胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

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さて、飛びきりの笑顔の可愛い恋人に、酷なことは言いたくないが……。

「じゃぁ、葉月ちゃん勉強しようか、テストをみせてもらって良いかな」
「……」

ギクッと顔をひきつらせた葉月は、しぶしぶ、持っている鞄の中に入っていた、テストを鉄堅に渡した。

英語29点、数学28点、国語26点、理科28点、社会26点、情報29点

しばし、鉄堅はどう言ったら葉月を傷つけないで済むか高速で考え、しかし、考え過ぎて、一言しか出なかった。

「全部赤点」
「し、仕方ないだろ……もともと勉強は嫌いだし、バイトで疲れてて、眠くて」

「え?これ、葉月ちゃんの学校は赤点とるとどうなるの?夏休みもしかして補習で埋まるんじゃ」
「追試が一週間後にあるから、それに受かったら良いって先生言ってた」

「受かるって何点とるの?」
「80点」

もう一度、テストを見た。平均27から80点へ引き上げ6教科1週間で?

鉄堅は、ダラダラと冷や汗をかきだした。どうしよう、間に合う気がしない。

「因みにその追試のテストは何日間?」
「ん?1日だったと思う、んーーあ、これ、プリント」

葉月の鞄から少しシワシワのプリントが出される。

重要と書かれたプリントには、今期の赤点取得者に向けての夏休み自宅学習後、8月1日の追試試験の時間割りと、追試落ちた後の、補習の日程(ほぼ毎日学校)が記されていた。

「は、葉月ちゃん……夏休みがない」
「だから、追試受かる為に来たんだけど、お前なら何とかできるかなって」
「あぁ、そんなに信頼してくれて嬉しい」

嬉しいが、今日から1週間泊まり込みで寝ずに勉強してくれるだろうか? イヤ、無理だそんな過酷な事を葉月ちゃんにさせられない。何とかせねば。

「試験範囲と、先生から何かヒントはないの? プリントから出るとか言ってなかった?」

「え? このテストもっかい受けるんだよ」
「中間と丸々同じテストを!? じゃぁ、これが解けるようになれば良いんだね」

神よ、救いが有ったとはこの事だ。鉄堅は、じーんと、胸に手をあてた。

「良かったぁ、葉月ちゃんとの初めての夏休みが学校の送り迎えだけで終わるのかと思ったよ、あぁ、葉月ちゃんの学校の先生はなんて優しく素晴らしい先生なんだ」
「そーぉ?」
「素晴らしい先生方だ、間違いない、さ、葉月ちゃん問題用紙だして」
「無いよ」
「え?」
「だって、テスト終わった日に捨てちゃった」
「え?」
「要らないと思ったから」
「……」

鉄堅は、青ざめた。問題用紙がないだと? あるのはこのほぼ白紙の答案用紙だけだと? ここから逆算で問題を導きだしたとしても、白紙のところは解らない。どうやっても、80点にはたどり着けない。

「葉月ちゃん、お友達に、お友達に聞いて! 今すぐ持ってる人を探して」
「えーーそんなの、持ってるヤツいるかなぁ? 1週間も前の話だぞ」
「もし無かったら、先生に土下座しに行こう、僕も一緒に土下座するから」
「え、やだよ、恥ずかしい」
「恥ずかしがってる場合じゃないよ、とにかくまずは、友達に聞いてみて」
「解った」

葉月がポチポチとスマホを打っている間に、鉄堅は、ざっと、葉月の全教科の出題範囲の確認をした。一学期の内容だから、導入部分が多い、良かった1年生で。これが三年だったらと思うとゾッとする。
葉月の勉強嫌いは小学4年の頃からだから、もしかしたら、そこら辺からじっくりやり直した方が良いかもしれない。鉄堅は、いかに時間をかけずに、葉月の負担にならずに葉月の学力を上げるか真剣に考えた。

 嫌な事に時間を使わせたくないが、もしも葉月の将来に学力が必要な場面があった時、無いからと諦めなくて済むようにしたい。選択肢の幅を沢山持っていて欲しい。そして、あわよくば、その未来にいつも寄り添っていたい。
今、解らないことは、時がたてば意外と何でも解るようになることを鉄堅は知っていた。しっかりと時間をかければの話だが。


















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