胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり

文字の大きさ
54 / 120
第二章

52

しおりを挟む
魚を捕まえようと、葉月が せっせと石でダムを作って、そこへ入ってきた魚を鉄堅が掬うという遊びをしばらく楽しんだ。
チョロチョロ逃げる魚に翻弄れて、追い回すうちに二人の頭がゴチンてなって、爆笑。めちゃくちゃ楽しい。

丸いスベスベの平な石を見つけて拾っては、投げてみたり……トントンボチャッ、3回続けば良い方で、投げ方を工夫しているうちに手首が疲れてきた。
手首をふるふるとふりながら、葉月がぼやく。

「なかなか続かないな、むずい」
「石が大きい方が良いのか、小さい方が良いのか、単純に力が足りないのか、奥深い」
「ぷっ、そんな真面目に考え込むなよーー」

ケラケラ笑う葉月に、鉄堅は内心ホッとする。さっきの自分の気持ちがばれなくて良かった。正直自分でも動揺してる。

葉月のことがずっと好きで好きでたまらなかった。だが、一度その想いが消え、空っぽになった心に再び、再燃した想いは止まることを知らない。どんどん加熱していって。心だけじゃ、もう足りないくらいに自分の中で膨れ上がっていた。

葉月よりも先に大きく身体が成長して、それに伴って性的な部分もおそらく葉月より早く育った。そもそも葉月はどうなのだろう。精通がきたかなんて聞ける訳がないけれど。

(葉月ちゃんて……性欲とか無さそう)

キスはしてくれるけど、それ以上先があることを知っているのだろうか? 保健体育の授業で知っている筈だし、さすがにいくら鈍くても知っているとは思うが……だが葉月である。

鉄堅は悩ましげにため息をはく。自分は待つつもりだ、葉月がそういった感情を自分に持ってくれる日まで。

何年でも、幾年でも待つつもりでは有るけれど、小学生のように純情な葉月に、果たしてそんな日が来るのだろうか。

(一生こなかったらどうしよう……気が狂いそう)

大切にしたい、ほんの少しも傷つけたくない、大事すぎて苦しい。

水を滴らせながら、前を歩く背中を熱くみつめる。こんな目でみていては、バレてしまう……。鉄堅は、そっと視線を外した。



そろそろ日が陰ってきたので、二人は、川遊びをやめることにした。

「あぁ、最高に楽しかった、川って泳げなくても遊ぶこといっぱいあるな」
「だね、魚があんなにいっぱいいるとは思わなかった、捕まえられなかったけど」
「俺は一瞬掴んだ、ぬるって指の間ぬけちゃったけど、魚めちゃ早いな、急加速ブースト半端ねぇ、今度は、魚捕まえて焼いて食べてみたいな」

「鮎とか、美味しそうだよね炉端焼き」
「良いなーー、腹減ってきた、パン食べよ」
「うん」

葉月にタオルを渡して、自分の身体も水気を拭き取る。葉月が視界にはいらないようにして着替えた。

日が本格的に落ちると、真っ暗になってしまう。まだ薄暗い程度で、周りが見えるが、真っ暗になったら何もできない。ちょっと怖い。
簡易テントに蚊帳をかぶせて、寝袋をひいた。小さな小さな秘密基地みたいなテントの中に二人は座った。
葉月は、ちらっと鉄堅をみた。蚊帳に隙間ができないように石で重しを置いてる。

「なぁ、暗くなると、もしかしてこれ真っ暗にならない?スマホの充電もつかな」
「ちょっとまってね」

鉄堅は、鞄からごそごそと、懐中電灯とさっき買った、1リットルのペットボトルを出した。

石を土台にして、懐中電灯を立てると、その上にペットボトルを置いてスイッチを入れる。

すると、下から照らされたペットボトルは、パァッと、光を拡散して、辺りが明るく照らされた。

「すげぇ! ランタンじゃん」
「夜はつけっぱなしにしとこうか」

「うん、明かりが有るって安心する、実はちょっと不安だったけど、平気になった、お前って凄いね」
「不安だった? 何があっても守るよ」
「熊とか来たらどうしよう」
「僕が傘で戦うから、葉月ちゃんは逃げて」
「ばか、お前を置いて逃げるとか有り得ないだろ、嘘だよ、熊なんか来ない」
「うん」

それでも、何かあったら絶対に葉月ちゃんだけは逃がす。絶対に。それだけは小さな頃からの自分の掟みたいなものだから。
隣で、もそもそとパンを食べてる葉月を愛おしく見つめながら、鉄堅もパンを食べた。

いつの間にか空には星が輝いて、だけれど、木が沢山あるせいで、穴から上を見上げる程度しか星空が見えなかった。

「なんか、もっと1面の星空が有るのかと思ってた」
葉月がボソッと呟く。

「ほんとだね、穴の中に居るみたいだ」
「まぁ、お前と二人なら穴でも」
「え?」
「穴でも楽しい」
「葉月ちゃん!」

どうしてこの人は何度も心を撃ち抜くような言葉を。必死で静めてる気持ちを刺激しないで欲しい。鉄堅は、隣に寄り添うように座ってる葉月の肩にそっと手を回した。
葉月が甘えるみたいにもたれ掛かってきて、心臓がどうにかなりそうだと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

処理中です...