不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第1章 勇者の帰還

2 スキル持ち越しで人生リスタート2

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 気が付くと、俺は布団の上に寝ていた。

 六畳くらいの部屋。
 壁にはポスターと本棚、机。
 窓からはカーテン越しに淡い日の光が差しこんでいる。

「ここは……」

 急速に懐かしさが込み上げる。

 ああ、そうだ。
 ここは俺が住んでいたアパートの一室だ。

「戻って……きたんだ」

 鏡を見ると、高校生くらいの年齢の俺が映っていた。

 老人からちゃんと若返ったらしい。
 同時に、すごい勢いで地球にいたころの記憶がよみがえってくる。

 えっと、整理するぞ。

 俺は勇者カナタ──ではなく、夏瀬なつせ彼方かなた
 年齢は十六。
 県内の高校に通う二年生。

 両親は仕事で県外に行っていて、このアパートに一人暮らし。
 一つ下の妹もいるが、こっちは親についていき、県外の高校に通っている。

 ──とりあえず、記憶の整理はこんなもんか。

「じゃあ、次は俺の能力について、だな」

 立ち上がる。

 体中に力がみなぎっていた。
 単に若返ったからだけじゃない。

 俺の中に新たな力が宿っているのを感じる。

「ステータス開示オープン

 空中に俺のステータスが映し出された。

 お、ちゃんとこの世界でも表示されるんだな。

───────────────────────────────────
 名前   :夏瀬彼方
 レベル  :1
 攻撃   :1
 防御   :1
 HP   :1
 MP   :1
 経験値  :0
 固有スキル:【経験値効率・極大】
 汎用スキル:なし
 基本ジョブ:【勇者】【戦士】【魔法使い】【僧侶】【武闘家】【暗殺者】【盗賊】
 EXジョブ:なし
───────────────────────────────────

「なるほど、数値がリセットされてる」

 女神さまが言ったとおり、俺が取得していた基本ジョブは全部そろっていた。

 ただしEXジョブはなし。
 これは基本ジョブを使用してのポイントを貯めないと取得できないからだ。

 固有スキルについては一つだけ引き継げるということだったので『経験値効率・極大』を選んだ。

 自分の能力を一から育て直すんなら、これが一番いいだろう。
 なるべく早く、異世界にいたときみたいな圧倒的な能力を取り戻したいもんだ。

 俺は壁の時計を見た。

「……朝の七時か。今日って何曜日なんだろ」

 平日なら学校がある。
 机に卓上カレンダーがあった。

「水曜日か」

 ちょっと早いけど、家を出るか。

 数十年ぶりの通学だ。
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