不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ

文字の大きさ
69 / 135
第3章 勇者の仲間

8 三人目の来訪者2

しおりを挟む
 フィーラが、殺された──?
 信じられない事実に、ベルクは呆然と立ち尽くした。

「──スキル【収納】発動」

 アリアンが右手をかざした。
 頭上に輝きがあふれ、そこから何かが下りてくる。

 紫の長い髪に、怜悧な美貌。
 両腕を胸の前で組み合わせ、眠ったような彼女は──。

 すでに、息をしていない。

「フィーラ……!」

 そう、フィーラ・ローゼンハイドのむくろだった。

「この世界で『警察』と呼ばれる組織に行き、フィーラさんの遺体を回収しました。それから【記録改変】系のスキルを使い、彼らの記録も書き換え済みです。フィーラさんの死は自殺として処理されるでしょう」
「仕事が早いな。さすがはアリアンだ」
「私たちの世界の痕跡を、この世界に残すわけにはいきませんから」

 一礼するアリアン。

「あとはフィーラさんを殺した犯人を突き止めるだけです」
「犯人……」

 魔法の天才である彼女を殺せる者など、限られている。
 もちろん事故の類で死んでしまったこともあり得るだろうが、やはり一番疑わしいのは──。

「カナタくん、か」
「彼は勇者になることを拒否したと聞いています。ならば、その彼が死なないかぎりは、新たな勇者素質者が現れない。フィーラさんの性格からして、彼との戦闘になったことは十分に考えられます」
「そして、返り討ちにあってしまった……と?」

 ベルクは奥歯を噛みしめた。

「君は、勇者をどうするべきだと思う?」
「私は……『神託』に従うべきだと思います」

 と、アリアン。

「まさか、新たな神託があったのか」
「はい。ナツセ・カナタの運命は、勇者のそれとは交わらない──と」
「彼は、勇者にならないということか?」
「分かりません。神託は断片的なものです」

 アリアンが首を振った。

「ただ、彼を放置しておけば、我が世界に災いをもたらすかもしれない……そんな解釈もできる内容でした」
「神託は必ず当たる──その解釈さえ、間違えなければ」
「ええ。最初の神託では、勇者を支えるべき私たちの力が足りない、と。もっと鍛える必要があると──その解釈の上で、各々が力を磨いてきたはずです」
「皮肉にも、その力を勇者殺しに向けるとは、ね」

 ベルクが暗い笑みを浮かべた。

「……私はこういう解釈をしています」

 アリアンが、ふうっ、と息をつく。

「ナツセ・カナタは勇者にはならない。そして彼を殺してしまうと、次に選ばれる勇者はあまり強くない──ゆえに、それを支える私たちがより強くならなければならない、と」
「新たな勇者では魔王軍に苦戦を強いられる、ということか……」
「決断を、ベルクさん」

 アリアンが一歩詰め寄った。

「私は勇者を討つべきだと──それが神託の解釈につながると思います。仮に次なる勇者が弱かったとしても、それも含めての神託です。従うべきかと」

 普段は慈愛の光をたたえた垂れ目がちの瞳に、今は妄執にも似た輝きが宿っている。

 優しい心根の娘なのだが、神を絶対視しすぎるきらいがある。
 そんな性分が前面に出ている感じだ。

「……少しだけ様子を見よう」

 ベルクは慎重論を唱えた。

「僕はもう一度、カナタくんに近づいてみる。そもそも彼がフィーラを殺したとはかぎらないだろう? それに、根気よく説得すれば彼も勇者を引き受けてくれるかもしれない。人は、分かり合える──僕はそう信じているんだ」

 我ながら綺麗ごとを言っているな、と内心であきれつつ、ベルクはアリアンを見つめた。

「それまで、僕にこの件を預けてほしい」
「神託に背くと?」
「い、いや、そうじゃない。だけど解釈は慎重に行うべきだ、ということさ。もう少しだけ状況の変化を見守ろう」
「……分かりました、ベルクさん」

 ベルクの意志を尊重してくれたのか、アリアンは静かにうなずいた。

「ただし、長くは待てませんよ。魔王ヴィルガロードの復活はもう間もなくでしょう。それまでに勇者を我らが世界に連れ帰らねばなりません──」
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...