胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

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第二章

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しばらくして、葉月のスマホに連絡が入った。

「あ」
小さく呻いた葉月の声を、鉄堅は、聞き逃さなかった。身体をひねって、葉月の方へ向けた。

「誰かテストの問題用紙持ってた?」
「う、うーん、うん、まぁ」

妙に歯切れが悪い、何か都合が良くないのだろうか?鉄堅が首を傾げると、葉月は伺うような目で、鉄堅をみつめた。

「持ってるの、成瀬なるせしかいなかった」
「成瀬?」
「あ、覚えてないか、えっと、前に会った事が有るんだけど、ま、まぁ、これから会えるっていうからちょっと行って貰ってくる」
「写メで良くない?」

「いや、全部写メきついだろ、もう要らないって言ってるから、ついでに回答も有るって」
「葉月ちゃん」
「あ、なに?」
「何か隠してない?」

何だか何時もと様子が違う、まさかと思うが……念には念を入れて食い下がる。葉月は、少しだけ目を泳がせたが、しかし、きっぱりと言った。

「隠してない、隠してないけど、成瀬はその、アルファだから、お前はイヤかなってだけで」
「それは聞き捨てならないな」

鉄堅の眼の色が変わる。

「待ち合わせ、僕も一緒に行く」
「え、あ、そう? ちょっと遠いけど」
「構わないよ」
「じゃぁ、成瀬にそうメールするよ、中間の駅まで来てくれるみたいだから」
「なかなか親切だね、菓子折りでも用意しようか?」
「いいよ、そんなの、またなんかその内、奢れば良いし」
「仲良しなんだね」

鉄堅のじとっとした視線に、葉月はちょっと怯みながら、違うと首を振って、主張した。

「違うよ、普通だって、おい、勘違いするなよ、ホントに何もないし、俺の好きなのは、お、おまぇだけなんだから」

消え去りそうな声で、気持ちを伝えてくれる葉月に、鉄堅は頷いた。
「僕もだよ」

少しホッとした様子で、葉月は成瀬について話した。

「お前の学校に成瀬の姉が2人いてさ、生徒会の人らしいけど」
「あぁ、そう言えばそんな人がいたね」
「病院にも見舞いにきたって聞いたけど」
「プリントを持ってきた人達かな、一言も話さなかったけど」
「たぶんそれ、で、その、成瀬の姉がお前に告白したみたいな事を言ってて」
「え? 僕に?」
「うん」
「変な人だね」
「え」
「僕には葉月ちゃんだけなのに、意味のないことわざわざするなんて変な人だ」

鉄堅が告白を喜ぶどころか、怪しむみたいな言い方をするので、少しだけムキになって言い返す。

「いやでも、俺達が付き合う前の話だし、もしかしたら可能性だって有ったかも」

「無いよ」

記憶がないくせに、そういうことだけは、キッパリハッキリと。ちょっと、嬉しいかもと葉月は、内心思った。
しかし、鉄堅は、眉を寄せて考えている。

「何か裏が有りそうな気がする」
「裏があったのかな? あの、成瀬の父親が俺の母さんと居なくなった人だから」
「え?」
「あ、でもなんか凄い揉めた感じじゃなくて、同じアルファだから解るって、母さんと成瀬のお父さん運命のツガイだったって」
「……」

葉月の話を食い入るように聞きながら、普通でない関係に、鉄堅の中では成瀬という人物がどうしようもなく怪しく感じて、葉月のことが心配になった。

「成瀬って人、ホントに大丈夫なの? 葉月ちゃん」
「告白をされたけど、お前との仲を応援してくれるっていってたし大丈夫だよ」
「告白?」
「あ……えっと、まぁ、前に」
「ちょっと葉月ちゃん、成瀬って怪し過ぎるんだけど」

警戒心MAXを発動しだした、鉄堅に、葉月は首をふった。

「隠していた訳じゃないし、なんなら今、思い出したくらいだしだからもう全部言う。成瀬は、俺達が運命のツガイだって、教えてくれたんだよ」
「え?」
「運命のツガイだから、俺達が離れるところを見たくないって、親の事もあって夢があるからって……俺、運命だからお前を好きになった訳じゃないけど、でも確かに誰とも違うのは解るんだ」
「葉月ちゃん」

「どうしようもなく惹かれる気持ちが解る、お前だけ他と違って見えてたこと、成瀬に言われて気づいたところもある、だから、地味に感謝してる」

成る程、つまりは、僕と葉月ちゃんをくっつけようとしてくれたと言う訳か。
葉月に告白したのは、自分と僕を比べさせるため?
だとしたら、たぶんそれは、葉月には有効な手段だっただろう。

恋や愛を受け入れない鉄壁の壁を作ってた葉月の心に入るには、恋や愛を思いっきりぶつける必要があるから。
ガードの固かった葉月の心に、鉄堅とは違う角度から攻めたんだ。お母さんの事でずっと心に鍵をかけてた葉月だから。

だが母の事で心を揺らし、斬り込んだやり口は好ましくない。

「成瀬って人、好きになれない、葉月ちゃんに近づかせたくない、葉月ちゃんがずっと悩んできた事にズカズカと入り込むみたいなヤツ信用できない」
「鉄堅、もう良いんだ、父さんとも話して、俺の中で母さんのことはケリがついたんだ、いつも、ずっと、俺のこと心配してくれてありがとうな」

葉月はそう言うと、鉄堅の手をそっと握った。

「俺達、運命のツガイだって、鉄堅はどうおもう?信じる?」
「それは……僕は信じる。解ってた、でも、だから好きなんじゃないよ、ホントにそういう本能みたいなのは魂の奥に有るけど、僕は葉月ちゃんのこと好きになったの保育園で会った時、凄く可愛くて一目惚れだったから」

光の妖精みたいだった葉月の赤ちゃんの頃の記憶がキラキラと脳内に浮かんだ。

「一目惚れ? 赤ちゃんの時なんか、皆可愛いだろ」
「葉月ちゃん……自分の可愛さもう少し自覚してくれないかな、心配だ」
「えっ、今も?」
「勿論だよ、ずっと可愛い」
「うっ、そんなのお前しか思わないよ、ばか、そろそろ行こう、成瀬に紹介するよ、俺の恋人」

真っ赤な顔ですくっと立ち上がって、出ていこうとする葉月の腕を引いた。
すぽっと、腕の中に閉じ込める。正直ぐだぐだ揉めたが、90%くらいは嫉妬だ。この人の心を揺らしたことに。

「葉月ちゃん大好き」
「うん」

少しだけマーキングさせてね、ちゅと、葉月の頬に口付けると、葉月はチラッと鉄堅に物足りなげな視線を向けた。

「口にする」
「!?」

葉月が鉄堅の首をぐいっと引っ張って、口に自分の唇をくっつけた。一瞬のキス。熟れたトマトみたいに真っ赤な顔で、行くぞともう背を向けてしまった葉月。

初めて葉月からされたキスに、鉄堅の魂は抜けかけ、ごちゃごちゃ考えていた色んな事がすぅっと頭から消えていった。愛の力は偉大だ。
たった一度、一瞬与えられた、キスだけで、有頂天になれる。
天にも昇る気持ちで、葉月の後を追った。







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