不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

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第3章 勇者の仲間

9 そうだ道場、行こう1

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 生徒会室。

「わざわざ呼び出してごめんなさい、夏瀬くん」

 その日の放課後、俺はとある生徒に呼び出された。

 腰まで届く金色の髪に青い瞳をした美しい少女。

 緋ヶ崎ひがさき穂乃花ほのか

 文武両道、容姿端麗、二年生にして生徒会長を務め、おまけに大金持ちのお嬢様──と三拍子も四拍子もそろった完璧超人である。

「以前に話したわね。三組に関して君に関してよくない噂を聞いた、って」
「ああ、そういえば」
「あれから調査を進めていたの。君の言ったとおり、八条さんに対するいじめや、君がそれをかばったということが分かったわ」

 緋ヶ崎が俺を見つめた。

「……そうか」
「いじめの事実も含めて先生に報告したわ。その後は八条さんに対するいじめはないようだし、いじめていた主要な生徒に対しては厳重注意や、その親も交えての面談を行うようね」

 まあ、俺としては雫に危害が及ばなければ、とりあえずはそれでいい。
 誤解も解けたみたいだし。

「君を疑うようなことを言って、ごめんなさい」

 彼女は深々と頭を下げた。

「いや、緋ヶ崎は俺の言い分も聞いてくれてただろ。一方的な判断はしなかったし、ちゃんと事実を調べて、報告もしてくれた」

 実際、スクールカースト的には底辺だった──少なくとも一周目の人生では──俺に対して、あくまでも双方の言い分を聞く、というスタンスをとってもらえるのは新鮮だった。
 新鮮で、ちょっと嬉しかったかな。

「俺が緋ヶ崎を恨む道理はないよ」
「……ありがとう」

 と、

「やっと見つけた。先輩。生徒会室に入っていくのを見た、って人がいたから」

 長い黒髪と赤いリボンを揺らしながらいきなり入ってきたのは、月子だ。

「今日こそはボクの道場に来てよねっ」
「月子……」

 そういえば遺跡の帰り道で『今度、月子の道場に行く』って約束してたな。

「あ、穂乃花ちゃんだ。やほー」

 月子が緋ヶ崎を見て、笑顔になった。

「ごきげんよう」

 答える緋ヶ崎。

 ごきげんよう、なんてリアルで挨拶に使う人、初めて見たぞ。
 いや、それよりも──、

「知り合いなのか?」

 たずねる俺。

「子どものころ、あたしは月子の道場に通っていたのよ」

 緋ヶ崎が金色の長い髪をかき上げた。
 ちなみに髪色は外国人の血が混じっているからだそうで、地毛である。

「他にも剣道や薙刀、柔道に弓道、それから拳法、合気道、ボクシング──いろいろと習わされたわね」
「穂乃花ちゃん、習い事ばっかりしてたよねー。お絵かきとかピアノとかバイオリンとか、茶道に日本舞踊、バレエもやってたよね?」
「いや、やりすぎだろ」
「別にいいのよ。習い事は楽しかったし、親も喜んでくれたし」

 クールに答える緋ヶ崎。

「月子の道場に行くなら、あまり引き止めるのも悪いわね。あたしの用事は終わりよ。本当にごめんなさい」
「いいよ、二回も謝らなくても」

 深々と頭を下げる緋ヶ崎に、俺は両手を振った。
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