侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!

友坂 悠

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冷徹公爵とコーネリアス王子。

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「何事ですか? オルファリドにいさま」

 王宮の奥、コーネリアス王子の私室に先触れもなく乗り込んだオルファリド様。
 流石にまずくない? って思ったけど結構この二人は親密な感じ。
 まあそういえばだけど、一人っ子のコーネリアス様にとってオルファリド様はお兄様みたいな感じなの?
 確か王位継承権の第二位はオルファリド様だったような。

「ああ、少し気になったことがあったのでな」
 そんなふうにサラッと流すオルファリド様。

 コーネリアス様、あたしの方もサッと見たけどあたしだって気がついてないみたい。
 ここにくる途中で、「これをかけるといい」とオルファリド様に渡された認識阻害メガネ。
 かわいい丸いメガネなんだけど、これかけただけで殿下にはあたしはその辺のモブっていうか、オルファリド様の秘書くらいにしか認識されていないのかもしれなかった。
「ああそうだ。にいさまにお時間があるのなら、私の新しい婚約者を紹介したいと思うのですが」

 頬をあからめそうのたまうコーネリアス様。
 何? その初々しい表情は!
 あたしといる時にはこんな顔、見せたことなかったのに。

「ああ。ぜひ。レミリア・マーベル男爵令嬢だったか。彼女にも会いたいと思っていた」

 オルファリド様がそう言うと、ぱあっと破顔したコーネリアス殿下。

「レミリア、おいで」
 とそう寝室に向かって声をかけます……。

 って、何?
 なんで?

 流石にあたしでも婚約期間中に殿下の寝室に入るなんてはしたない真似はしなかった。
 ちょっとそれだけは、ダメだって。
 そう思ってたから。

 オルファリド様のお顔がサッと冷たく曇るのも、あたしは見逃さなかった。
 身内の公爵様だってやっぱりそう思うよね。

 でも。

 寝室の扉が開き。
 そこからふんわりとしたピンクの部屋着を着て現れたレミリア嬢を見て。
 あたしはこれがそんな貞操観とかそういったレベルの話でも無いことを感じて。

 うん。
 やっぱり見間違いじゃない。
 黒いモヤは彼女から発生している。
 背筋に冷たい冷や汗が落ちるような、そんな気持ち悪さも感じる。

 そもそもあたし、レミリア嬢ってよく知らないんだよね。
 個人的にお話したことも無かったと思う。
 貴族院ではクラスも違うし、一緒のお茶会にも参加した記憶も全く無い。
 だからどうしてあんな濡れ衣が罷り通ったのかも不思議でしょうがなかったけど。

 それもあって、彼女がどうしてこんなふうになってしまったのかもいつからこうなのかもよくわからなかったりだ。

 ただ、ふんわりと歩いてきて王子のそばに侍りついたその姿を見たときは、ほんと吐き気がしてしまった。
 気持ち悪くって。

「にいさま。彼女がレミリアです」

 と満面の笑みで彼女を紹介するコーネリアス様。
 そこにはほんと、なんの躊躇いも曇りもなく。
 公爵にも彼女との愛を祝福して貰えると全く疑っていない。
 そんな雰囲気で。

「そうか」

 とそれだけ言ったオルファリド様のお声が氷のように冷たいのにも、意に介さない様子だった。

 と。
 ここまでくれば普通は自己紹介したりするものだよね? レミリアも。
 なのに。

 彼女はその真っ黒な瞳で公爵を値踏みするように眺めているだけ。
 コーネリアス様もそれを咎めようともしない。

 ただ、オルファルド様の纏う気がどんどんと氷点下まで下がっていくのをあたしだけが感じている。
 そんな時間が少し続き。

 元々赤毛の巻き毛でお顔も童顔で、決して美人という雰囲気ではなかったレミリア。
 少なくとも先日の貴族院の卒業記念パーティの場ではそんな幼い雰囲気を纏っていたはずの彼女。

 でも今は。

 真っ黒な妖艶な気をあたりに撒き散らし。
 真っ赤な口をにっと開き、舌なめずりをする彼女。
 そして。

「あなた、おいしそうね」

 そうオルファリド様に向かって囁いた。
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