕様だよね。……建物のパターンもあると?」

『そういうことだね。どうする? やるというのならテイムすることになるけど?』

 僕は非常に悩んで唸った。

 攻略君一押し物件なんて、正直気になる。そして今回の攻略方法もまた90階層とはいえ魅力的だった。

「テイムは……楽なんだよね。よし、やっちゃうか?」

『なら準備が必要だ。今回の守護者は龍に属する』

「……龍?」

『そうだ。必要なアイテムがあるから、行く道で確保して行こうか』

「……よし分かった。いったん全部飲み込もう。もう何が出てくるか考えると怖い」

 さて本当に楽に終わるのかはわからないが、そこは攻略君を信じようと思う。

 

 僕はさっそく準備を整えて、セーフエリアの拠点に向かうと、何やら戦闘音が聞こえていた。

 誰か来ているのかなと音源を探してみると、そこでは龍宮院先生が錬金窯を使用して特訓の真っ最中のようだった。

 すぐさまこちらの気配に気がついた先生に、僕は手を上げて挨拶した。

「あ、先生お疲れ様です」

「ああ。お疲れ様」

 挨拶すると、いったん龍宮院先生は特訓を打ち切ってそばに用意していたタオルで汗を拭う。

 運動着のシャツは格闘ゲーム仕様なのが何よりも気になるが、そのシャツはずいぶんと長い間戦っていたのか、しっとりと汗で湿っているようだった。

「その特訓、やってみてくれてるんですね」

「まぁ……私も探索者のはしくれだ。80階層台を歩けるようになると聞かされたら黙ってはいられないさ。そういう君は今日はどうした?」

「ああ。90階層にいい物件があるみたいなので見に行ってきます。いい感じなら遂にこの間のアイテムを使って、やっと一日で一年過ごせるようにしようかなって」

「……待った。それは本気かな?」

「?」

 僕は正直気を抜いていた、というか気を許していたんだと思う。

 さらっと出してしまった情報は、最近は日常だったが一般的に言うと非常識だという事をすっかり失念していた。

「……いやまぁ。はい」

「そうか。……どうするつもりか知らないがあまり無茶はしすぎないことだ。命は一つしかないからね」

「いやーまったくその通りだと思います」

「……」

 でも行かなきゃならない理由があれば僕はそこに行くんです。

 龍宮院先生はあきれ顔だったが、僕を見て何か考えこんだかと思うと、思いもよらない提案をして来た。

「いや……行くと言うのなら私を連れて行くことは出来ないかな?」

「ええ? 危ないですよ?」

 さすがに適正レベルがかけ離れすぎていてどうなのかと僕はギョッとするが龍宮院先生は本気の様だった。

「言っただろう? 私はこれでも探索者だ。そして君達の先生でもある。君のその自信の根拠を見せてもらいたいな? 大丈夫だと確信があるんだろう?」

 頭ごなしに注意されるというのも厄介だが、しかしこれはこれで更に厄介な申し出だなと僕は冷や汗を流した。

 どうすべきか正直迷う。

 しかし―――僕は唐突に閃いてしまった。

「あっ……いいですよ先生。それとちょっと提案があるんですが……」

「なんだろう?」

「先生、いったんテイマーになってみる気ありませんか? ちょっとでいいんで」

 テイマーではない僕は陣地構築がお粗末だ。

 カーペンターの方で賄うことが出来るようだが、すでに複数のテイムモンスターを抱えている僕は許容量に余裕がないのも不安要素ではあった。

 だが龍宮院先生ならその点、問題なく行ける。

 ただ、先生もプロの探索者だし、自分のジョブに拘りとかあるんだろうなと、一旦は断られること前提で話を振ったんだけど―――。

「いいよ。すごく興味があるね!」

 龍宮院先生は二つ返事で承諾した。
 
 先生はそれはそれは爽やかな笑顔だった。
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